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【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

会社の倒産と決算申告

2019-06-30 09:40:00 | 決算書・試算表
【お断り】下記の説明は株式を上場していない比較的小規模な会社を前提としております。

倒産処理(民事再生、会社更生、破産、事業再生ADRなど)は弁護士の仕事ですが、会計事務所(公認会計士、税理士)に藁をも掴む思いで相談をしてくる人が後を絶ちません。

★会社が消滅するまで記帳と税務申告はしなければならない

このことを受け入れていただけない場合には、会計事務所としてはお話することは何もありません。「どうせ会社を消滅させるのだから適当でいい」「そんなことに費用と手間をかける余裕はない」ではどうにもならないのです。

「倒産」の二文字がちらつき始めたならば、今までにない経理処理が必要になります。「節税」「銀行対策」とは次元の異なる処理をしなければなりません。そうしておけば、最終的に弁護士や裁判所に世話になる場合もスムーズに事が運びます。

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◆資産の内容と金額を明らかにする

資産で内容がはっきりとしているのは「預金」だけではないでしょうか。「売掛金」は大口得意先については確かであっても、小口や取引回数が少ない得意先については案外不確かなことが多いです。「在庫(製品・商品)」のたな卸し(検数)が正確にできていないことがあります。「固定資産(減価償却)」は会計事務所に任せきりだと思います。「出資金」「保証金」は出金がずいぶん以前であることも多く、その存在にさえ気が付いていないことがあります。

念のため預金についても通帳や金融機関の報告書などと照らし合わせてください。決算書に反映されていない預金口座があるかもしれません。すでに解約している預金口座が計上されたままのことがあります。

◆不良資産の損失処理

不良資産とは貸借対照表に計上されている金額で回収や売却ができないものをいいます。資産の内容が明らかになったならば、不良資産をどんどん損失処理します。貸借対照表計上額を回収可能額や売却可能額まで減額します。結果として多額の損失(費用)が生じますが、倒産を意識するような状況ではもうこれ以上借りられないので金融機関の評価を意識する必要はありません。

◆負債を漏れなく把握する

金融機関からの借入金はともかくとして、それ以外の負債が計上されていないことがあります。放置している請求書を整理し処理をしてください。従業員の給料や公租公課(各種税金や社会労働保険料)も正確に把握し未払となっている分は負債として計上しなければなりません。

念のため金融機関からの借入金についても返済予定表などで確認してください。借入時や返済時の処理誤りで貸借対照表計上額が間違っていることがあります。

◆信用保証協会

信用保証協会は通常時はあまり意識することはありません。しかし、倒産となると信用保証協会と接触する機会が増えます。保証契約書や保証料の計算書を整理して、現状での保証の状況(どの金融機関の借入に保証を受けているのか)を明らかにしておく必要があります。

◆担保の状況

「抵当に入っている不動産」「誰が保証人になっているか」も非常に大切です。契約書などをもとに正確に把握しておく必要があります。

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★税務上認められない費用・損失に注意

「豪快」「爽快」に不良資産を処理した結果生じた損失の中には税務上認められないものもあります。遅れて計上した負債に対応する費用も同じです。税務上認められないとは、決算書では損失(費用)として利益を減額させる要素になるけれども、法人税の申告においては利益に加算して所得を計算するということです。しかし、倒産を意識するような状況では、もはや「どう転んでも」法人税は課税されないでしょうから心配は無用です。

★現状の資金繰り(収支)を把握する

資産と負債が明らかになったならば、次は資金繰りです。一年先くらいまでの入出金を把握し、払うべきものが払えるかの予測をします。倒産を意識するようになったら、会社の継続を前提とする「損益計算書」なんて無意味です。

★一発逆転!

「もうおしまいだ!」という段階になって、「特定の金融機関が融資をしてくれる(すでにリスケをしている場合は無理なことが多い)」「出資者(株主)が現れる」「会社あるいは一部の事業を譲渡できる」ということもあります。そのためにも、決して自暴自棄にならず「やるべきこと」、記帳と決算申告はしておく必要があるのです。「実態の掴めない会社」「実態を隠そうとする会社」「実態を歪曲する会社」を誰も助けてはくれません。

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法人税修正申告の手続(修正申告書と決算書の関係)

2019-06-25 18:45:00 | 決算書・試算表
法人税の税務調査が行われ修正事項が発見された場合、修正申告書の提出だけでなく次のような手続や作業が必要となります。

◆追徴課税分の納付

当初申告分で不足する税額を修正申告書提出と同時に納付しなければなりません。この納付が遅れると延滞税がさらに増えます。

追徴課税分を納付した場合の勘定科目は「法人税・住民税及び事業税」です。追徴課税分については「未払法人税等」を計上していないからです。なお、本税のほか加算税と延滞税も「法人税・住民税及び事業税」で処理します。

