50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

道端に植えこみがあり・・・

2014-12-24 21:43:28 | 小説
道端に植えこみがあり、毛虫が這うのを英次は興味ありげに見つめて留まる。仕事場は中心街に位置する公園で、南に面して裁判所の白い建て物を見て、手入れの行き届いた草木の道々で、英次自身はうまずたゆまず日暮れ近くの時になる間を過ごすつもりだった。そうして端目のんびりと見えるリュックの背広姿は奇異と、不気味さや面白さが交じり、不思議な童貞男の雰囲気と行きあう者の目にいわせたようである。
「毛虫に触れるとカブレルぜ。おにいさん」
とふいに横あいから声がかかる。作業服の男は日焼けした顔がほころぶと鋏の先を伸ばして、毛虫を叩き落として芝生に踏んづける。その英次の雰囲気が彼を親しませたのだろう。見苦しくつぶれた毛虫が現れ、英次は靴で物真似に毛虫を素早く踏んづけていたのだ。よろしいと男は満足、先生と生徒の間柄を遠い過去に辿る心持ちであった。彼は、四十歳で、隅には休日の社会奉仕も気分がいいものだと、英次にともなく呟いている。
「害虫を殺す人ですか」
と英次妙に言葉が滑らかに出るのだった。

(つづく)


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