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うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#138 【挑戦者】

2009-06-20 | #05 海南 選抜編
山王 33
海南 25




河田の3連続ダンクにより、海南はタイムアウトを取った。



「さすが、山王だ。2つも3つも上をいっているな。」

と冷静さを取り戻した高頭。


重苦しい海南ベンチ。

こういうときは決まって、神が口を開いたが、さすがの神も言葉が出ない。

牧も同様であった。

神の連続3Pと河田の3連続ダンクは、同じ得点なのだが、インパクトは河田のほうが数倍上であった。


『パタパタ・・・。』


「高砂。」

「はっはい。」

「河田は凄い選手だ。パワーもあり、スピードもあり、スキルもある。
大学生を入れても、学生センターのトップ5に入ると思われる。
ましてや、1on1で太刀打ちできる選手など、高校生のなかには見当たらん。
だがな、全てがお前に勝っていると俺は思わん。
俺は思っているぞ。技巧派センターとしてなら、お前がNo.1だ。」

「かっ監督。」

「パワーで、スピードで、スキルで勝てないなら、お前の勝てるところで、勝負してみろ。
全て勝てとはいっていない。
一矢報いるんだ!その一矢が、徐々に広がり、やがて致命傷となるはずだ。」

「・・・。はい。」

「高砂さんなら、大丈夫っすよ。だって、河田よりもデカい品川や真壁を抑えたんですから!」

「そうだ!」

「そうですよ!」

高砂に対して、海南ベンチから、声が上がる。


「高砂。根性を見せてみろ!そのために、あんなに練習したんだろ?」

「牧・・・。」

「あぁ。やってやる。1本でも、2本でもいい。あいつのシュートを止めて、俺が決めてやる。」




一方、山王ベンチ。

「河田。いい調子だ。」

と選手を迎え入れる堂本。


「河田さんの中の、モンスターが大爆発ですね。」

と沢北。

「誰がモンスターだよ。だが、今は気分がいいぜ。うしっ。」

「河田。油断はしてはいけないジョ。」

「あぁ。わかっている。神奈川のやつらは、何を仕出かすかわからないからな。」

「それでいいんダジョ。」

「よし。このまま、河田中心でいくが、松本がベンチにいる分、今はオフェンス力が欠けている。
柳葉、お前も狙えるときは狙っていけ。」

『コクッ。』


「柳葉、代わりたくなったら、代われ。」

『ブルブル。』

沢北の言葉に首を振る柳葉。

「ぬっ。生意気な。」



『ビィーー!』


タイムアウト終了のブザーがなる。




海南のオフェンスから始まる。




「今のタイムアウトで、流れは変わるかな。」

「わからん。だが、高頭監督が、何もしないで、タイムアウトを終えるとは思えん。」

観客席の三井と赤木が話していた。




牧のドリブル。

深津が徹底マーク。

息を呑む激しい攻防。

このPG対決に終わりはない。



だが。



(キレが増したジョ!)


『キュ!』


深津を抜き去る牧。

一之倉は神から離れることはできず、清田は柳葉を抑えていた。

武藤は野辺を引き連れて、大きく外で待機している。


『ダムダム!』


中央突破を図る牧。


「こい!」

河田が迎え撃つ。


『キュ!』


河田が一歩踏み込んだ瞬間に、高砂にクイックパスが放たれた。


逆をつかれた河田。


「まだまだ!」

河田は高砂を狙う。


ボールを受け取った高砂は、ステップインでゴールを襲う。


「だらぁぁ!!」


高砂のステップにあわせ、河田がブロックに飛んだ。



だが。



『クルッ。』


「なっ!?」


高砂は空中で体勢を変え、バックシュートを放つ。

虚をつかれた高砂の動きに対応できない河田は、そのまま高砂と接触。

主審の笛を鳴らした。



『ピィーー!!』



『ガン!!』



シュートは惜しくも外れたが、絶好調の河田から奪い取ったファウル。

何かが変わろうとしていた。



「いいぞ!高砂!!」

「おっおう!!」

牧と高砂のハイタッチ。




「あのセンター、河田相手に挑んでいったぞーー!!」

「センターらしからぬ軽い動き!!」

「なんか、応援したくなるなーー。」

河田の声援一色だった会場から、海南#5番を応援する声が聞こえ始めた。




「おし!」

高砂は気合で2本のフリースローを沈めた。



「河田。気を…」

「わかってる。一切油断はしない。」

(本気で叩き落すつもりだったが・・・。なんだよ、お前巧えじゃねぇかよ。
少しは楽しめそうだぜ。)

河田が不適に笑う。



山王 33
海南 27




だが、




『ピィーー!!』




「なっ!?ファウル??」

主審のほうを振り返る河田。


にやけながら、起き上がる高砂。

高砂は2つのプレーで、河田から2つのファウルを奪った。



清田の際どいチェックで、柳葉のシュートは外れた。

ゴール下のリバウンド争い。

神は野辺をスクリーンアウト、武藤と高砂が、2人がかりで河田をスクリーンアウトしていた。

ボードにあたり、跳ね返ってきたボールは、ちょうど高砂と河田の前に落下。

リバウンドを奪おうと河田がジャンプしたとき、高砂は河田に押されるような格好で前に倒れた。

河田は、確かに高砂に触れたが、ゴール下においては、当たり前といっていいくらいの接触だった。


だが、主審の口からは、ファウルがコールされた。

高砂によって、巧みに生み出されたファウル。

仕方なく手をあげる河田。


「高砂。」

「ん!?」

「熱くさせるじゃねぇか?好きだぜ、そういうの。」

「ありがとよ。」

「ただ、立ち向かってくるやつには手加減できねぇんだ、俺は。」

「あぁ。持てる全てのものを出して、お前と戦う。」

「うし!いっちょ、楽しもうぜ。うはっ。」



牧と深津

神と一之倉

清田と柳葉

そして、ここにも

高砂と河田

熱い火花を散らす。


目を合わせる武藤と野辺。

「俺らは・・・。」

ロールプレイヤーの戦いも始まる・・・??



山王 33
海南 27







続く。

#137 【河田タイム】

2009-06-19 | #05 海南 選抜編
第2Q

山王 28
海南 25




山王のオフェンス。


松本を一旦ベンチに戻し、一之倉を投入、ディフェンスの強化を図った山王だが、
オフェンス力の低下は否めない。

このメンバーで、海南から得点を奪えるか、今後の試合の展開を占う重要なオフェンスである。



深津がトップでドリブルをしている。

前列の牧と清田が、パスを警戒している。


(柳葉か、河田だ。どっちだ?)


