「やり残した仕事がある」と早期退陣を拒否する菅直人首相に、頭を悩ませる民主党幹部たち。予算執行に不可欠な特例公債法案の成立と引き換えに辞任するように、誰がどう説得するのか、が問題だ。
実はこの間、自民党でも似たような「鈴付け問題」が起きていた。事態が露呈したのは、党改革委員会の塩崎恭久委員長が改革案の中間提言をまとめると同時に、“抗議の辞任”を表明した六月十日。
「執行部に党改革の熱意が感じられない。提言はたなざらしになる。一人でとんがり続けても意味がない」
と塩崎氏は怒りを露にした。当初の改革素案にあった、「首相経験者は次期衆院選で公認しないことを検討」という項目の削除を余儀なくさせられたからだ。
「“派閥政治と長老支配”とのイメージから脱却しなければ自民党は再生できないという中堅・若手の危機感を代弁し、派閥会長と首相経験者のクビに鈴をつけようとしたのです。これが長老たちの逆鱗にふれました」(自民党担当記者)
志帥会(伊吹派)会長の伊吹文明元幹事長は派閥総会で
「わが志帥会は私以下、派閥の力を借りて党の運営に関与したことは一切ない。もし塩崎君が実感しているのなら、彼は所属している宏池会(古賀派)を抜けたらいい。パフォーマンスで言っているのだとすれば菅首相と同じだ」と不快感をあらわにし、古賀派会長の古賀誠元幹事長は塩崎氏に「認められない」と撤回を迫った。
だが、塩崎氏以上に集中砲火を浴びたのは、幹事長の石原伸晃氏だった。
「確信犯の塩崎氏に言っても無駄だし、生真面目で頑固な谷垣禎一総裁や石破茂政調会長に直談判するのは長老にしても面倒くさい。その点、先輩の顔を立てようとする石原幹事長なら、普段からかわいがっていることもあり、総理経験者は皆『伸晃を呼べ』となる」(自民党関係者)
伊吹氏や森喜朗、麻生太郎元首相ら重鎮から「どういうつもりだ」と叱り飛ばされた石原幹事長は、抵抗することなく、あっさり陥落。
「(首相経験者の非公認などの項目は)本人たちから了解をもらったのか。盛り込みたいなら自分で説得してくれ」と塩崎委員長に大幅修正を指示したのだ。
幹事長という要職にありながら“軽量級”であることをさらけ出した石原幹事長には、重すぎた“鈴”だった。