つばさ

平和な日々が楽しい

日米同盟に対する米国内の支持も一部損ないかねない

2013年10月05日 | Weblog
春秋
10/5付

 千鳥ケ淵戦没者墓苑はアーリントン国立墓地に「最も近い存在だ」――。米国のケリー国務長官とヘーゲル国防長官が千鳥ケ淵墓苑に献花したことに関し、米国防総省高官はこう述べたそうだ。5月の安倍晋三首相の発言と引き比べると、そのメッセージはよくわかる。

▼アーリントン墓地はバージニア州にある戦没者慰霊施設。安倍さんは米誌とのインタビューで、靖国神社を同墓地になぞらえて靖国参拝は自然なことだと主張した。これに対し両長官は「靖国とアーリントンを一緒にしないで」と、行動で伝えたわけだ。同時に、安倍政権を警戒する中国や韓国へのメッセージでもあろう。

▼キリスト教、仏教、ユダヤ教、イスラム教、ヒンズー教……。同墓地のウェブサイトを訪れると、様々な信仰のシンボルが目に入る。政府が用意する墓石に刻むことが可能なシンボルの一覧なのだという。恥ずかしながら、出雲大社ハワイ分院の存在もここで教わった。それほどに、宗教的な寛容が重んじられているのだ。

▼一方の靖国は一つの宗教法人であり、同墓地になぞらえるのはやはり無理がある。安倍さんの言動によっては、日米同盟に対する米国内の支持も一部損ないかねない、そんな懸念をオバマ政権は抱いたのかもしれない。両長官は米国民向けにメッセージを発したようでもある。高等なコミュニケーション戦術といえようか。