海南の選手は、ポジションを取りながら、柳葉と河田の動きに集中している。


「作戦の変更はないジョ。」


『バス!』




「キター!柳葉だ!!」

「いけーー!!」




トップの深津から、45°の柳葉へ。

深津が、牧と清田の間をきれる。

ボールは、トップに上がった一之倉に入り、さらにハイポの野辺へ。

牧、清田、高砂が囲みにかかるが、野辺は素早くゴール下に放つ。

目にも止まらぬ速いパスワーク。



ボールは・・・。



『ピィーー!!』



『ドガァァ!!!』




「また、河田だーー!!」

「モンスターダンクー!!」




武藤のファウルを物ともせず、連続ダンクを叩き込む河田。




「高校最強センター!!!」

「マジすげーー!!!」




「ぶしぃ!!まだ、これからだぜ!!」


(すげーってもんじゃねぇぞ・・・。あのパワー、あの動き、赤木よりも数倍上だ・・・。)

清田の口は塞がらなかった。




「あーぁ。河田さんの中の、モンスターが目覚めさせちまった。もうマジで俺の出番はないな・・・。」

とショボンとする沢北。




『シュパ!』


河田は、ボーナススローも沈め、点差を広げた。



山王 31
海南 25




海南のオフェンス。

牧が、神に合図を送る。

武藤が、野辺を連れて、外に広がる。

高砂も同じようにハイポに位置取る。

ボールは、清田を経由して神へ。




「なっ!?神のポストプレーだ!!」

「アウトサイドだけじゃないのか!?」




「陵南戦で見せたプレーだな。このQは、あくまで神で勝負か。」

「170台の一之倉相手じゃ、当然だろうな。」

観客席の神奈川勢は、余裕の表情を浮かべている。




神は、スピンムーブを繰り出すも一之倉がしっかりついている。

だが、身長差14cm、強引にシュートを打つ。



『シュ!』



『バチィン!!!』



「!!!」



「予想どうりだ。うはっ!」




「また、河田!!」

「河田がブロックしたーー!!」




河田は、神のインサイドを読み、ハイポから一気にゴール下へ、シュートをブロックした。




「予定通り。」

にやける堂本。




「うそだろ!!」

と魚住。

「・・・。」

(あの脚力、夏以上だ。スピードもアップしていた・・・。河田のやつ、相当走りこんだな・・・。
敗戦を糧に、一回りも二回りも成長してきたか・・・。)

赤木は静かに思った。




ブロックしたボールは、清田の元へ転がった。

「まだだ!山王!!」

(決めてやるぜ!)

清田は、3Pを狙った。




「バカ!リズムが悪い!あれじゃ入らねぇよ。」

怒鳴る三井。




『ガコン!』


リングの手前にあたり、弾け飛んだボールは・・・。


『ガシ!』


「もーらいっ!」


河田がもぎ取った。

「よっしゃ。いくぞ!」


『ダムダム・・・』


ドリブルを始める河田。



「戻れ!清田、河田を止めろ!!」

牧が指示を出す。


「センターが何やってんだよ!!」

清田は、スティール狙いで河田のドリブルに手を出した。



『クルッ。』


「えっ!?」


バックロールで鮮やかに清田を抜き去ると、前線の深津へパス。

自身もゴールに駆け上がる。


そして、深津からリターンパスを受けると、ワンドリからボースハンドダンクを炸裂させた。



『ドガァァァ!!!』




「河田!!3連続ダンクーーー!!!」

「止まらない!!止められない!!!」

「最高ーー!!!!」

「河田タイムだーーー!!」

会場は、山王の、河田の声援一色となっていた。




「・・・なんてやつだ・・・。」

高頭の表情に冷静さは見られない。




「よし!!」

拳をコートに突き立てる堂本。


沢北は、ひじを曲げ、腕の力瘤を河田に見せる。

「にっ!」

河田も同じように見せた。

「うはっ!」




「くそーーー!!」

清田は、センターの河田に抜かれた悔しさから、大声で吼えた。

プライドは、引き裂かれていた。


牧も神もかける言葉が見つからない。

それは、海南応援席の彼らも一緒だった。




「俺たち、あいつらに勝ったんだよな?」

と三井。

「・・・。」

赤木は無言のままだった。

(これは、夏とは比べ物にならんぞ・・・。)




河田の3連続ダンクが決まった。

山王ペースと誰もが疑わなかった。

だが、あの男がSTOP THE MONSTERに名乗りをあげる。



山王 33
海南 25






続く。

#136 【作戦通り】

2009-06-18 | #05 海南 選抜編
山王 26
海南 22




第2Q初め、この日初となる神の3Pが決まった。




山王ベンチ。

(神をのらせるわけにはいかない。神がのれば、牧のペネトレイトが活きる。逆も然りだ。
今のうちに、不安要素は全て潰さなければならない。)

「一之倉、準備はいいか?」

「はい。」




「おっ、一之倉がジャージを脱いだな。」

「さすが、堂本監督。策が早い。」

と観客席の三井と藤真。




山王のオフェンス。

(海南がアウトなら、俺たちはインサイドだ。)

河田に気合が入る。


深津がボールをキープ。

(柳葉、作戦通りいくジョ。)


『コク。』

ボールは、柳葉へ。

1on1の姿勢。


『キュ!』


清田の腰が沈む。


『キュ!』


野辺がハイポにあがった瞬間、柳葉が清田を抜いた。


清田は一歩も動けない。

「!!!」

(はっ速え・・・。)


武藤が詰め寄る。


『ヒョイ!』




「あっ!俺のスクープシュート!!あいつ!!いつのまに!!」

ベンチの沢北が大きな声をあげた。




詰め寄る武藤の前で、スクープシュートを放った柳葉。



だが、



「違う!高砂!後ろだ!!」

牧が声をあげたときには、もう手遅れだった。


逆サイドから、飛んでくる河田。

柳葉が放ったスクープシュートまがいのパスを掴み、そのままリングに叩き込む。



『ドガァァァ!!』




「うわーーーー!!河田のアリウープ!!!」

「河田全開だーー!!!」

「柳葉のパスが巧いーー!!!」




「ぶしっ!!」


『パン!』

河田と柳葉がハイタッチをする。




「おう!」

山王ベンチから、驚きの声があがる。

「あの柳葉がハイタッチだとよ!!」

「こりゃ、ノリノリだぜ。柳葉のやつは!」

「沢北の出番はないな。」

「あっはっは。」

「くそぅ。柳葉め。調子にノリやがって・・・。」

ますます、柳葉に対抗心を燃やす沢北であった。


堂本は、美紀男の頭を掴んで話す。

「美紀男、来年、お前があれをやるんだ。」

「あっあれをですか?」

「そうだ!兄に代わり、お前が柳葉とするんだ!!」

「でっできるかな・・・。」

「やるんだ!」

「ふぁい!!」




そして、ここにも柳葉に対抗心を燃やす男が一人。

「ちくしょう!柳葉め!俺だって。」


『ガシ!』

「そう熱くなるな。あいつは、相当巧い。」

「なっ!?」

「いくぞ!!」

清田の頭を掴みながら、牧が一声かけた。




海南のオフェンス。

ボールは、牧から清田へ。


「熱くなるなよ!」

目の前にいる柳葉を睨んでいた清田であったが、牧の一言に冷静さを取り戻す。


「ふーーー。」

息を整える。

(こんなときだからこそ、個人の感情を抑えるんだ。)


