【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
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インボイスと税務調査

2023-11-18 17:30:00 | 消費税
インボイス制度がはじまり、予期してなかった内容の請求書や領収書に遭遇し、早くも税務調査を心配している事業者がいます。

◆税務調査は重点指向

法人税(会社)、所得税(個人事業者)、消費税(会社および個人事業者)の税務調査は全ての会社や個人事業者について行われるわけではありません。また、税務調査の対象に選定された会社や個人事業者のあらゆる入出金を調査するのではなく、問題がありそうな(税額を違法に減らしていそうな)入出金を抽出して調査します。

◆調査対象にされそうな事業者

インボイスは仕入税額控除によって事業者が税務署に納める消費税額に影響してきます。事業者は販売の際に受け取った消費税から、仕入や諸経費に関して支払った消費税を差し引いて税務署に納付をします。この支払った消費税を差し引くことを仕入税額控除といいます。この仕入税額控除はインボイスを入手した支出に関する消費税についてしか行うことができません。

インボイスを入手していない支出が多いと思われるのに、大部分の支出に関して仕入税額控除をしている事業者はインボイス制度導入後に調査対象に選定されるでしょう。例えば、仕入先や外注先の大部分がインボイスの登録をしていないであろう個人事業者であるにもかかわらず、それらを仕入税額控除の対象として申告している場合です。

◆多額の出金

多額の出金に関するインボイスは注意が必要です。仕入代金や設備購入代金がそうです。「支払先がインボイス登録をしているか」「登録している場合は請求書や領収書に登録番号か記載されているか」、入念に確認することです。

◆継続する支払い

少額な支払いであっても継続して支払いをする相手先であれば、間違った処理を継続してしまうと累積したミスは相当な額になります。家賃(特に駐車場)や接待に利用する飲食店などはその典型です。「多分登録しているだろう」は甘いです。支払いの都度、領収書の登録番号を確認しなければなりません。

◆「インボイスのみ」の税務調査は行われない

インボイスのみの税務調査が行われることは考えられません。「法人税(会社の場合)」「所得税(個人事業者の場合)」と同時に「消費税」の税務調査が行われ、消費税の調査の一環としてインボイスの調査が行われます。

◆消費税の修正申告と追加納付

インボイスのない支払いを仕入税額控除していると、その分だけ消費税を過少に申告していることになります。これを税務調査で発見されたら、仕入税額控除を取り消した税額を計算し、当初申告税額との差額を納付しなければなりません。これを修正申告といいます。

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★経理業務も重点指向で
インボイスは全ての出金について確認をしなければなりません。しかし、制度導入当初はインボイスの不発行や記載不備が続出すると思います。そんなことから税務当局もインボイスに関しては実情を考慮した税務調査を行ってくると考えられます。そこで、経理業務も「これだけは守ってください」と税務調査で指摘されそうな部分を抽出するという重点指向で行えばよいと思います。

★支払先のインボイスの不備は厳しく指摘する(指摘もされる)!
一部の支払いについてインボイスを入手していなくても税務調査がなければ何の問題も起こりません。しかし、だからといって喜んでいるようではインボイス制度の有効な運営は実現しません。事業者は支払先が発行するインボイスの不備を厳しく指摘しなければなりません(反対の立場では指摘もされる)。そして、いずれは不備なインボイスが発行されないような社会にしなければなりません。インボイス制度は「民の志」にその運用が委ねられているのです。

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