格安航空会社
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ZAK×SPA!週刊SPA! 10月22日(金)14時0分配信
★記者が実践14万8298円で世界一周できた!
ANAも参入を表明するなど、世界中の航空業界で広がるLCC(格安航空会社)の値下げ競争。日本からもアジア各国への格安旅行が可能になってきたわけだが、世界各地ではすでにLCCが多数就航している。
「それらを組み合わせれば、世界一周が15万円以内でできるんですよ!」なんてことを口走っていたのが、事の発端だった。
編集部から「じゃあ、行ってきて」と言われ、急に世界を一周するハメに……。
LCCの狭い席で長距離移動すれば、体重110kgの僕のボディが悲鳴を上げ、エコノミー症候群になりかねない。過酷な旅になることは間違いなかった。
だが、それよりも本当に15万円以内でできるのか? そんな不安で迷っている暇もなく、早速、旅行ルートを調べてみることに。
日本からは上海をはじめ、韓国や台湾、マニア、シンガポールなどにLCCが就航している。
格安チケットは空席率などによって料金が変動。少しでも安く旅をするには、早めに予約しておかなければならない。何より無事に日本へ帰国するため、出発前にチケットを予約することにした。
そして、世界5都市を回る総移動距離3万924kmにわたる世界一周旅行の全ルートが決定。チケット代は、なんと合計14万8298円也!
時間に余裕があれば、約11万円でも可能。こんな格安で世界一周ができるとは正直、驚きだ。
格安航空なのにシートは革張り! 驚くコスト削減効果とは!
まずは、時期的に最安値だったセブ・パシフィック航空で関西空港~マニラへ。帰国までのチケットを確保し、余裕をかましていたら、いきなりハプニングが発生!
関空で出国手続き後、事もあろうに搭乗券を落としてしまったのだ。LCCでは再発券には手数料が発生したり、再びチケット代を払うケースもある。だが、航空会社のスタッフに尋ねると、「搭乗券を再発券しておくので搭乗ゲートに行ってください」とあっさりOK。
LCCは、チェックインなどの業務を別会社に委託しているケースが多いが、その割にはたらい回しにされず、即対応してくれた。ありがとう、セブ航空!
それにしても座席の幅も前席との間隔も狭い! シートは革張りだが、これは布製に比べて掃除の手間がかからず、コスト削減が目的。高級感を出すためではない。
機内では、LCC初体験の中年男性が「狭すぎるだろ!」とキレつつ、「まあ、安かったから仕方ないか」と自分に言い聞かせていた。
確かに、1km/約6円で移動できるのだから、我慢するしかない。
また、大手エアラインの国際線にはある液晶モニターなど搭載されているはずもなく、イヤホンを差し込む穴もない。あるのはエチケット袋と機内誌というか、日本語で書かれたメニュー表だ。
早速、有料の機内食&ドリンクの機内販売が始まった。日本人はCAに声をかけずに、そのままスルー。注文するのはフィリピン人ばかりだ。有料の機内食には抵抗があるらしく、搭乗前に食料を買って持ち込む日本人が多かった。
隣に座る日本人男性も、「なんかもったいないよ。料金も円じゃないから」とのこと。確かに、料金表示はフィリピン・ペソだが、実際は日本円でもパンが買えた。
入国係官に「お前はヤクザか?ブラックリストに載っている」
日本を出て約4時間、狭いシートに耐えながらマニラに到着。だが、ここでも再びトラブルが発生。
入国係官に「お前はヤクザか? ブラックリストに載っているから入国できない」と言われてしまったのだ。初フィリピンなのに……。
実は、フィリピンでは日本人が入国拒否されるケースがあり、「入国させてやるからカネを払え」といった被害例もあるほど。だが、僕はこれでも元バックパッカーのはしくれ。この手のトラブルは何度か経験しており、激しく抗議すると「OK! ノープロブレム!!」と言って、スタンプを押してくれた。こうして波乱の初日が終わり、すでに疲労困憊だった。
翌朝、その疲れからつい寝過ごしてしまい、バスに乗り遅れてしまった。この日搭乗するシンガポール行きの便は、マニラから約100km離れたクラーク空港。慌ててタクシーを拾い、91年に噴火したピナトゥボ山を横目に見ながら、爆走。なんとか出発前にクラーク空港に到着することができた。
ここにはかつて巨大な米軍基地があり、撤退後はフィリピンの経済特区として発展。そして、有名なのがアンヘルス、またの名を「天使の街」と世界中の男たちから呼ばれる風俗街だ。
そんな天使たちと戯れる時間もなく、出発ロビーへ。さすがLCC各社が利用する空港だけあって、待合室は冷房が動いておらず、かなり暑い。ローカル臭が漂い、とても国際空港とは思えない。航空会社によっては「マニラ(クラーク)」と表記されているため、フィリピンの首都をイメージして空港に降り立った人は、この牧歌的な場所に戸惑うことだろう。
そんな周囲の自然を眺めながら、滑走路を歩いて搭乗。この日利用したタイガーエアウェイズはシンガポール系のLCC。エアアジア、ジェットスター航空と並ぶアジア三大LCCの一つにも数えられている。機体には虎が描かれており、もし関空へ就航したら、阪神ファンはみな喜んで利用しそうだ。
「美人しか採用されない」との噂も…CAのレベル高い!?