牧は、深津を連れて、松本にスクリーンをしかける。




「来るぞ!神だ!!」

ベンチの堂本が声を出す。




「スイッチダジョ。」

だが、牧は松本を背中に抑えながら、開く。


「牧がフリーだ!」

河田の声に、神にスイッチした深津が牧に寄った。


その瞬間、神が外へ開く。


「しまったジョ!!」


ボールは、清田から神へ。


神が3Pを放つ。



『ザシュ!』





「連続3Pーー!!」

「神が絶好調だーー!!」




「いとも簡単に決めてきやがったな。」

と三井。

「ノッた神は誰にも止められないさ。」

と藤真。




海南がカットボール。

「清田、ナイスカット!」

冷静さの増した清田の動きが、柳葉のドリブルをカットする。


『ビィーー!!』




「出たーーーー!!!」

「スッポンの一之倉だーー!!」

「神を止めに来たーー!!」

「山王、対応が早いーー!!」




「松本。」

「おう。神はいまノリ始めている。頼むぞ。」

『コク。』


-----------------------------------------------

SG…#6 松本 稔 184cm/3年

SG…#8 一之倉 聡 175cm/3年

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「一之倉のお出ましだ。厳しくなるぞ。」

「ええ。でも、これで山王の攻撃力も落ちます。追いつくチャンスです。」

「あぁ。一気にいくぞ!!作戦の変更はない!」

「はい!」


神の連続3Pに、堂本監督は、迷わずスッポンディフェンスの一之倉を投入した。

神にとって、これからが勝負の時間となる。



山王 28
海南 25







続く。

#135 【必勝パターン】

2009-06-16 | #05 海南 選抜編
2分間のインターバル。


山王 26
海南 19




「中を抑えても、松本と柳葉が、外から奪いやがる!」

清田は声を荒げていた。


『パタパタ・・・』


「上々じゃないか?うちは、まだ神が本調子ではなく、この点差なら、まだ射程圏内だ。」

と選手らに安心感を与える高頭。


「山王は、まだ一之倉を温存しています。
これで、一之倉でも出てきたら、ますます神は抑えられる。」

と高頭の意見をばっさり切った牧。


「なっ!?」

(牧!ここで、絶望感を与えてどうする?)


「いや、まいったなー。だが、うちには真田もいる。一気に流れを変えることもできるぞ。」


「山王だって、沢北がいます。やつが出場しないと決まったわけではありません。」


「なっ!?」

重苦しい空気が漂う海南ベンチ。


牧が再び口を開く。

「だが、うちが負けたとも決まっているわけでもない。
まだ試合も1/4を経過したばかり、逆転のチャンスは十分にある。」


『パタパタ・・・』


「そっそうだ。牧の言うとおりだ。まずは、しっかりインサイドを抑えていこう。
外角のシュートが、この調子で入り続けるとは思えん。」


「はい。だが、外すとも限りません。仮に、外れてもゴール下には、最強のインサイド陣。
簡単にリバウンドがとれるかどうかもわかりません。」


「牧・・・。」

(今日はやけにつっかっかるな・・・。山王の強さを肌で感じたというわけか・・・。)


牧の表情は、今まで見たこともないくらいに険しかった。


「牧さんらしくないですね。俺たちは、海南のバスケをするだけですよ。
そうすれば、自ずと結果がついてきます。」にこり

神が牧にいう。


(海南のバスケか・・・。)

考えながら、【常勝】の旗をみる牧。


(少し山王を意識しすぎたかな・・・。)

目に力が入る。


「そうだな!ここで、色々考えていても仕方ないか。
仲間の想い、3年間の想い、全ての想いをコートにぶつける!それだけだな!
神!強烈なのいくからな!覚悟しとけよ!!」にこ。

「はい。待ってますよ。」

「よっしゃーー!!第2Qは、海南の最強コンビの復活だ!!見てろよ!山王ーー!!」

清田が、まとめる。


(牧よ。一人で背負い込むな。お前には、信じられる仲間がいる。忘れるな・・・。)

高頭は、コートに足を踏み入れる5人を見送った。




一方、山王ベンチでは・・・。

「河田、もっと暴れていいぞ。」

「はい。そのつもりでしたが、予想以上に、手強いディフェンスです。
立ち上がりは、攻めることができましたが、その後はきっちりとしたゾーンをしいています。
ポジションやスクリーンアウトなど、付け入るミスはありませんでした。」

「弱音を吐くとは珍しいな。」

とひげをさする堂本。


「いえ。今のは、ただの報告ですよ。堅い守りも、ミスがなくとも、俺はその上を超えていきます。」

「ふっ。頼もしいな。よし!第2Qは、河田中心でいくぞ。
第1Qで見せた松本たちの外角で、海南は外に意識しているはずだ。中で押していこう!」

「はい!」


「沢北。」

「はい?」

「悪りぃな。今日もお前の出番はない。うはっ。」

「ええ。この大会は、3年生最後の大会ですから。思いっきり楽しんで来てください。」

「あんがとよ。」




第2Qが始まる。



海南ボールからスタート。

牧がボールをキープ。

(第1Qは、はっきりいってやられたジョ。だが、このQは、好きにはさせないジョ!!)


『バシ!』


深津の手がボールにあたる。


(!!!)


だが、そのままボールは牧がキープし続ける。


(深津も本領発揮か。ふっ、上等だ!)




「深津も牧に触発されたな。」

「あぁ、あの攻めるようなディフェンスには、宮城も相当やられてたからな。」

と赤木と三井。




攻めるような深津のディフェンスに真っ向勝負を挑む牧。


「しつこいな。」

「抜かせないジョ。」




PGの攻防に観客が沸く。

「No.1決定戦!!!」

「いけーーー!!牧ーー!!」

「深津、抜かれるなーーー!!」




牧と深津の攻防の裏では、この男たちも熱い火花を散らしていた。


(オフェンスもディフェンスも、超一流。今までのSGとは、格が違う。)

松本のディフェンスに手を焼く神であったが、河田、野辺、高砂らの体を巧く利用し、
一瞬でフリーポジションをとった。


そこに、牧からの強烈なバウンドパスが供給される。


(ダッ!ジョ!!)


(なっ!!!)




