日光観光圏
観光圏整備計画
4月8日(金)14時9分配信 毎日新聞
世界遺産「日光の社寺」や温泉など、国内屈指の観光地として知られる栃木県日光市。東日本大震災では大きな被害はなかったものの、直後からホテル・旅館のキャンセルが相次ぎ、街は“自粛ムード”に沈んでいる。隣接する福島県で起きた原発事故も追い打ちとなり、関係者の間からは「2次災害だ」との悲鳴が上がっている。【浅見茂晴】
「全く人が動かない。こんなピンチは初めて。昭和天皇の大喪の礼(89年)の時にもなかった」。日光観光協会の新井俊一会長(62)は危機感をあらわにした。
日光東照宮によると、震災翌日の3月12日から同31日までの東照宮の入場者数は、前年同期比で実に95%減の計約5000人。過去に例がない落ち込みとなっており、13日から始まる予定だった日光二荒山(ふたらさん)神社の「弥生祭」に加え、徳川家康ゆかりの「百物揃(ひゃくものぞろえ)千人行列」(5月)の中止も決まった。
新井会長が経営する旅館「鶴亀大吉」(客室数28)も、震災前は稼働率が90%から満室に近かったが、今は10%程度。キャンセルの理由の大半が、福島第1原発事故の影響を懸念したものだという。
特に外国人観光客が深刻だ。中禅寺湖畔にある「日光レークサイドホテル」によると、フランスやイタリアなど欧州からのツアー客が、各国政府の渡航自粛要請を受け予約を相次いでキャンセル。5月以降は「ぽつぽつ予約が入り始めている」(同ホテル)が、予断を許さない。
こうした事態を受け、県内六つの観光協会は先月30日、対策を求める要望書を県に提出。福田富一知事は今月5日、「とちぎ観光安全宣言」を発表した。
世界遺産地区と奥日光は6月から、修学旅行シーズンを迎える。観光協会は放射線測定器を購入して独自に放射線量を測定。ホームページで公開して安全性をアピールする予定だ。
■鬼怒川・川治温泉
大型ホテルや旅館が集まり、計約4000室、2万人の収容能力がある鬼怒川・川治温泉。バブル崩壊に続き、地元の足利銀行破綻(03年)やリーマン・ショック(08年)など幾度も危機を乗り越えてきたが、あるホテルの幹部は「今度は半端じゃない。足銀破綻以上の影響」と声を落とす。
このホテルも稼働率は10%程度。震災からの1カ月分だけで、約5700人の宿泊がキャンセルされた。パートを含め従業員約100人は、ワークシェアリングでしのいでいる状況だ。幹部は「まだ減るかもしれない。5月の予約も3日間で500人のキャンセルがあったばかり」と嘆く。
■湯西川温泉
福島県境に近く、16軒の温泉宿が肩を寄せ合う湯西川温泉。創業345年の老舗旅館「本家伴久(ばんきゅう)」も例外ではない。45室、150人を収容できるが、すでに3、4月の予約をすべてキャンセルされ、今月28日まで休業中だ。5月からの予約客から確認の電話が入ると「大丈夫です」と懸命につなぎ留めている。
それでも、24代目の大女将(おかみ)、伴玉枝さん(77)は「小学6年で迎えた敗戦、旅館が全焼したことに比べれば、大したことはない」と意気軒高だ。
伴久旅館では、料金を一律で1人1万3000円(1泊2食)に設定し、1000円を被災地への義援金に充てるプランを作成。ダイレクトメールなどで会員4800人に知らせている。従業員30人の雇用も維持する。
「ピンチはチャンス。こういう時こそトップがしっかりしなきゃ」
「全く人が動かない。こんなピンチは初めて。昭和天皇の大喪の礼(89年)の時にもなかった」。日光観光協会の新井俊一会長(62)は危機感をあらわにした。
日光東照宮によると、震災翌日の3月12日から同31日までの東照宮の入場者数は、前年同期比で実に95%減の計約5000人。過去に例がない落ち込みとなっており、13日から始まる予定だった日光二荒山(ふたらさん)神社の「弥生祭」に加え、徳川家康ゆかりの「百物揃(ひゃくものぞろえ)千人行列」(5月)の中止も決まった。
新井会長が経営する旅館「鶴亀大吉」(客室数28)も、震災前は稼働率が90%から満室に近かったが、今は10%程度。キャンセルの理由の大半が、福島第1原発事故の影響を懸念したものだという。
特に外国人観光客が深刻だ。中禅寺湖畔にある「日光レークサイドホテル」によると、フランスやイタリアなど欧州からのツアー客が、各国政府の渡航自粛要請を受け予約を相次いでキャンセル。5月以降は「ぽつぽつ予約が入り始めている」(同ホテル)が、予断を許さない。
こうした事態を受け、県内六つの観光協会は先月30日、対策を求める要望書を県に提出。福田富一知事は今月5日、「とちぎ観光安全宣言」を発表した。
世界遺産地区と奥日光は6月から、修学旅行シーズンを迎える。観光協会は放射線測定器を購入して独自に放射線量を測定。ホームページで公開して安全性をアピールする予定だ。
■鬼怒川・川治温泉
大型ホテルや旅館が集まり、計約4000室、2万人の収容能力がある鬼怒川・川治温泉。バブル崩壊に続き、地元の足利銀行破綻(03年)やリーマン・ショック(08年)など幾度も危機を乗り越えてきたが、あるホテルの幹部は「今度は半端じゃない。足銀破綻以上の影響」と声を落とす。
このホテルも稼働率は10%程度。震災からの1カ月分だけで、約5700人の宿泊がキャンセルされた。パートを含め従業員約100人は、ワークシェアリングでしのいでいる状況だ。幹部は「まだ減るかもしれない。5月の予約も3日間で500人のキャンセルがあったばかり」と嘆く。
■湯西川温泉
福島県境に近く、16軒の温泉宿が肩を寄せ合う湯西川温泉。創業345年の老舗旅館「本家伴久(ばんきゅう)」も例外ではない。45室、150人を収容できるが、すでに3、4月の予約をすべてキャンセルされ、今月28日まで休業中だ。5月からの予約客から確認の電話が入ると「大丈夫です」と懸命につなぎ留めている。
それでも、24代目の大女将(おかみ)、伴玉枝さん(77)は「小学6年で迎えた敗戦、旅館が全焼したことに比べれば、大したことはない」と意気軒高だ。
伴久旅館では、料金を一律で1人1万3000円(1泊2食)に設定し、1000円を被災地への義援金に充てるプランを作成。ダイレクトメールなどで会員4800人に知らせている。従業員30人の雇用も維持する。
「ピンチはチャンス。こういう時こそトップがしっかりしなきゃ」