追加課税分の納付が修正申告書を提出した事業年度中にできない場合には、その事業年度末に未納付部分について「未払法人税等」を計上しなければなりません。

◆修正事業年度の決算書を修正しない理由(株主総会の承認は覆らない)

例えば、第10期の決算書において売上計上が漏れている場合、第10期の修正申告書は提出しなければなりませんが第10期の決算書は修正しません。なぜこのようにするかといえば、決算書はすでに株主総会の承認によって確定しているので、税務署に修正事項を指摘されたからといって覆すことができないからです。

◆修正申告書を提出した事業年度の帳簿で仕訳が必要な場合

上記のとおり、ある事業年度の修正申告書を提出してもその事業年度の決算書(帳簿)は修正しません。しかし、修正申告書を「提出した事業年度」の帳簿では一定の仕訳をしてその事業年度の決算書に反映しなければならないことがあります。

例えば、次のようなケースです。

「減価償却を過大にしていた」

この場合、固定資産の帳簿価額を必要以上に減額しているわけですから、これを正しい額に修正しなければなりません。この修正仕訳を、修正申告書を提出した事業年度にします。

次のようなケースでも同様の修正仕訳が必要です。

「売上計上漏れ(計上遅れではない)の結果として売掛金が過少に計上されている」
「仕入の過大計上(早期計上ではない)の結果として買掛金が過大に計上されている」

【翌期認容の場合は仕訳不要】
修正申告をした事業年度では売上が漏れているけれども翌事業年度で売上計上されている(売上計上が遅れた)、修正申告をした事業年度では仕入計上は認められないが翌事業年度には認められる(仕入を早期計上していた)といった、いわゆる「翌期認容」の場合には仕訳は不要です。修正申告をした事業年度の誤りが翌事業年度には自動的に修正されているからです。ただし、このような場合にも修正申告書は提出しなければなりません(修正申告書で加算して翌年度の申告書で減算します)。

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修正申告書と決算書の関係は大変複雑で、法人税の修正申告を何度か経験した人でなければ理解できません。

修正申告書については調査官と打ち合わせのうえ作成しますので問題は生じませんが、決算書(帳簿)については自身の判断で処理しなければなりませんので注意が必要です。決算書(帳簿)で誤った処理をしてしまうと、「帳簿」「決算書」「申告書」の三者間の関係に矛盾が生じ収拾がつかなくなります。さらに、次回の税務調査の修正事項となってしまうこともあります。

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法人税修正申告の手続(修正事項と修正申告書)

2019-06-19 18:30:00 | 決算書・試算表
法人税の税務調査が行われ、修正事項が発見された場合には修正申告書を提出しなければなりません。

◆修正事項とは

修正事項とは、当初の申告税額を増加させるような事項で、例えば次のようなものがあります。

〇売上の計上漏れ
意図的な売上除外(帳簿記録から隠す)は当然として、売上計上の時期が遅れている(申告年度に反映すべきものを申告年度の翌事業年度で処理している)場合もこれに該当します。

〇経費の過大計上
経費として処理できないもの、例えば役員や従業員の個人的費用の立替払い分を費用としている場合です。このほか、費用とする時期が早い(本来は申告年度の翌年度に費用とすべき)場合もこれに該当します。

〇在庫の計上漏れ
在庫のカウント漏れは当然として、カウント(検数)は正確でも評価額が過少であれば利益を不当に減少させますので、結果として法人税を過少に計算していることになります。

〇減価償却の過大計算
耐用年数を短いもので計算していた、償却開始時期を早めていた、減価償却の対象とせず購入年度に一括して費用処理していた場合です。

〇申告書の記載誤り
決算書の利益計算は正しいけれども、貸倒引当金、寄附金、交際費の限度額計算、受取配当金の益金不算入額の計算、税額控除の計算、税率など、申告書固有の計算を誤っている場合です。

◆修正申告書の提出(修正申告年度の決算書は修正しない)

修正事項がある場合には、当初の申告書に修正事項を反映させた修正申告書を提出しなければなりません。当初の申告書(確定申告)と修正申告書の申告書用紙は同一の様式ですが、修正申告書においては当初申告税額と修正申告税額を対比させてその差額(追加で納税する金額)を記載しなければなりません(さらに表題は修正申告と記載する)。

ここで注意しなければならないのは、修正事項があっても、その修正事項がある年度の決算書(帳簿)は修正しないということです。ですから、修正申告書においても決算書と一致しなければならない部分は修正しません。別表4の先頭(当期利益)、別表5(2)の納税充当金などは当初の申告書と同じ金額のままです。

