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【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

税引前利益と税引後利益の関係

2019-03-25 15:00:00 | 決算書・試算表
税引前利益とは、会社がその事業年度の利益に応じて負担しなければならない税金を差し引く前の利益です。会社が利益に応じて負担しなければならない税金には、法人税(国税)、住民税(都道府県民税、市町村民税)、事業税(都道府県が課税)があります。

これらの税金は、税引前利益の下部に「法人税・住民税及び事業税」という勘定科目で表示され、これを差し引いて税引後利益(当期純利益)を計算すれば損益計算書の利益計算は終了します。この部分の数値は税金計算を熟知していなければ理解できません。また、正しく計算されてはいるけれども素人目には不可解な数値となる場合もあります。

「法人税・住民税及び事業税」という勘定科目は次のようにして計上されます。

【1】その事業年度の中間申告で納めた税金
【2】その事業年度の利益に応じて負担しなければならないが事業年度末に納めていない税金

【1】と【2】の合計が計上されます。【2】に関しては貸借対照表に未払法人税等という負債が計上されます(事業年度終了の翌日から2か月以内に納付します)。また、前事業年度末のこの部分は、納税は当事業年度であるけれども「法人税・住民税及び事業税」には計上されません。

このようにして計上された「法人税・住民税及び事業税」は、税金計算のルールに照らせば合理的な額となります。

★未払法人税等を計上していない場合
上記【2】を計上せずに、納税した年度に計上している場合には税引前利益と「法人税・住民税及び事業税」の関係は説明がつきません。赤字(利益がマイナス)の事業年度に多額の税金が計上される、黒字(利益がプラス)の事業年度に税金が計上されないという現象が起こります。

★税務調査で多額の追徴課税をされた場合
税務調査で多額の追徴課税をされた場合も上記の関係が不可解になります。追徴課税分は追徴課税された年度に計上されます。その事業年度の利益とは関係のない税金が計上されるのです。

★利益と所得の違い
上記の税金は利益にそのまま課税されるのではなく、利益に一定の調整を加えた所得に課税されます。この調整が多額である場合の利益と税金の関係は、税金の計算方法を知らない人にとっては不可解なものになります。

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実効税率(利益に対する税負担の割合)

2019-03-18 11:40:00 | 決算書・試算表
会社の所得(利益に一定の調整をしたもの)に課税される税金には、法人税(国税)、住民税(都道府県民税、市町村民税)、事業税(都道府県が課税)があり、税目ごとに課税対象と税率が定められており、税目ごとに申告納税をしなければなりません。

実効税率とは、これらの全税目を合計しての税率であり、実際の申告手続で適用される税率ではなく「理論上の税率」です。わが国の実効税率は約30%で、税引前利益(その事業年度に負担すべき法人税、住民税、事業税を差し引く前の利益)にこれを乗じればその年度の税負担が算出されます。

しかし、多くの企業、特に中小企業では実効税率とされる30%とはかけ離れた税率となります。その理由は次のとおりです。

◆所得による税率の違い(所得の低い部分は低税率)

税率は一律ではなく中小企業(資本金1億円以下の会社)の税負担能力を考慮して所得の低い部分は低税率となっています。所得がこのゾーンにある場合には実効税率は30%よりも低くなります。

◆均等割の影響(所得に比例しない税負担部分)

住民税には均等割といって資本金と人員数で決まる部分があります。また、この均等割は事業所単位(本店、支店など)で課税されることから事業所の数が多いと均等割が増えます。所得が低い、事業所数が多い場合には均等割の所得に占める割合が大きくなります。

★実効税率による税額予測は正確ではない
税額予想をする際に実効税率を用いることがありますが、実効税率では正確な数値が算出されません。面倒でも法人税(国税)、住民税(都道府県民税、市町村民税)、事業税(都道府県が課税)ごとに申告書と同じ要領で税額を計算しなければなりません。

★利益を計上しているのに税金がゼロ!?
このような不可解な現象が起こります。上記の法人税などは、各事業年度の所得に対して課税されますが、過去の事業年度において所得がマイナスであった場合には、そのマイナスを以後の所得がプラスの年度から差し引くことができます。このマイナスを「繰越欠損金」といいます。繰越欠損金がそれを差し引く事業年度の所得以上である場合には、利益がプラスであるのに税金がゼロという現象が起こります。

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法人税の計算(利益から所得を計算してそれに税率を乗じる)

2019-03-16 11:00:00 | 決算書・試算表
法人税は決算書の利益に一定の「調整」を加えた「所得」に対して課税されます。

利益は損益計算書の末尾で下記のとおり計算されます。

税引前当期利益1000
法人税等△300
当期利益700→所得はこれに調整を加えて計算する

ここでの法人税等とは、法人税(国税)、住民税(都道府県民税、市町村民税)、事業税(都道府県が課税)のことで、その事業年度で負担しなければならない税額です。「負担」ですので納税したということではありません(未納付の部分も含まれる)。

「当期利益」に調整を加えるにあたっては、まずはこの法人税等を加算しなければなりません。ただし、事業税は加算する必要はありません。この法人税等を当期利益に加算するという調整はどの会社でも必要となります。

法人税150、住民税100、事業税50とすれば、所得は当期利益700+法人税150+住民税100=950ということになります(これ以外に調整がないとして)。この950に法人税率を乗じたものが法人税額です。当期利益700に法人税が課税すると思っていた人はとんでもない見当違いになります。