「あの深津との熾烈な攻防の中で、あんなパスを出してきたーー!!」

「神だよ!松本の執拗にディフェンスを交わしたぞーーー!!」

「2人とも凄すぎだぜーー!!」




(まずい!!打たれる!!)

松本は懸命に手を伸ばすが、神のクイック3Pの前では、虚しいだけ。



『シュ!』


神の指から、この日初めての3Pシュートが放たれる。


そして、河田、高砂らのインサイド陣の上を超えていくボールは、静かにネットを揺らす。


『パサ!』




「キターーー!!!」

「待ってましたーー!!」

「ナイッシュー!!神!神!!」

観客席の海南応援団が熱くなる。




「よく松本を交わしたな。」

「牧さんこそ、最高のパスでしたよ。」


『トン。』

牧と神は拳をあてた。




「凄い・・・。牧君はいつ神君を見ていたんだろう。それに、パスを受けて決める神君も凄い・・・。」

「パスを出す側、受ける側、2人の呼吸はピッタリやわ。」

「アンビリーバブルや!!海南の必勝パターンの復活やで!!第2Qも目が離せまへんでーー!!」




この日初めての神の長距離砲が、山王のゴールを射抜いた。

海南の必勝パターンが、山王を脅かす。



山王 26
海南 22







続く。

#134 【牧始動】

2009-06-15 | #05 海南 選抜編
山王 4
海南 0




2本のダンクで、会場を沸かす山王。




「山王も派手だな。」

と三井。

「あの#14は、180cmくらいか?」

と魚住。

「あぁ、そうだ。沢北に代わり、先発SFを務めている1年生だ。」

赤木が答える。

「あれで、1年生か・・・。沢北がいないなら・・・と思ったが、
十分過ぎるくらい、穴を埋めているな。」

と花形。

「山王に死角は見つからない・・・。」

藤真が締めた。

開始早々から、重い空気が流れる神奈川応援団。




「清田。相手は、山王だ。簡単に点が決められるわけじゃない。気にするな。
それに、お前も強い山王を倒したかったんだろ?」

「にかっ。そうでした。強い山王だからこそ、倒しがいがある!!」

清田の顔が明るくなる。


(そうだ。飲まれるなよ!)

牧は、他の3人の表情を確認する。


高砂、武藤、神の目は、力強く輝いていた。


(ふっ、さすが、常勝海南を支えてきたやつらだぜ・・・。いくぞ!!)


『コクッ!』

牧の合図に、4人がうなずいた。




「おっ!おう!!海南は、飲まれてへんで!!この連続ダンクに、誰も顔色を変えてへん!!」

「動揺はない。この精神力が、海南の強さの源なのかしら。」




牧がトップでボールをキープ。

清田がVカットから、深津の右側にスクリーンをかけた。


(ダジョ!)


深津の意識が、右側に移る。


牧は、左へワンフェイク。

スクリーンをかけた清田とは逆の方向へ、ドリブルを開始した。

思いがけない方向へのドリブルに、深津の動きが遅れる。




「キターー!!」

「牧のペネトレイトーー!!」

「開始早々から、飛ばしてるぜーー!!」

「今度は、牧か!」




河田が、牧のコースを塞ぐ。


松本は、神にフェイスガード。


牧が飛ぶ。


河田も飛んだ。


(!!!)



『グルン!』



『スポ!』



ボールは、リングを半周回り、ネットに吸い込まれる。




「巧い!!!」

「さすが牧!河田にも負けてない!!」




牧は、飛んだ河田の脇から、レイアップを放っていた。


「突っ込んでくると思ったが。」

「あとのお楽しみだ。」

「うはっ。楽しみにしているぜ。」



山王 4
海南 2




「牧め、あえて河田に向かっていったか。」

「海南のバスケは、山王にも劣らないと言わんばかりのプレーだったな。」

魚住と赤木が話す。




だが。

中、外、中、外と細かく繋いだパスを、最後に松本がジャンプシュートで沈めた。




「確実に、ゾーンを崩して、決めてきやがる。」

「さすがとしか言いようがない。」




続く、海南のオフェンス。

ボールは、牧から清田。

牧は、松本にスクリーン、神のスペースを作る。

ボールは、清田から神へ。




「神だ!!」

「来るぞーー!!」




だが、神はすぐに牧へパス。

牧は、一気にドライブ。

松本は、思わず手を引っ掛けた。


『ビシ。』


『バス!』


左手を叩かれた牧ではあったが、右手一本で、シュートを決める。




「出た!牧のバスカンプレー!!」

「ボディバランス、ボールコントロール、最高!!」

「ナイッシュ!」




「いいぞ!」

ハイタッチを交わす海南選手。




「最初から、飛ばすなー。」

と笑う三井。

「今までもうっぷんを晴らしているようだな。」

と腕組の赤木。

「相手は、山王だ。牧が燃えないはずはない!」

「あぁ。」

藤真の意見にみんなが同意する。




ボーナススローを沈める牧。



「・・・。」

「松本、気にするな。あれが、牧だ。」

「あっあぁ。」


「牧は、俺がとめる・・・ダジョ。」

「・・・ダジョ・・・。」

(どうも、それには違和感があるな・・・。)

苦笑いの松本。



牧の個人技により、山王にくらいつく海南。

その後も、スクリーンを多様し、牧を中心に攻めるが、
神の3P、インサイドからの得点はない苦しい状態が続いた。

対する山王は、パスを中心に、確実にゾーンを切り崩しながら攻めたが、
開始早々に見せた派手なプレーはなかった。

牧の個人技に、堅実なバスケを見せる山王。


だが、山王ベンチにはまだ沢北がいる。

余力を残して、第1Qが終了した。



山王 26
海南 19






続く。

#133 【幕開け】

2009-06-13 | #05 海南 選抜編
準決勝 第2試合

山王工業 × 海南大附属



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【山王工業】青

PG…#4 深津 一成 180cm/3年
SG…#6 松本 稔 184cm/3年
SF…#14 柳葉 敏 179cm/1年
PF…#5 野辺 将弘 198cm/3年
 C…#7 河田 雅史 197cm/3年


【海南大附属】白

PG…#4 牧 紳一 184cm/3年
SG…#10 清田 信長 179cm/1年
SF…#6 神 宗一郎 189cm/2年
PF…#9 武藤 正 184cm/3年
 C…#5 高砂 一馬 191cm/3年

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「やっぱり、沢北はでないのかよーー!!」

「沢北抜きで勝てるほど、海南は弱くないぞーー!!」

「牧、絶対勝てよーー!!」

山王三銃士の試合を観戦しに来た観客からは、若干の野次が飛ぶ。




「俺だって、出たいんだよ。ぐすん。」

不満を漏らす沢北。




そんな不機嫌そうなベンチに座る沢北を見て、牧が問いかける。

「深津、沢北は怪我でもしているのか?」

「これがベストメンバー・・・・・・ダジョ。」


「ダジョ?山王のキャプテンは、面白いこというぜ。」

と清田。


「・・・。」

(沢北はやはり怪我か・・・。)