〇申告書での加算(決算書の誤り)
「売上の計上漏れ」「経費の過大計上」「在庫の計上漏れ」「減価償却の過大計算」などは修正申告書の別表4で加算することによって利益を調整します。

〇申告書を書き直す(申告書固有の誤り)
決算書の利益計算は正しいけれども申告書の記載が間違っていて、結果として税額を過少に計算している場合には該当する部分を書き直します。交際費や寄附金の限度額計算、受取配当金の益金不算入額の計算などを誤っている場合です。

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未払法人税等は最終の仕訳として計上する

2019-03-26 14:00:00 | 決算書・試算表
事業年度の利益が確定したならば、その利益を基に申告書で税額を計算し、その税額を未払法人税等という負債として計上します。相手勘定科目は「法人税・住民税及び事業税」という費用です。

これは「納めるべき税金を期日までに納めていない」という意味ではありません。事業年度の利益は事業年度が終了しなければ確定しないので、事業年度末では税金の計算も税金を納めることもできないのです。

未払法人税等を計上すれば、利益も変わりますので今度は申告書を書き直さなければなりません。「申告書を書き直せば税額が変わるのでは?」と思われるかもしれませんが、税額は変わりません。

損益計算書は次のとおりであるとします。

確定利益100(未払法人税等計上前)
税額30(未払法人税等の額)→確定利益100を基に計算
差引最終利益70(未払法人税等計上後)

法人税申告書別表4は次のように変化します。

未払法人税等計上前・・・申告書先頭の利益は100
未払法人税等計上後・・・申告書先頭の利益を70にして未払法人税等30を「加算」

未払法人税等を計上した結果、利益は減りますが、減った額を加算するので所得(税額)に影響はないということです。

★別表5(1)と(2)も書き直します
別表5(1)の「繰越損益金」「納税充当金」が変わります。別表5(2)は「期末納税充当金」が変わります。

★中間申告で納税している場合
損益計算書の「法人税・住民税及び事業税」にその額が含まれますが、この額は未払法人税等には含まれません。ただし、法人税申告書別表4においては加算が必要です(事業税は不要)。

★月次決算において未払法人税等を概算計上している場合
法人税申告書別表4で概算計上額を加算して税額を計算し、確定税額と概算税額の差額を損益計算書と法人税申告書別表4の双方で調整することになります。この方法は複雑で混乱しますので、概算計上額をいったん取り消せば簡単です。

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法人税の申告書を作成する

2019-03-26 10:30:00 | 決算書・試算表
法人税の申告書は枚数も記載事項も多いことからその作成は大変であるといわれますが、下記の申告書用紙で「所得の計算」を正確に行ってさえいれば税額を間違うことはありません。

◆法人税申告書・別表4
まずはこの用紙から記入します。別表4では、決算書の利益(税引後)に調整(加算と減算)を加えて法人税の課税所得を算出します。

◆法人税申告書・別表1(1)
この用紙では、上記別表4の課税所得の計算結果を受けて、それに税率を乗じて税額を算出します。

◆法人税申告書・別表7→課税所得がマイナスになる場合
別表4で計算した課税所得がマイナスになる、いわゆる「欠損金」が生じる場合にはこの用紙を用いて欠損金額を記載し、翌事業年度以降の所得から減算します。

◆都道府県民税および事業税申告書・第6号様式
この用紙で都道府県民税と事業税を計算します。都道府県民税は法人税額に応じて課税されます。ただし、均等割といって資本金と人員数で決まる部分もあります。事業税は法人税の課税所得に応じて課税されます。

◆都道府県民税および事業税申告書・第6号様式別表9→課税所得がマイナスになる場合
事業税においても欠損金が認められますので、その額をこの用紙に記載しておきます。

◆市町村民税申告書・第20号様式
この用紙で市町村民税を計算します。市町村民税は法人税額に応じて課税されます。ただし、均等割といって資本金と人員数で決まる部分もあります。

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★法人税申告書・別表5(1)
この用紙は、ある事業年度では利益に加算あるいは減算しなければならないけれども、翌事業年度以降にその加算あるいは減算が取り消される項目をプールするためにあります。また、留保金課税の対象となる利益積立金額の計算をこの用紙でします。

★法人税申告書・別表5(2)
この用紙は、文字どおり法人税、住民税、事業税など、会社に関する税金(租税公課)の発生と納付の状況を記載するものです。しかし、これにとどまらず、上記別表5(1)の利益積立金額にも関連しています。

別表5(1)と(2)は、別表4のように所得計算に直接的に関係していないように思えるかもしれませんが、しっかりと計算して記載しておかなければ思いもよらない計算ミスにつながってしまいます。加算と減算のプールが翌事業年度の計算に影響するだけでなく、その事業年度のその他の別表(申告書用紙)に深く関連していることもあるのです。

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