つばさ

平和な日々が楽しい

ただの居酒屋通いにも、じつは遺産保護という重大使命があったり

2013年10月24日 | Weblog
春秋
10/24付

 詩人草野心平が言った。「日本料理は捨てる料理つまり犠牲の料理です。対照的なのが中国料理で、包容の料理なんです」。清楚(せいそ)、淡泊、美観が日本料理の性格だという指摘も含め、なるほどと思う話である。日本料理には厳選した素材のいい部分だけ使う印象がある。

▼が、それも和食、そうでないのも和食ということだろう。ユネスコが「和食」を世界の無形文化遺産に登録する見通しになった。対象はこの料理、あの料理というのではなく、「自然の尊重という日本人の精神を体現した食に関する社会的慣習」だそうだ。日々の暮らしそのものが遺産とは、考えてみれば大風呂敷である。

▼となると高級な会席料理や寿司だけでない。正月の雑煮やお節料理は当たり前。各地の郷土料理も、家庭の一汁三菜も、あるいは酒場で供される旬の小料理も、そこに「日本人精神の体現」があれば世界無形文化遺産ということになる。ただの居酒屋通いにも、じつは遺産保護という重大使命があったりするのかもしれぬ。

▼居酒屋を経営した経験もある心平に、「料理について」という詩がある。「ゼイタクで。/且(か)つ。/ケチたるべし。/そして。/伝統。/さうして。/元来が。/愛による。/発明。」。料理を分解していけば、詩が並べる要素に行きつくだろう。その本質は、和食が遺産になろうがなるまいが、変わるところはなにもない。

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