牧が思う。


「なんだ、深津。結局、いい接尾語は、思い浮かばなかったのか?ぶはっ。」

「これが気に入ってるんダジョ。」

「わかった、わかった。」

河田が続ける。


「牧。手加減はしねぇぞ。初めから、飛ばしていくぜ。」

「望むところだ。」




河田と牧のボルテージと同様に、会場のボルテージも上がる。

「わぁぁぁーーー!!」

「いけぇぇーー!!!」




河田と高砂が、センターサークル内に、踏み込む。


「お前も神奈川県代表センターなら、俺を熱くさせろよ。」

「・・・。ナメてかかると、痛い目みるぞ。」



『シュ!』


主審の手から、ボールが放たれた。




「いよいよ、始まったーー!!!」

「山王対海南の夢の対決だーーー!!!」




『バシ!』


ボールは河田から、深津へ渡る。


『キュッキュ!』


海南は、藤真の予想通り、2-3のゾーンをしいた。



「予想通りダジョ。」


『ダムダム・・・』


『ビィ。』


深津から0°近くの柳葉へ。

柳葉は、シュートを狙う動きを見せる。

つられて、武藤が前に出る。

河田が武藤の裏をとった。


「河田、来るぞ!高砂、ケア!」


柳葉は、河田にボールを入れる。

高砂と武藤が囲みにかかるが、


『キュ!』


『ダム!!』


高速スピンムーブから、フロントチェンジで、2人を抜き去った。

そして、渾身の力を込め、ワンハンドでリングに叩き込む。



『ドガァァー!!』



「ぶしっ!!」




「うおぉぉーー!!!」

「いきなり、河田のダンクーーー!!!」

「海南2人がかりでも止められないーー!!」




「・・・・・・。」

無言の高砂と武藤。


「挨拶代わりだ。」にっ。


(ちっ、河田のやつ、国体よりスピードアップしている。)

河田を見つめる牧。


「武藤さん、高砂さん、大丈夫です。ダンクでも2点ですから。きっちり返して行きましょう。」

「おっおう。」


(ふっ、神め、今俺が言おうとしたことを。)

牧の口元が緩んだ。




海南の反撃。

山王は、マンツーマンでディフェンスをする。

松本は、神にタイトにあたっている。


(やはり、神にはボールも持たせてくれないか。ならば・・・。)


『キュ!』


牧の動きに反応する深津。


「ぐっ!」


「抜かせないんダジョ。」


「牧さん!」

ボールは、牧から清田へ。


「俺が、No.1一年だ!証明してやる!!」

「??」


清田のフロントチェンジ。

柳葉の体勢が崩れた。

そこに追い討ちをかけるように、武藤がスクリーン。

野辺が清田にスイッチ。




「横なら清田だ。」

と観客席の藤真。




『キュッキュ!』


ワンフェイクから、野辺を抜き去ると、河田が清田に詰め寄った。


「来い!清田!!」


(よし!!)


その瞬間、ゴール下でフリーとなった高砂にパスを出す。


「あっ!」


『バシ!』


「お見通しだ。」


パスは、河田に完璧にカットされた。


「戻れ!!」


ルーズボールを拾った松本から、中央の深津へ。

牧、神が懸命に戻るが、山王の速攻は速い。

前線を走る柳葉へパス。



「今はお前がエースダジョ。」



ワンマン速攻から、柳葉が見せる。



『キュ!』



『ドガァ!!』




「出たー!!柳葉のダンクーー!!」

「あの身長でダンクができるのか!?」

「山王、連続ダンクだーー!!」

「海南、太刀打ちできねぇぞ!!」




戻ってくる柳葉を見ている清田。

(くそー。ぜってー、負けねぇぞ!!!)




