50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

不快なはずがないのだが、・・・

2015-05-17 19:33:52 | 小説
不快なはずがないのだが、ニヤリと笑ってそのままベンチにいるには何としても、この男はバツが悪くてならない。それはぼくの居住区でもあり、女らを無視したうちはよかったのだけれども。そう思ってヤケに昔々の歌詞を足先に落とす風から、ベンチを離れる男。・・・・・・スギタムカシヲウラムジャナイガカゼモシミルヨキズノアト。
「お城。お城。上手じょうず」
拍手が砂場に向かっている。それが背中に向けられたかのように聞きながら、男の影が太陽に一瞬濃くなる。何かにつまづきつんのめる。風がざわめかせて鳴るイチョウの青葉を残して。

(了)


★ご愛読ありがとうございました。次回はしばらくお休みいただいてから、「おしのび」を連載させていただきます。また引き続きご愛読いただきますようお願いいたします。

男は不思議に昔々の歌が・・・

2015-05-16 20:25:17 | 小説
男は不思議に昔々の歌がふと思い浮かんでくると、小公園に気兼ねで裏声で低く、その歌詞をベンチに足先に落とす。がらりと打ってかわった陽気さを押さえきれそうにない。
男の目は滑り台に腰かけた瞬間の女の、股間に注がれている。猫背だからよけいいやらしく感じられるだろう。若い股間がつとスカートに隠されるのだ。それで困ったのは女の方ではなくて、涼しげに砂場を見守る女がいた。男はどうしようもない・・・・・・うん?・・・・・・性器が感じ始めている。

(つづく)

先程は頭が変則勤務のせいで・・・

2015-05-16 02:18:03 | 小説
先程は頭が変則勤務のせいで重かったが、もう大丈夫・・・・・・。男は今、あの蜘蛛の空き巣に似て軽い気分に浸り始めていた。思えばこういうことは誰にもあることに違いないだろう。

(つづく)

・・・・・・愛だと若者だと、

2015-05-14 20:17:55 | 小説
・・・・・・愛だと若者だと、セックスだと妻の姪だと?・・・・・・皆、ぼくにとっちゃ衰えていく脳細胞の一塊かにすぎないのか。男は機嫌を目覚めになおした子供みたいに滑り台や女らや砂場の子をキョロキョロみまわす。イチョウの青葉が陽ざしを受けて目にしみた。

(つづく)

男の心は先程家路にきた時、・・・

2015-05-13 19:25:08 | 小説
男の心は先程家路にきた時、過去の愛とセックスの過失という憂鬱が曇り空のように、すっかりかぶさってきていた。小心な男にはそれが瀬戸際の自分を意識させた、深刻さがチョウの小さな蜘蛛の空き巣に似て、薫風に吹かれる気楽さに席を譲っているようで、男は夢から目覚めてすぐのような、あの陽炎に似た心地がぶりかえしてくる。とその心地が悪くない。男は陽のさすベンチで鼻歌の一つも飛びだしかねないくらいだ。それで男はちょっぴりイントロ風に、ベンチの足先を這っていく風な思いを思っている。

(つづく)