50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

「そういう難しい話は明日にして、ぼくたちの・・・

2015-11-15 20:47:03 | 小説
「そういう難しい話は明日にして、ぼくたちのドラマを続けましょう」
と敏彦を誘ってきたのは正解だった。ふるさとの海が見えるホテルの部屋、理恵は思いなおしたように、ドラマの主人公に立ちもどるように唇に、ちょっぴり娼婦のみだらな感じで唇を求めていた。

(つづく)

「変な人だな。過去をなつかしむためにきたんじゃない。・・・

2015-11-14 19:52:06 | 小説
「変な人だな。過去をなつかしむためにきたんじゃない。もっともぼくの方は違うけど。ぼくの方は理恵さんを知りたい、と同時にサスペンスドラマの勉強に」
「待って。わかった。ズレ、ズレなのよ、十年間のズレ。そうね。キッスと同じように実感しなければその味がわからない」
敏彦には理恵の心理が、電車の中にいた時点で理解できていた。それを理恵は知っていたから、飛びとびの話になっているのだ。

(つづく)

下積みの苦労を知っていて、理恵の妬みは・・・

2015-11-13 21:44:14 | 小説
下積みの苦労を知っていて、理恵の妬みは三十歳をすぎた女性にしかわからないだろう。年下の男に対するそれのようだった。
「過去が思ってもいない時にふっと激しく浮かぶことってある?」

(つづく)