「元の品、時世のおぼえうち合い、やむごとなき あたりの
内々のもてなし けはひ 後れたらむは、
さらにも言はず 何をして かく生ひ出でけむと、
言ふかひなく おぼゆべし。
うち合ひて すぐれたらむことわり、これこそは
さるべきことと おぼえて、めづらかなることと 心も驚くまじ。
なにがしが及ぶべきほど ならねば、上が上はうちおきはべりぬ。
さて、世にありと人に知られず、さびしくあばれたらむ葎の門むぐらのかどに
思ひの外に らうたけならむ人の閉ぢられたらむこそ、
限りなくめづらしくは おぼえめ。
いかで、はたかかりけむと、思ふより違へることなむ。
あやしく心とまる わざなる。
父の年老い、もの むつかしげに 太りすぎ、兄顔憎げに、
思ひやり ことなることなき 闇の内に、いといたく思ひあがり、
はかなくし 出でたることわざも、ゆゑなからず 見えたらむ、
片かどにても、いかが思ひの外に をかしからざらむ。
すぐれて疵きずなき方の 選びにこそ及ばざらめ。さる方にて捨てがたきものをは」
とて、式部を見やれば、わが妹どもの よろしき聞こえあるを 思いて
のたまふにや、とや心得らむ、ものも言はず。
元々の階層と、時勢の信望が兼ね揃い、高貴な家で内々の振る舞いや
様子が劣っているようなのは、全く今更言うまでもないが、どうして
こう育つたのかと残念に思われましょう。
兼ね揃って優れているのも当たり前で、この女性こそは当然のことだと
思われて、珍しい事だと気持ちも動かないでしょう。
私如きがての及ぶ範囲ではないので、上の品の上は、おいておきましょう。
ところで世間で人知れず、寂しく荒れたような草深い家に、思いもよらない
いじらしいような女性がひっそり閉じ籠められているようなのは、この上もなく
珍しく思われましょう。
どうしてまぁ、こんな人がいたのだろうと想像していたことと違って、
ふしぎに気持ちが引き付けられるものです。
父親が歳を取り見苦しく太りすぎ、兄弟の顔が憎憎しげで、想像すると
たいしたこともない家の奥に、とてもたいそうに誇り高く、ちょってした
芸事でも、たしなんでいるように見えるのは、生かじりの才能であっても
どうして面白くないことがありましょうか。
特別に欠点のない方面の女性選びは実現が難しくそれはそうした者として
捨てたものではないな」
と言って式部を見やると、自分の妹たちがまあまあの評判であることを
思っておっしゃるのか、と受け取ったのであろうか、何とも言わない。
渋谷 栄一著
GENNJI=MONOGATARIより
高貴な生まれ育ちでもあまり品の良くない立ち振る舞いをするお姫様もいたんですね。
そんなお姫様は論外ですと馬の頭うまのかみは言います。
上の上の事は私ごときは及ばないから控えましょう と言います。
それはそうですよね、自分より遥かに身分の高い、源氏と 左大臣の子供の
中将がそこに居るわけですからね。
身分の高いお姫様は多くの女房にかしずかれて、蝶よ花よと育つのだから
趣のある素敵なひとが居て当たり前だけど、
お父さんは歳を取りぶざまに太って、
兄弟もたいした面相でないのに、意外と草深い家の奥に
気位の高い娘が居ますよ。と言うのね
ふ~ん昔も歳を取るとぶざまに太るんだぁ~
代謝が悪くても若い頃と同じに飲み食いしてたんですねぇ~
芸事だって真似事程度でも、「こんなところに、こんな人が」と
予想外と言う事で男は興味をそそられるんですね。
私が言ってるんでなくて馬の頭が言ってまーす。
またねぇ~
ここの所お勉強が忙しくて、なかなか前に進めていません。
又、雨夜の品定めは、だらだらと長くて、少し退屈な場面ですが
後に続く、布石にもなっているので、はしょれません。
辛抱強く続けましょう。