ここで気づいたのだが、搭乗しているCAはみなレベルが高い。先のセブ航空にしろ、この後乗ったエアアジアもCAは若く、美人揃いなのだ。そのため、「美人しか採用されない」との噂が流れ、東南アジア各国の女性たちが憧れる職業になっているのだとか。
さて、機内はというと、セブ航空よりもシート幅や前席との間隔が若干広く感じる。今回利用したLCCでは、唯一布製シートだったが、大手航空会社ならあるはずの座席のヘッドカバーはない。
機内食やドリンクは、もちろん有料。だが、昼のフライトということもあるのか、お金を払って食事をする人は意外に多かった。
ちなみに、僕が食べたカレーは8シンガポールドル(=約500円)。ソフトドリンクは、1缶3シンガポールドル(=約188円)と少し割高に感じるのはチケット代の安さのせいか。
有料の機内食、狭い機内にはカップ麺160円の匂いが充満…
約4時間半のフライトで、シンガポールのチャンギ国際空港に到着。設備面など空港ターミナルとしては世界有数の優れた空港だが、タイガーエアウェイズが利用するのは、LCC専用のバジェットターミナル。同じ空港でも大手エアラインが使うターミナルと違い、外観も内装も、全体的に簡素だ。
2日目の夜は、シンガポールで一泊。だが、僕が訪れた時期にF1が開催されていて、市内の宿泊施設はどこも満室だったのだ。
結局、日が暮れても宿は見つからず、諦めて空港で夜を明かすことに。さすがに、LCC専用ターミナルではない、大手エアライン用に移動したが、35歳にして空港で寝泊まりすることになるとは……。おかげでほとんど眠れず、出発3日目を迎えることになった。
この日は隣国マレーシアのクアラルンプールへの移動だが、フライト時間はたったの50分。これは、疲れたカラダにはありがたい。
同区間は距離の短さもそうだが、運賃が世界で最も安いことで有名。基本料金の最低額がなんと8シンガポールドル(=約500円)なのである。むしろ、空港税や燃油サーチャージなど運賃以外に付加される金額のほうが高いのだ。
就航しているのはアジア最大手のマレーシア系LCCのエアアジア。だが、シンガポールのチャンギ国際空港ではどういうわけか、LCC用のバジェットではないターミナルを利用していた。
チェックイン時、唯一の荷物であるリュックが重さ9kgと重量オーバー。大手エアラインなら20kgが上限だが、LCCは機内への持ち込み荷物の上限が厳しく制限されていて、エアアジアは7kg。しかも、重量オーバーした荷物を預けるには追加料金が発生してしまう。
それを知っていたので、かなりコンパクトに荷物をまとめたつもりだったが、15シンガポールドル(=約940円)の追加料金を取られてしまった。
「予約時にオプションで“荷物を預ける”にすれば、より安く済んだのに」(エアアジアの女性職員)
とはいえ、追加料金を払っても安い。50分のフライト時間では機内食やドリンクを注文する乗客も少なく、どこで採算を合わせているのか、要らぬ心配をしてしまう。
さて、マレーシアのクアラルンプールには深夜に到着。エアアジア専用のターミナルは、夜中とは思えないほど利用客が多かった。朝早く飛ぶ便も多く、空港に寝泊まりする人も珍しくない。
乗り継ぎの関係で、市内のチャイナタウンにある1泊1500円の安宿に2泊。そして、今回の世界一周旅行で最長時間(約14時間)となるロンドン行きに搭乗した。
飛行機は、エアアジアのグループ会社で中長距離路線専門のエアアジアX。長距離用とあって座席にヘッドレストがあり、有料の機内食とは別に、音楽&映画観賞用にポータブル式の液晶モニターも有料でレンタルしていた。
また、座席もほかのLCCに比べて広い。ただ、長距離ながら、茨城空港に就航した中国の春秋航空が行う機内体操などはなかった。
ちなみに、人気メニューはカップ麺(約160円)。到着までに何度も食べていた乗客もいたほどで、狭い機内に充満するいい匂いが食欲をそそる。僕もつい2度も注文してしまった……。
アイスにコーヒーも…LCCなのに機内食の無料サービス付き!
