つばさ

平和な日々が楽しい

じつは自治体にとって駅の建設費負担も軽くはない。

2013年09月19日 | Weblog
春秋
9/19付

 全国に鉄道が延びていく明治の昔、線路敷設や駅の設置を拒んだ町が多かったという話をよく聞く。汽車が走ると宿場がさびれる。若者が都会に出て堕落する。煤煙(ばいえん)で桑が枯れる。などと訴えて鉄道を通さなかったからいまだに駅が繁華街から遠い……。そんな指摘だ。

▼ところが青木栄一著「鉄道忌避伝説の謎」によれば、その大半は根拠がない。なぜわが町には鉄道が来なかったのか、理由を模索したあげく、こうした「伝説」が誕生したという。鉄道誘致を逃したのを頑固なご先祖のせいにしたわけだ。リニア中央新幹線をめぐっても、将来さまざまな言い伝えが生まれるかもしれない。

▼東京・品川から名古屋まで最短40分。JR東海はきのう、2027年開業をめざすリニアの詳細なルートや駅の位置を公表した。新たなターミナルに発展しそうなところもあれば、在来線の主要駅とはやや離れた場所にできる中間駅もあって地元の思いは複雑なようだ。じつは自治体にとって駅の建設費負担も軽くはない。

▼時速500キロの速さを生かすために余計な回り道はいっさい避けたルートであり、駅の位置である。思えばとことんドライな「運送」手段なのだ。逃した地域にしてみれば、カネもかかるし、なあに、あんなものとやせ我慢しておきたくもなろう。夢を膨らませ、嫉妬も少しまとって、めくるめく心地の超特急が走りだす。

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