つばさ

平和な日々が楽しい

長のついた人がたくさんいるのだから。

2013年10月15日 | Weblog
春秋
10/14付

 明治に入り鉄道が全国へ延び始めたころ、車掌は「車長」と呼ばれていたそうだ。今のJR山陽本線を建設してのちに国有化される山陽鉄道という会社が最初に車掌に名を変え、これが広がったとされている。社長と同じ発音ではまぎらわしい、というのが理由だった。

▼「車掌」には列車内を掌握するという意味もあろうから、これも悪くない言葉だ。ただ「車長」からは、列車運行に責任を持つという姿勢がより伝わってくるかもしれない。異常発生時の乗客の誘導や急病人への対応などが双肩にかかる。重責を考えて長の字をあてた明治人は、なかなかのセンスだったというべきだろう。

▼きょうは「鉄道の日」。新橋―横浜間の日本初の鉄道開通が141年前の新暦10月14日だった。鉄道員一人ひとりの仕事への責任感は今はどうか。北海道旅客鉄道(JR北海道)ではレールの幅や高さの異常が放置され、非常ブレーキが利かない特急も見つかった。鉄道技術は進んでも大事なところが退化してはいまいか。

▼レールのずさんな保守点検の問題では、人員面の手薄さや資材不足を経営陣がそのままにしてきた。緊急対策としてレールの計測装置を2倍にするというが、安全運行へ責任ある立場として、現場との意思疎通をどのように深めるかも示さねばなるまい。社長、鉄道事業本部長など、長のついた人がたくさんいるのだから。