全国から観光客が訪れる北海道のファーム富田
ファーム富田
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2010.07.16(Fri)JBプレス舘野健児
ファーム富田(北海道・中富良野町)は現在はラベンダーを中心とした香粧品(香水、オイルなど)の製造業を営んでいるが、以前はラベンダー事業を行っておらず、農業(稲作)を行っていた。
1903年に創業者である富田徳馬(富田均社長の曾祖父)が北海道中富良野にて稲作を始める。その後、富田忠雄(富田均社長の父)が、農業に希望を見出せず将来を模索していた時期にラベンダーと出合う。58年にラベンダー栽培を始め、ラベンダーオイルの生産を手がけるようになり、生産量も増加の一途をたどっていた。
しかし、70年代になると、合成香料の急激な技術進歩と貿易の自由化による安価な輸入香料の台頭により、国内のラベンダーオイルの価格が下がり、その後、香料会社がラベンダーオイルの買い上げを中止し、ラベンダー栽培業者のほとんどが姿を消していった。
ファーム富田は稲作で生計を立てながらも、なんとかラベンダーを栽培し続ける道はないかと模索しながらの経営が続いた。
国鉄のカレンダーに掲載されたラベンダー畑
その後、転機が訪れる。76年に国鉄(日本国有鉄道)のカレンダーにファーム富田のラベンダー畑が掲載され、話題を呼び、多くの観光客が訪れるようになった。
しかし、香料作物としてのラベンダー栽培は限界がきていたため、訪れる観光客に対し、匂い袋などの商品を製造し、販売することでラベンダー栽培を継続していくことを考案した。
その後、香水や石鹸など、商品は多数増え、ラベンダー畑も15ヘクタールになるまで大きくなり、今でもラベンダーの開花時期になると多くの観光客が訪れている。
ファーム富田はラベンダー関連事業が中心となっているため、ラベンダーの開花時期に業務が集中している。そのため、通常時は正社員30人ほどで運営しているが、繁忙期になるとパート、アルバイトを100人ほど雇うことで、業務量のバラツキを調整している。
上記記述からも分かる通り、経営者の思いはラベンダー栽培を継続したいこと、綺麗なラベンダー畑を多くの人に見てもらいたいことであり、すべてはその思いから成り立っている。
事実、ラベンダー畑の観覧に際し、観光客から料金を一切取らず(駐車場代も取っていない)、より多くの観光客に来てもらうような施策を採っている。
また、栽培するだけでは成り立たないので、ラベンダー製品を販売することで、ラベンダー畑の栽培・管理費用を捻出している。
社員への権限移譲でモチベーションアップ
権限委譲が進んでいることが、社員のモチベーションを高める要因となっている。
ラベンダー関連商品を製造販売しているが、ラベンダー畑内に10店舗ほどを設置し、販売している。
大店舗にするのではなく、店舗をそれぞれ小さくすることで、多くの社員が店舗管理に携われる仕組みとなっており、その責務の大きさから、モチベーションが高い社員が多い要因となっている。
1店舗にいる正社員は1~2名で、他の店員は全てアルバイトで形成されている。店舗管理の仕事には、在庫管理から商品発注、売上や利益などの管理、アルバイトのシフト管理などがある。一社員でありながら、一店舗の店長としての働きが求められる。
また、ラベンダー栽培に従事する社員は、数名がラベンダー栽培だけでなく、商品の企画や製造にも携わるようになっており、こちらも一社員に求められる仕事の責任は大きい。
さらに言うと、モチベーションが高い一番の要因は、入社理由がはっきりしていることだと感じられる。社員の大半はラベンダー畑に魅了されて入社する人が多い。そのため、そもそも入社直後からモチベーションの高い社員が多い。
また、自分たちで栽培したラベンダー畑を見に来てくれた観光客が喜んでいる姿を目の当たりにすることが社員のやりがいにつながっており、モチベーションにつながっている。
閑散期の事業をつくるのが課題
業務は全てラベンダーの開花時期が中心となっている。一方、閑散期は仕事量も少ないため、モチベーションが低い傾向にある。
繁忙期はほとんど休みがないが、閑散期(12~3月)になると月の半分くらい休む社員がいる(会社で休むように推進している)。会社としては今後閑散期にできる事業を考え、通期で安定した収益構造となる方法を模索しているところである。
【企業概要】
会社名:ファーム富田
所在地:北海道空知郡中富良野町基線北15号
代表者:富田 均
創業年:1903年
業種:ラベンダーを中心とした花・ハーブの栽培、加工、販売
従業員:30名(夏季パート・アルバイト110名)
売上高:9億円