ロンドンでは、有名なヒースロー空港ではなく、市内から50km北にあるスタンステッド空港に着陸。ここでも、乗り継ぎの関係で2泊し、開催していた欧州チャンピオンズリーグのチェルシー戦を観戦。ようやく観光らしいことができた。
そして、カナダのカルガリーへ出発。これまた、ヒースロー空港ではなく、ロンドンから南へ50kmに位置するガトウィック空港だ。
イギリスの大手LCCのトーマス・クック航空に搭乗予定だったのだが、定刻から2時間以上も遅れた。LCCには「欠航や遅延が多い」というイメージがあるのだが、この旅唯一の遅延。発展途上国のナショナルエアラインに比べれば、全然マシと言えるだろう。
同便は、ロンドン離陸時こそ空席だらけだったが、経由地のスコットランドのグラスゴーで満席に。しかも、狭いシートなのに僕以上に大柄な欧米人に囲まれてしまい、息苦しい。耐えられなくなった乗客のなかには、デッキ付近でずっと立っている者もいた。
そんな窮屈な機内だったが、なんと2度の機内食、さらにビスケットとアイスクリームが無料サービス。ミネラルウォーターのボトルも1本用意され、食事時にコーヒーや紅茶もタダで飲むことができた。僕のような体格の人間には過酷な機内だが、この料金で食事が無料なら、かなりオススメだ。
ようやくロッキー山脈の麓に位置するカルガリーに到着。さ、寒い……。観光する気力も時間もなく、寝て起きて再び空港へ。ここまで来ると早く日本に帰りたい。
成田までは、フラッグキャリアのエアカナダを利用。カルガリー到着までの合計金額よりも高い料金なだけに、フライトは快適。普通の機内サービスがビジネスクラスに感じられる。実は、太平洋横断間にはLCCが未就航。09年に日米オープンスカイ協定が締結し、今後の参入が期待されている。
最後に、ANAマイルを貯められ、無事に成田空港へ帰国。かろうじてエコノミー症候群にはならなかったが、過酷な旅に体調を崩したのは言うまでもない。
でも、この安さは魅力。LCC時代突入で、世界一周がさらに安くなることを期待したい。
英語力が必要も意外と簡単…格安航空チケットは購入方法は?
LCCの格安チケットは旅行代理店では扱っていないので、各航空会社の公式サイト(英語版)からの自力購入が必要。ただ、日本のエアラインサイトと入力する情報などは似ており、意外と簡単。空席率や時期でチケット代が変動するシステムを採用しているので、時間に余裕を持って購入すると、激安なチケットを手に入れられることも。
世界のどんな場所も…LCCなら6大陸制覇30万円以下!?
LCCの航空チケットは片道単位のバラ売りが基本。そのため、複数のチケットを組み合わせれば、格安で世界一周も可能だ。さらに、うまく利用すれば南極を除く世界6大陸を格安で制覇することもできる。
まずオーストラリア大陸へはジェットスター航空を使えば、日本からでも格安で行けるが、ほかの大陸には、やはりマレーシアのクアラルンプール起点となる。LCCのエアアジアがアジア各地はもとより、ロンドン線を就航させているのは、本文で触れたとおりだ。
次に、アフリカ大陸に行くにはクアラルンプールからインド各都市へ移動。ここから中東のLCCであるエア・アラビアがUAE経由でアフリカ各地の路線を充実させている。
一方で、少し行きづらいのが南米大陸。欧州からのLCC路線はイタリアのミラノ、ローマからブラジルのフォルタレザを結ぶ路線のみ。となると、やはりロンドンから一度北米大陸を経由して南米入りするのがベターだ。
米国フロリダ州のフォートローダーデール空港からペルーのリマ、オーランド空港からコロンビアのボゴタに就航している。
このボゴタと先に挙げたブラジルのフォルタレザからは南米系LCCが飛んでいて、ブラジルやアルゼンチン、チリの各都市に行けるのだ。
日本への帰国便は北米からが安く、現地旅行代理店で購入すれば5万~6万円台のチケットもある。
このルートで探せば、世界6大陸を回っても30万円以下で回ることも十分可能。LCCを駆使すれば、世界のどんな場所であろうと格安で行けるのである。