「柳葉のやつ、いつになく前半から飛ばしてやがる。」

と柳葉を見つめるベンチの沢北であった。




準決勝第2試合は、山王の2連続ダンクで、幕開けとなった。



山王 4
海南 0






続く。

#132 【準決勝開始】

2009-06-09 | #05 海南 選抜編
選抜優勝大会 準決勝の当日を迎えた。


第1試合

愛和学院 × 博多商大附属


第2試合

山王工業 × 海南大附属




コートでは、すでに第1試合の熱戦が繰り広げられ、終盤を迎えていた。



サブアリーナにいる海南選手の耳にも、観客の歓声が聞こえていた。

「さすが、準決勝ともなると、一段盛り上がりますね。」

「もう第4Qだし、相当盛り上がっているんじゃないですか?」

「愛知の星は、勝っていますかね?」

「そうだな・・・。」

「やっぱり、牧さん、気になります?」

「あぁ、少しな。」

「博多も強敵だ、そうやすやすと勝たせてはくれないだろう。」

と高頭。



そして・・・。

第1試合の終了を告げるブザー音が、かすかに聞こえた。



「よし!うちの番だ。まずは、目の前の山王を倒す!明日の決勝を考えるのは、それからだ!いくぞ!!」

「おう!!」

体中に汗を浮かび上がらせている海南選手が、アリーナに向け、歩を進めた。

牧の心には、プレッシャーよりも、応援してくれるみんなの想いが溢れていた。




その頃、東京体育館の入口では、係員が、張り出してある大きなトーナメント表に、
第1試合の結果を記入していた。


『キュ!キュ!』


「・・・2対85と・・・。よし、これでOKだな。」

書き終えた係員が事務所に戻る。



その横を、ある団体が通り過ぎた。



「ちゃんと席とってあるんだろうな。三井。」

「大丈夫だって。てめーのでかい図体でも座れるって。」



「あれって、赤木じゃない?」

「赤木って?」

「IHで山王を破った湘北高校のセンターだよ。」

「そうだ!間違いない。前に歩いているのは、三井だ!」

「三井って怖そう。赤木はやっぱり迫力あるな。」

「げっ!!」

「あの人なに!!赤木よりデカい!!」

「赤木の親父じゃねぇのか?」



彼らが歩くと観客がざわついた。


「俺たちも人気者になったな。」

と笑う三井。

「ふん!興味などないわ。」

「俺って、赤木の親父に見られるくらい老けて見えるのか・・・。」

「ふっ。」

「笑うな。藤真!」

「そういえば、花形はコンタクトにしたんだな。」

「あぁ。こっちのほうが、動きやすいからな。ところで、仙道や流川たちはこないのか?」

「流川は、練習だとよ。」

「仙道は・・・、たぶん練習だ。自信ないけど・・・。」




「えーと、確かこの辺に・・・。」


『キョロキョロ・・・』

誰かを探している三井。


「みっちゃ~~~ん!!」

皆が声の方向に目をやると、堀田らの三井軍団が席を確保していた。

しかも、その席は、三井の旗によって、確保されていた。


「バカッ!そんな太い声で呼ぶな!!しかも、なんで旗を持ってきているんだ!!」

「へっ。この旗は、命の次に大切なんだ。肌身離さず持っていたいんだ。」

「・・・。」

無言の三井。


「お前らは、そういう仲なのか?」

「ちげーよ!!!」

3年生メンバーは、魚住の突っ込みに慌てる三井を見て笑う。


この日、会場を訪れたのは、藤真と花形、三井と魚住、そして、受験勉強真っ只中の赤木であった。



そうこうしているうちに、コートでは、センターラインを挟んで10名の選手が、立っていた。


「早く席に座れ、始まっちまうぞ。」

席につく5人。

「やっぱり、山王のインサイドは強烈だな。」

「武藤と高砂には、ちーと荷が重いんじゃないか。」

「今日は、2-3のゾーンをしいてくるだろう。高頭監督なら、そう考えるはずだ。」

「藤真のいうとおりだ。ゾーンでなきゃ、海南にあのインサイドは抑えられん。」




「見所はどこでしょうか?」

「全てよ!!深津君対牧君のNo.1PG対決、王者山王SGが名シューター神君を抑えられるか、
柳葉君、清田君の1年生対決、PFはロールプレイヤー同士の対決ね。
そして、大学でも即戦力とされている河田君を高砂君がどこまで抑えられるか?
全てのポジションで、素晴らしい戦いが見られるわ。」

「ドキドキしてきたでーー!!もうあかん!!!ちびってしまいそうやーーー!!
姉ちゃん、わいはトイレ行って来る!!!」

「あっ、彦一君。ダメだって・・・。弥生さんが・・・。」

中村は、そうっと弥生の顔を見た。

弥生の頭から角が生えていた。


「彦一ぃぃぃ!!」

「ひぃぃぃーー!」



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【山王工業】青

PG…#4 深津 一成 180cm/3年
SG…#6 松本 稔 184cm/3年
SF…#14 柳葉 敏 179cm/1年
PF…#5 野辺 将弘 198cm/3年
 C…#7 河田 雅史 197cm/3年


【海南】白

PG…#4 牧 伸一 184cm/3年
SG…#10 清田 信長 179cm/1年
SF…#6 神 宗一郎 189cm/2年
PF…#9 武藤 正 184cm/3年
 C…#5 高砂 一馬 191cm/3年

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まもなく、準決勝 第2試合の開始を告げるブザーがなる。







続く。

#131 【コンビ結成】

2009-06-08 | #05 海南 選抜編
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<<回想>>

高頭が選手を集め、明日の山王戦に備えて、ミィーティングをしていた。



「今日の試合は、きつかったな。だが、明日はもっときつくなるぞ。どうだ、山王戦を前に、今の心境は?」

(明日の相手は、山王だ。いくら、お前らだって、少しは臆するところもあるはずだ・・・。
なんとか、その気持ちだけでも、排除できたら・・・。これは監督の仕事だ。)


「山王だろうが、どこだろうが、関係ないっすよ。目の前の敵をぶっ倒す。それだけですよ。
ねぇ、牧さん?」

「あぁ。準決勝が山王。大いに結構です。どうせ、倒さなければならない相手なんですから。」にやっ。


(清田・・・、牧・・・。)


「お前たちは、明日の山王戦になんとも思わんのか?」


「まさか。監督も変なこといいますね。」

「えぇ。全く。楽しみなだけですよ。」


「神?武藤、高砂は?」

『コク。』

微笑みながら、神がうなずく。

「はい。」

と武藤。

「頼もしい仲間がいますから。」

と高砂。


「・・・、そうか・・・。」

(俺の考えすぎだったようだな。選手を信じられないなんて、監督失格だな。)

