goo blog サービス終了のお知らせ 

【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

初めての赤字決算(赤字の原因)

2020-12-23 17:00:00 | 起業(会社設立など)と経営
赤字に陥ると「節税対策」が無用となることから急に決算書に興味を示さなくなる経営者がいます。今後の経営改善については「管理資料」で十分と思うかもしれませんが、管理資料には表れない経営の課題が決算書から見つかることが多々あります。

◆利益の段階的計算

利益は「収益-費用」として計算します。ただし、決算書においては、すべての収益と費用を合計して差し引きするのではなく、次のように段階的に収益と費用を対比させながら利益を算出します。

売上高(収益)-売上原価(費用)=売上総利益
売上総利益-販売費及び一般管理費(費用)=営業利益
営業利益+営業外収益(収益)-営業外費用(費用)=経常利益
経常利益+特別利益(収益)-特別損失(費用)=当期利益
当期利益-法人税等(費用)=税引後当期利益

◆売上総利益の段階で赤字

重症です。「事業として成り立たない」ということです。年間で全商品を合計して計算した販売代金がその仕入代金よりも少ないからです。製造業の場合には、販売商品に対応する製造原価が販売代金を上回っているということです。

しかし、悲観する前に、計算がそれで正しいのかを確認する必要があります。赤字に陥ると、「税務調査はない」「これ以上融資も受けられない」ということで経理処理がずさんになりがちです。「売上は漏れなく計上されているか」「在庫の計算は正確か」「仕入に仕入以外の費用が含まれていないか」を今一度確認してみる必要があります。

◆営業利益の段階で赤字

赤字のほとんどがこの段階での赤字です。

売上総利益から差し引く「販売費及び一般管理費」は最低でも20個ほどの勘定科目から構成されています。まずは、その勘定科目を個々に眺めてみることです。そうすれば、「使いすぎた」「減らすことができる」「必要がない」「なんだこれ!?」など、問題点が浮き彫りになってきます。この勘定科目を、「前期比較」「月次比較」してみると問題点がより鮮明になってきます。

◆経常利益の段階で赤字

中小零細企業の場合、営業利益に加算と減算をする営業外収益と営業外収益に属する項目があまりありませんので、営業利益と経常利益の金額はあまり変わらないことがほとんどです。

◆特別利益と特別損失

特別利益とありますが収益のことです。特別損失とありますが費用のことです。いずれも、通常は生じることがなく、「特別に」「突発的に」「想定外に」「多額に」生じた収益と費用をいいます。

上場企業の決算では、この特別利益と特別損失が話題になります。創業時から本社ビルがある土地を売却したことによる利益、多数の退職者が出たことによる多額の退職金などです。中小零細企業では、特別利益と特別損失が生じることはほとんどありません。

◆出金を伴わない費用?

「出金を伴わない」とはその事業年度には出金がないということです。減価償却費の中で「前事業年度以前」に購入した固定資産に関する部分は当事業年度では出金がありません。中小零細企業ではあまりありませんが、引当金の設定による費用に関する出金は「将来の事業年度」にあります。

このような「出金を伴わない費用」については、「とりあえずは」安心してもよいと思います。ただし、過去の設備投資が成果を生んでいない(過剰であった)、将来の費用や損失が現時点では負担できないという課題があることは知っておく必要があります。

◆借入金と利益の関係

金融機関などから借入をして資金を得ても、利益の計算における収益にはなりません。また、借入金を返済して資金が減っても費用にはなりません。ただし、利息は費用になります。借入金で得た資金で仕入代金や家賃を支払えば、それは費用になります。その結果として得た売上代金は収益になります。

赤字になったということは、借入金により得た資金でした投資(費用)が成果を生んでいないということです。当然、借入金の返済が困難となります。借り換えによる最終的な返済の引き延ばし、資産の売却による繰り上げ返済などを検討しなければなりません。

=========

★持続化給付金の表示
持続化給付金は営業外収益あるいは特別利益で計上しますので、それよりも大きい営業外費用や特別損失がなければ、営業利益段階での赤字よりも当期利益段階での赤字のほうは少なくなります。

【PR】記事の内容と直接的な関連はありません。