真実の言動録~タイムトラベラー、始動する。

タイムトラベルで明かした闇の歴史・本物の歴史・真実の歴史を暴露しつつ、陰謀を仕掛ける世界権力に立ち向かう!

ロスチャイルドと象(1)

2009年09月30日 21時36分46秒 | 文学
                    ……ある銀行家がものがたる

   第一日曜

 ロスチャイルドときたら大したもんだ。紙幣印刷機を何台も据えつけて、のんのんのんのんのんのんと、大そろしない音をたててやっている。

 各国の印刷工どもが、顔をまるっきり真っ赤にして、山のように積まれた紙を機械の中にセットし片っ端から刷って行く。紙はどんどん刷られて、また新しい山になる。そこらは、ポンドだの、ドルだの、エンだの、出回ってる紙幣が勢揃いしているようだ。

 そのうすくらい仕事場を、ロスチャイルドは、大きな琥珀のパイプをくわえ、吹殻を紙幣に落とさないよう、眼をギラギラさせながら、後ろ手を組んで、ぶらぶら往ったり来たりする。

 工場はずいぶん頑丈で、学校ぐらいもあるのだが、何せ新式の印刷機が、何台もそろって回ってるから、のんのんのんのんふるうのだ。中を見学すると広さのために、すっかり腹が空くほどだ。そして実際ロスチャイルドは、昼飯時に六寸ぐらいのビフテキやら、グリーンキャビアを餌にしたガチョウの肝臓やらを、ほくほくにして食べるのだ。

 とにかく、そうして、のんのんのんのんやっていた。

 そしたらそこへどういうわけか、一頭の白象がやって来た。白い象だぜ、ペンキを塗ったのでないぜ。なぜ来たかって? そいつは象のことだから、たぶんぶらっと森を出て、なんとなく来たのだろう。

 そいつが工場の入り口に、ゆったり顔を出したとき、工員どもはぎょっとした。なぜぎょっとしたかって? よく聞くねえ、何を仕出かすか知れないじゃないか。かかり合っては大変だから、どいつもみな、いっしょうけんめい、持ち場の機械を回していた。

 ところがロスチャイルドは、機械の陰から鋭く象を見た。それから素早く下を向き、なんでもない振りをして、今までどおり往ったり来たりしたもんだ。

 こんなふうだから、象はノコノコ中に入って来た。けれども進むにつれて機械のうるさい音が気にさわったのか、こんな文句を言ったのだ。「ああ、だめだ。私は耳が大きいだけに頭が痛くなる」

 工員どもは怖気づいていたので、やれやれと胸をなでおろしつつあったが、ロスチャイルドだけは一考した。そして、こう言いやがった。「君にも合うサイズの耳栓があるよ」

 象は「面白いねえ」と返事をした。ロスチャイルドは、しめたとばかりに「しばらく、ここに居てはどうだい」と追い打ちを掛けた。象はもっと考えてから発言すべきだったが、あっさり「居てもいいよ」と言ってしまった。

 もう象はロスチャイルドの財産だ。いまに見たまえ、悪魔は象を働かせ倒すか、サーカスに売り飛ばすか、どっちにしても万ポンド以上を儲けるぜ。