苦笑いの高頭。


「監督、彦一の資料は?」

「ないらしいな。」

『パタパタ・・・。』

「なんだよ、山王が勝ち上がってくるくらい、わかっていただろうに。彦一もしょうがねぇな。ったく。」


「で、明日はどうしましょうか?」

と牧が尋ねる。

「いつもどおりだ。海南のバスケをする。それ以外は何も考えておらん。わっはっは。」

「ふっ、わかりやすいですね。」

牧も笑った。



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ミーティング後、各々自由時間となっていた。

あるものは爆睡し、

あるものはボールに触れ、

あるものは作戦の確認をし、

あるものは考え事をしていた。




3年生の宿泊部屋。


『トントン・・・』


「ん!?誰だろう?清田かな。」

宮益が部屋のドアを開けると、そこには男が立っていた。


「疲れているところ、申し訳ないが、牧・・・、いてるか?」

「あっ。あ~、いるよ。ちょっちょっと、待ってて下さい。」

部屋の奥へ行く宮益。


「牧、お客さんだ。」

「俺に?」

窓の横に座り、考え事をしていた牧が、椅子から立つ。


「おおきに。」

「土屋。」

「つかれているところすまんが、ちーと付きあわへんか。」

「あぁ。いいよ。」


「宮!少し、外出てくるから、先に寝ててくれ。」

「外は冷えるから、コートくらい、着ていけよ。」

エレベーターを降り、ロビーを抜ける2人の男。

夜空には、冬の大三角形が輝き、月は光々とあたりを照らしていた。


「珍しいな、大栄のキャプテンが直々に挨拶に来るとは。」

「挨拶やあらへん。ただ、ちーとお前と話しときたかっただけや。まずは、今日は、お疲れ様や。」

「お互いな。」

2人の顔に笑みがこぼれる。


「わいらは、またベスト8で負けてもうた。だが、悔いはあらへん。
最後まで、ようやった。他の4人も同じ意見やった。」

「あぁ。俺たちもあんなに、緊迫した試合をしたのは、初めてだ。」

「楽しかったで。」

「俺たちもだ。」

「牧、明日の試合、うちらの試合よりも厳しいなるな。せやけど、負けるなよ。」

「まいったな。」

と苦笑い。


「なんや?」

「また、背負っちまった。
神奈川のやつらの想い、秋月の大和の想い、そして、土屋の想いだ。もう負けれらない。」

「そやな。しっかりな。だが、これだけは忘れへんようにな。
沢北がベンチにいるっちゅうことは、山王は半分の力しか出してへんとゆうことや。」

「半分か・・・。忠告、ありがとうな。ありがとうついでに悪いんだが、土屋。」

「ん!?」


「今日の試合の前から、決めていた。俺は白金にいく。来年からよろしく頼む。」

「おっおう。」

土屋は少し驚いた表情を見せたが、すぐに笑顔に変わった。


「頼もしい限りやで。打倒、深体大、目指せ、全国制覇ってな!」


『ガシ!』

2人は、笑いながら固い握手をした。




深沢体育大学の山王OBコンビ

PG 深津 一成 & C 河田 雅史



そして・・・。



慶徳義塾大学のイケメンコンビ

PG 藤真 健司 & SG 諸星 大



に対抗するコンビとして、



来年4月、白金学院大学に司令塔コンビが誕生する。

PG 牧 紳一 & SF 土屋 淳




彼らが、日本にバスケブームをもたらすのだが、それはまた別の話。







続く。

#130 【準決勝前日】

2009-06-06 | #05 海南 選抜編
週刊バスケットボール編集部の会議室。



弥生と中村、そして彦一が明日の準決勝について、準々決勝を振り返りながら、予測を立てている。



「有り余る余力を残した王者山王に挑戦するのが、第4試合の延長戦を制した海南大附属です。」

「ええ。正直、海南は今日の試合以上にきつくなるわね。
アウトサイドの3人は、互角と考えても、インサイドでは圧倒的に山王が有利。」

「河田さんに、野辺さんに、美紀男君・・・、さすがに厳しいな・・・。」

「ただ、それはあくまでも1on1を考えたらの話。
個をチームでつぶす作戦なら、山王のオフェンスを封じることもできるかもしれないわ。」

「ゾーンってことですか?」

「そういうことね。ただ・・・。」

「ただ?」

「沢北君が出場するようなら、この作戦も厳しいわ。」

「はぁー。われらの海南もここまでか・・・。」


「中村さん!!そんなことないで!!
山王だって、3連覇というプレッシャーもあるはずや!そこを突いていけば、なんとかなるかもしれへん!」

「プレッシャー・・・か。あのこたちにあるかしら・・・。」




その頃、山王選手が宿泊するホテルでは、資料に目を通しながら、対海南戦の作戦が念入りに確認されていた。



「2回戦以降、その爆発力は影を潜めているが、やはり海南の中心はこの男だろう。深津、頼むぞ。」

と堂本。

「1年ぶりだな。牧とやるのは。あのときは、お前のほうが上手だったが。」

「もう、忘れたワン。明日は、初心に戻って、全力で抑えるワン。」

「あぁ。任せたぞ。」

「おう・・・だジョ。」

「!!」

「なにそれ!」

「新しい接尾語!!」

「決勝戦用か?ぶはっはっ。」

「そう・・・だジョ。」

(ぷぷっ、深津さん、それはないでしょ!?)

「沢北、何かいいたそうだジョ?」

「やっぱり、おかしいですって。それ。」

「・・・。そうか・・・だジョ。明日までに、新しいの考える・・・ジョ。」




「SGの清田には・・・、柳葉、お前がつけ。同じ1年には、負けるなよ。」

『コク。』


「疲れたら、すぐ俺にいえ。俺が試合に出てやるから。」

「沢北は、もういらない・・・ジョ。」

「あぁ。柳葉のほうが、頼りになる。」

「なっ!!」

「お前、最近、柳葉に人気持っていかれているぞ。ぶはっ。」

「なっ!そうなんですか、野辺さん?そうなのか、柳葉?」

「沢北は、無駄によくしゃべるから。」

『・・・。』にや。


「あっ!?いま、お前、笑ったな!!」


『ガシ!』

柳葉にサソリ固めを決めようとするが、

「うちのエースに何をする。」


『ギシギシ・・・。』

反対に、河田に卍固めを決められる沢北であった。

(絶対に、アメリカに帰ってやる・・・。しくしくしく・・・。)




「続いて、海南のスコアラーであり、No.1シューターの呼び声高い神だ。
牧同様に、今大会、爆発とまではいっていないようだが、それでも毎試合30点近く獲ってくる。」

「監督、明日はイチノでいきますか?」

「いいや、最初は松本でいく。様子を見ながら、一之倉を使う。どっちにしても、神は2人に任せた。」

「はい!」




「ロールプレイヤー武藤正。相手のFを抑える能力は高い。
また、スクリーンアウトやスクリーンと地味なプレーをこつこつとやる男だ。
こういうプレイヤーがチームに1人いると、試合を有利に運ぶことができる。」

「沢北とは、反対だ・・・ジョ。」

「うんうん。」

「そうだな。」

『コクッ。』

「あっ!柳葉、またうなずきやがったな。俺は、先輩だぞ。
ちょっと、俺よりモテるからって、いい気に乗るなよ!」

「さーわーきーたー、さっきのじゃ足りなかったか?」

「いっいえ、何も・・・。」

(ちくしょう。柳葉のやつめ・・・。)

「武藤には、うちのリバウンド職人についてもらう。野辺、任せたぞ。」

「はい。」




「そして、最後は、技巧派センター高砂だ。
サイズは小さいが、相手からファウルを奪うことが得意なセンターだ。
サイズ、スキル、全てにおいて、お前には敵わないと思うが、油断はするなよ。」

「相手にとって、不足はありませんが、やっぱり物足りないな・・・。」

(赤木、桜木ともう一度やってみたかったな。)



(あれ!?やっぱり、俺の出番は、明日もないのか・・・?)

悲しげな表情を見せる沢北であった。




その頃、海南のホテルでは・・・。


「が~ご~が~ご~・・・。」

「うるさい!!」

清田は大きないびきをかきながら、爆睡をしていた。

それだけ、今日の大栄戦で体力を消耗したのである。


ちなみに、対山王戦の作戦会議は、数分で終わっていた。

彦一からの攻略ビデオもない。

大栄戦のビデオを作るだけで、ほとんどの時間を費やしてしまったことが、原因であった。


(海南対大栄学園は、わいのベストマッチや。しっかり記録せなあかん。)


週刊バスケットボール編集部の会議室で、一人考える彦一であった。




時間は、遡って1時間前。

海南選手は、会議室に集められていた。







続く。

#129 【第4試合終了】

2009-06-05 | #05 海南 選抜編
準々決勝第4試合が終了してから、4時間が経っていた。



週刊バスケットボール編集部の会議室。


弥生と中村、そして彦一が明日の準決勝について、準々決勝を振り返りながら、予測を立てている。


「まずは、第1試合ね。」

「はい。予想以上の点差をつけて圧勝した愛和学院とこちらも20点差をつけて勝利した博多商大附属の試合ですね。
今大会No.1SG候補の諸星君と、こちらは確定かと思いますが、No.1PF新庄君との対決でもあります。」

