つばさ

平和な日々が楽しい

いったん牙をむいた水は怖い。

2013年10月17日 | Weblog
春秋
10/17付

 19年ぶりに30個を上回るかもしれないという。今年生まれた台風の数の話だ。先月、京都の嵐山などで被害をもたらした18号の記憶も新しい中、こんどは26号が列島を襲い、伊豆大島では多くの尊い命が失われた。観測史上最多という大雨による土砂崩れが主な原因だ。

▼自然のままの山や崖をふだん目にせず暮らす大都市の人々は、土砂崩れと聞いても身に迫った問題に感じにくいかもしれない。しかし1969年の東京都の調査では、高さ3メートルを超す崖や擁壁が23区内に2万カ所以上もあった(芳賀ひらく著「江戸の崖 東京の崖」)。実際、7年前の台風では品川区で崖崩れが起こった。

▼今回の台風26号でも、今年春に駅を地上から地下に移した都内の下北沢駅でホーム下の線路が冠水。しばらく列車を運転できなくなった。埋め立て、地下開発、崖や山を崩したり埋めたりしての都心再開発や郊外の住宅建設。都市の拡大は自然環境への挑戦・改変を伴う。いざという時の危険度合いは年を追い増していく。

▼「300メートル離れた沢が氾濫し土砂が流れ込んだ」。自宅周辺が土砂で埋まった大島の住民が本紙の記事でそう語っている。千葉県成田市や神奈川県鎌倉市、東京都日野市といった、ごく普通の住宅地でも土砂崩れが民家を直撃した。いったん牙をむいた水は怖い。自宅周りの大地と河川の素顔を、改めて点検しておきたい。

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