ちなみに、税引前当期利益からスタートすれば1000-事業税50=950ということです。

★住民税の計算
住民税は都道府県民税と市町村民税からなりますが、法人税額にそれぞれの税率を乗じて計算します。要するに法人税額が決まらなければ計算できないということです。

★事業税の計算
事業税は法人税の対象となる所得に税率を乗じます。

★地方法人税
法人税額に一定率を乗じた額を納めなければなりません。税目名に「地方」とありますが国税です。上記の説明ではこの地方法人税を「法人税」に含めています。

★住民税の均等割
住民税には所得ではなく資本金と人員数に応じて課税される部分があり、これを均等割といいます。

★税率
法人税率については国税庁のサイトを、住民税と事業税については各自治体のサイトをご覧ください。

★繰越赤字
法人税は各事業年度の所得に課税されますが、過去の事業年度に赤字がある場合にはこれを差し引いで所得を計算します。この調整が必要なケースも相当あります。

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会計の書物のここを読んでください(最先端の会計)

2019-01-12 17:00:00 | 決算書・試算表
「連結決算」「企業価値」「自社株買い」「M&A」、経済小説・ドラマにおける高層ビルの一室でのシーンを連想します。華やかでダイナミックな会計です。そこには帳簿や領収書、仕事上のささいな愚痴や不満などの「生活感」が一切ありません。最近では会計に深く関連した出来事が多く、新聞記事やニュースで取り上げられるだけでなく、小説やドラマの題材になることが増えてきました。

中小企業経営者が自らの決算書を作成するに当たっては、これら「最先端の会計」の知識は一切必要ありません。たとえば、連結決算は上場企業に限ってのことです。また、最先端の会計に関連するような出来事自体が中小企業とは無縁です。

しかし、決算書作成はともかくとして、中小企業を経営するという立場では最先端の会計も決して無縁ではありません。

◆会計制度の変化が企業行動を変える(誰かの人生を変える)

会計制度が変われば企業の行動が変わります。会計は企業および経営者の「評価の尺度」ですので、尺度が変われば企業はその尺度での評価が上るように行動を変化させます。

2000年前後から始まった会計制度改革(我が国の会計制度をグローバル経済に適応させるための制度改革)はこのことを如実に物語っています。連結決算は不採算のグループ企業の統廃合を促し、時価会計の導入は損失を抱えた資産の処分を余儀なくしました。会計を知れば、「俺の人生は会計で変わったんだ・・・」と気づく人が数多くいると思います。

今も、企業に多大な影響を与えるような会計の変化は進行しています。これからも、この傾向に変わりはありません。

◆自社と深くかわかる上場企業の決算を注視する

上場企業と直接取引をしている、取引はしていないが特定の上場企業の動向が事業に強く影響する場合には、その上場企業の決算に注視しておく必要があります。決算内容は企業のサイトから簡単に知ることができます。「決算」「投資家情報」「IR」などと題するページで決算書(有価証券報告書や決算短信)が公表されています。

上場企業の決算書は内容が膨大で複雑ですが、理解できる部分を読むだけでも何らかの「気づき」が必ずあると思います。

◆株式公開を目指す

将来は株式公開を目指す場合には、株式公開が視野に入った段階から最先端の会計を意識しておく必要があります。「税務署ににらまれない」「取引銀行の評価を上げる」というスタンスから早期に脱皮しなければなりません。正確で明瞭な決算をして外部第三者の信頼を得る、その決算をするための体制を整えるということが大切です。

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会計の書物のここを読んでください(税金の書物は別に読む)

2019-01-08 17:00:00 | 決算書・試算表
会社に課税される主な税金は法人税と消費税ですが、そのいずれもが決算書やその基となる帳簿とは切っても切れない関係にあります。

◆法人税(利益を基に課税される)

法人税は決算書の利益を基に課税されますので、法人税を計算するには会計を理解していなければなりません。しかし、法人税は「利益×税率」として課税されるのではなく、利益に様々な調整を加えて「所得」を算出しそれに税率を乗じます。利益に調整を加えて所得を算出するルールが法人税法という法律に他なりません。法人税法の規定は膨大で、それを習得するには相当な労力が必要です。

◆消費税(帳簿から算出する)

消費税は法人税のように決算書と直接的に連動していませんが、「受け取った消費税-支払った消費税」という納税額の計算をするにあたっては、決算書の基となる帳簿のデータを利用します。ですから、消費税の計算をするには帳簿の意味や内容を知っていなければなりません。ちなみに、利益計算(決算書作成)を目的とした「財務会計ソフト」には消費税の計算機能が備わっています。

◆まずは会計から学ぶ

会社の税金を知ろうとすれば、まずは会計を学ぶ必要があります。会計の書物でも税金のことが触れられていますが、会計の書物は税金のことを知らなくても読めます。税金の書物は会計の知識があることを前提としていますが、税金の書物では会計や帳簿のことは説明されていません。税に関わる人(税務署員や税理士)も、まずは会計を学んでから法人税と消費税を学んでいます。

◆記帳や決算の段階から税金を意識する

法人税も消費税も決算や帳簿の結果として計算されますが、正確かつ効率的に税金の計算を行うには記帳(帳簿作成)と決算の作業をする段階で税金のことを意識しておく必要があります。税金計算に必要な帳簿の記載とその基資料、税の計算に深く関わる決算書の勘定科目などが多数あります。

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