つばさ

平和な日々が楽しい

恋せよ若人。季節もよくなる。

2015年02月09日 | Weblog
筆洗2/9
 かつて世界は猫が支配していた。そういう言い伝えが中国にあるそうだ。人間がまだ話せなかった時代、猫だけは言語能力を身に付け、地球を運営していた。
 ある日、猫は気づいた。「地球を治めているよりも、日なたぼっこをしている方がましだ」。後任に人間を選んだ。人間に話す能力を譲ると、猫は話せなくなった。そんな事情で猫は人間を見ると微笑(ほほえ)むという。経済学者の竹内靖雄さんの本にあった。
 争い絶えぬ国際情勢や最近のおぞましい出来事を考えれば、後任に人間を選んだ猫の判断は正しかったのか。まったく、難しい仕事をわれわれに任せたものである。
 その一方で猫さん方は季語の〈猫の恋〉の時季を迎えている。寒中から早春にかけて妻恋を始め、赤ん坊のような声で鳴く。いい気なものである。〈またうどな犬ふみつけて猫の恋〉芭蕉。真面目な犬の顔が浮かぶ。
 最近の若者は異性と上手に付き合えないと聞く。二〇一〇年の数字だが、十八~三十四歳の未婚者で交際している異性がいないという男性は61・4%。女性は49・5%と高い。残念ながら今も傾向に変化はなかろう。
 猫は言葉を譲っても「恋愛能力」は譲らなかったか。猫をだしに説教する気は毛頭ないが、恋愛不足の時代がどうも心細い。誰かへの愛情は結局人類愛にも根底ではつながるものだ。事情もあろうが、恋せよ若人。季節もよくなる。