「お互い、ジュニアで合宿している仲、手の内はわかっているといっても過言ではないわ。」

「ところで、相田さんは、記事にも書いていたと思うんですが、No.1SGは誰だと思っているんですか?
僕はやっぱり諸星君かなと。」

「ええ。私も異論はないわ。
朝日君より上なのは今日証明されたし、松本君や、博多の牧瀬君も素晴らしい能力を持っているけど、
リーダーシップや試合への影響力を考えると彼がベストだわ。彦一は、どう思う?」

「わいは、神さんや。2年生であの精神力を持っている人は、そうはおらへん。
3年生になれば、ますます磨きがかかる。せやから、わいは将来性も含めて神さんを推すで。」

「相変わらず神奈川ひいきね。でも、今日の延長戦のあの3本の3Pは、圧巻だったわ。
いくら、味方が彼のために、フリーを作り出したからといって、そう簡単に入るもんじゃない。
ただ、彼は味方の援護があって、その威力を発揮する。自ら、チャンスを作り出す諸星君とはタイプが違う。
そういった意味でも、やはり諸星君ね。」

「姉ちゃんは、相変わらず頑固やな。」



中村が進行を続ける。

「両校の身長差は、ほぼ互角です。お互いに3人のプレイヤーが中心となって、勝利に導いてますが、
僕の印象だと、博多のビッグ3のほうがインパクトは大きいですね。
ただ、PGの森田君とCの大原君は、少し物足りない気がします。
反対に、愛和のほうは、インサイドの2人もいい仕事しますし、チーム力では愛和の方が、上だと考えています。」

「なんや、中村さん、バスケについて、えれー詳しくなっとるでないですか?
進行も様になってはりますし。」

「えへっ。ありがとう。僕もただ試合を観ているだけではないからね。抜群の読みで、試合をぶった切る。
ぶった切りの中村になんていわれていますよ。」にたっ。

「ふーん。誰にいわれているのよ??じゃ、中村君は、第1試合はどうぶった切るのよ??」

「うん。僕の読みだと・・・。互角・・・。どっちが勝つかわかりませんね。」

「なんやそれ!?」

「はぁー。ダメだ・・・。」

「実力が互角なら、わいは、愛和に勝ってほしいで。」

「私は記者だから、どっちが勝ってほしいなんていわないわ。」




「さて、次は第2試合です。」

「準々決勝でも、沢北君は出場しませんでしたし、今日は河田君まで2分間の出場のみ、明日の準決勝はどうでしょうか?
沢北君と河田君の出場はありますかね?」

「うーん。沢北君は出ないまでも、河田君は出場してくるはずよ。初めは、なんていう采配なのって思ったけど、
堂本監督の大胆な作戦の裏には、柳葉君と美紀男君の成長力に自信があったのよね。
試合結果を見れば、納得せざるを得なかったわ。」

「その有り余る余力を残した王者山王に挑戦するのが、第4試合延長戦を制した・・・」




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<<回想>>

準々決勝 第4試合

大栄 62
海南 62




40分間でも勝敗が付かず、今大会初の延長戦突入となった。

先に主導権を握ったのは、第4Q最後の勢いと運を味方につけた大栄学園だった。



『ザシュ!』

小池が、3年生の意地を見せ、神を交わして、3Pを決めた。

「よっしゃ!!」


続いて、武藤のジャンプシュートを青島がブロック、海南は痛いミスを犯した。



『スポ!』

土屋の粘り勝ち。

リバウンドを直接、リングへねじ込む。



再び、焦る清田のシュートミス。


赤井のフックが決まった。



延長戦開始2分で、大栄は7点差のリードを奪った。

だが、ここから試合は急展開を見せる。



ボールを運ぶ清田から、最初のパスが神へ渡る。


『シュパ!』

意表つくクイックリリースシュートで3Pが決まった。

「神さーーん!!」



ドリブルをする桜井を牧と清田が囲む。

海南がオールコートプレスを敷いた。

冷静にボールを捌く桜井だが、この男はもっと冷静だった。



「予想通り。」

桜井から土屋へのパスを神がスティールする。

神から牧へ、下級生から上級生へのパスが勝利を近づけた。


「牧さん!ナイッシュ!」

「おう。あと2点!」


大栄 69
海南 67



だが、大栄土屋も黙っていない。

フロントコートから、ボールを受け取ると、牧をも抜き去り、ゴール手前で、赤井へのアシストを演出。

4点差となる。



今までの40分間とは違う乱打戦となった延長戦も残り30秒になっていた。



その間、神の3Pと牧のバスカンで6点を加えた海南。

対する大栄は、青島と桜井のミドルシュートが炸裂していた。

どちらもアシストをしたのは、土屋だった。



試合時間44分を超えても、なお2点差。



ヒートアップする会場とは別に、コートの10人は淡々と体を動かしていた。



牧がペネトレイトを見せる。

広がっていたディフェンスが一気に中に凝縮される。

そして、必勝パターン、神へのアウト。


『スポ!』

小池のチェックを物ともせず、ネットを揺らした。


延長戦3本目となる神の3Pで、ついに海南が逆転する。



残り13秒。

大栄 75
海南 76



桜井に代わり、土屋がボールを運ぶ。

清田を抜き去り、牧が懸命に土屋に並ぶ。


『ダム!』


『シュ!』


土屋が得意とするバックロールからのフェイダウェイを放った。


「牧っ!!」


『ティン!』


「もういれさせん!!」


牧が土屋のシュートに触れた。



『ガコ!』


ボールは、わずかにリングを外した。


海南は、第4Q終了間際の教訓を生かし、
牧は土屋をしっかりスクリーンアウト、武藤、高砂も青島、赤井を抑え込んだ。


『ガシ!』


リバウンドは、飛び込んできた清田が、2本のシュートミスを挽回するようにキャッチ、
そのままキープし、長い45分間の戦いに終止符を打った。


「よっしゃーー!!ベスト4進出だーー!!」


清田は、お決まりのように、ヘアバンドを高く放り上げた。



(敗因は、自らハイペースな延長戦にしてしまったことやな・・・。わいもまだまだや・・・。)


(勝因は、大栄がハイペースに試合を動かしたこと・・・。
スローペースでもってかれたら、正直・・・やばかったかもしれん。もっと気を引き締めなければ・・・。)



両キャプテンの土屋、牧がセンターサークル内で、今日の試合、未来の想いを込め、
固い固い握手を交わした。




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選抜優勝大会 準々決勝 第4試合

大栄学園×海南大附属

大栄 75
海南 76


【大栄学園】青 75

#4 土屋  21P 7R 15A
#5 赤井 13P 12R 
#6 小池 15P(3P3本)
#7 青島 14P 5B 
#10 桜井 12P 7A


【海南大附属】白 76

#4 牧  15P 8R 11A
#5 高砂 7P 9R 
#6 神 25P(3P7本)  
#7 真田 10P 
#9 武藤 6P 
#10 清田 13P

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続く。