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【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

決算書の説明(管理用データの活用)

2020-03-17 10:50:00 | 起業(会社設立など)と経営
決算書は会社で日々生じる出来事を「会計」というフィルターを通して表現したものです。決算書を金融機関や税務署などの役所に説明するにあたっては、日々の出来事に基づいて説明をしなければなりません。決算書は日々の出来事と矛盾してはならないのです。決算書は思いつきやその時々の都合で作成するものではありません。

◆仕訳(決算書作成のスタート)は社内のあらゆる資料やデータに基づく

決算書は次のようなプロセスを経て完成します。

仕訳(個々の入出金などの取引を記録する)

総勘定元帳(個々の取引を勘定科目別に集計する)

試算表(全ての勘定科目の分類・集計ミスの有無を確認)

決算書(試算表の各勘定科目を貸借対照表と損益計算書に分ける)

決算書のスタートは「仕訳」です。仕訳とは金額で表すことができる出来事(取引)を個々に記録することです。仕訳の基は「領収書」「請求書」「預金通帳」「契約書」など、金額が表示されているあらゆる資料やデータです。

会社は決算書を作成する目的以外に様々な資料を収集しそれを記録・加工して管理に役立てています。これらの決算書作成目的以外のデータを決算書作成のための資料として提供することが多々あります。その典型が販売と仕入に関するデータです。

◆販売管理用データ(販売と代金回収に関するデータ)

「誰に」「何時」「何を」「いくらで」売ったか、そしてその代金を「何時」「いくら」回収したかについての記録は会社が活動していくにあたって必須のデータです。この販売に関するデータは、「売掛帳」「売上帳」「得意先元帳」などと呼ばれ、決算書の「売上という収益」と「売掛金という資産」とつながっています。

決算書ではすべての得意先のすべての商品の事業年度合計の売上が、すべての得意先の事業年度末の売掛金の合計が表示されるにすぎません。そこで、決算書の売上や売掛金について個別具体的な説明をするには販売管理用データが必要となるのです。

いわゆる「販売管理ソフト」を利用している場合には、販売管理ソフトで作成される帳票を利用することができます。エクセルなどで作成しているデータがあればそれも活用できます。

◆売上総利益(会社が存続発展するための源泉)

売上総利益(粗利)についても決算書では、事業年度合計の「売上-売上原価」の結果としてしか表示がされていません。そこで、管理用データに基づいて「商品別」「得意先別」「地域別」などに説明をしなければなりません。売上総利益をどのようにして獲得しているかを説明することは、その会社の存続発展のメカニズムを説明するために非常に大切なことです。

◆会計独自の考えとの調整(決算書と管理用データは目的が異なる)

決算書と管理用データで数値の把握方法が異なる場合があります。決算書はいわゆる発生主義で収益と費用を把握していますが、管理用データでは入出金ベースで把握されていることがあります。決算書では勘定科目という一般的な分類基準で数値を把握していますが、管理用データでは勘定科目とは異なる分類をしていることがあります。決算書では認識されている数値が管理用データでは認識されていない(する必要がない)場合があります。

決算書と管理用データとでは目的が異なるわけですから、管理用データの数値に一定の調整がされて決算書に反映されていることがあります。そのような部分についてはその調整内容(違い)を説明しなければなりません。

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決算書といえば特殊かつ専門的で、経理担当者や会計事務所(公認会計士、税理士)の判断だけで作成しているように思えるかもしれませんが、決算書は社内の様々な資料やデータに基づいて作成されているのです。

決算書を説明するにあたっては、社内のあらゆる資料やデータを総動員しなければ、第三者が納得できる説明はできないのです。経営者は「専門的なことはわからないので」といって逃げるわけにはいかないのです。

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決算書の説明(過去から現在、そして未来)

2019-11-18 11:30:00 | 起業(会社設立など)と経営
決算書は過去の数字であることから、「過ぎ去った昔のことを掘り起こしてどうするのだ」といって、決算書の説明に消極的な経営者が多いです。しかし、決算書には未来を予測するための情報が満載で、「近い将来」や「現実的な未来」は決算書から知ることができます。

◆質問に対して回答する

中小零細企業では、決算書の説明をする相手先が融資を申し込む「金融機関」、税務調査をする「税務署」、許認可や補助金を申請する「役所」に限られてきます。この場合、一方的に説明するのではなく、質問に対して口頭あるいは書面で回答するという形式になります。質問内容は一般的かつ網羅的な場合もあれば、特定の項目に絞られた場合もあります。

◆経理担当者は同席させるべきか?

同席させる必要はありません。というのは、質問は経営者に対してされるからです。「会計や経理に詳しくないので」はもっともですが、質問者はそれを前提に質問をしてきますので心配は無用です。

むしろ、経理担当者が同席していると「立ち入ったことを質問しにくい」ということになりかねません。また、「経理担当者に質問を振ってはぐらかそうしているのでは」と勘ぐられるおそれがあります。ですから、質問者が「経理担当の方に聞きたいのですが」というときだけ経理担当者を同席させるべきです。

このことは、会計事務所(公認会計士、税理士)についても同様です。

◆過去から現在を説明する

決算書の説明は過去から現在までの数事業年度についてしなければなりません。決算数値というのは、数事業年度の比較をしてはじめてその会社の特性が浮き彫りになってくるからです。相手は説明を聞くのに先立ち、過去から現在までの趨勢を比較して質問を用意していますので、それに備えて際立った数字の変化については「想定問答集」を作成しておく必要があります。

売上の推移については取扱商品や事業規模(店舗数や人員など)、さらには業界の変化に関連させて説明します。売上総利益については、販売価格と仕入価格(製造原価)の変動に関連させて説明します。販売費及び一般管理費については、勘定科目別の変動状況を把握しその理由を明確にしておきます。

「著しい変動」については入念な説明が必要です。質問者の疑問や不安が最も高まる部分だからです。「飛躍」「拡大」「変革」であれば問題はないのですが、「衰退」「損害」「失敗」である場合にはその程度および影響を正確に説明しなければなりません。

◆未来を語るのはほどほどに(現状の打開策は?)

相手は決算書に基づいて過去から現在を知り、そこから未来を予測しようとしているのです。経営者としては「未来だけ」を語りたいかもしれませんが、それはほどほどにしておかなければなりません。

過去があって現在があり、現在が変化して未来があるのです。「そう簡単には断ち切れない過去」「現在からさらに悪化」という事態もあります。未来を語るにあたって避けられないのは、現状の分析と現状の打開策なのです。

◆予測数値は現在を起点に

将来の予測数値を聞かれた場合には、現在を起点として、できる限り慎重な数値を答えることです。例えば、売上については「店舗周辺の人口が増加傾向にあり競合店もないので」「昨年販売を開始して好調な新製品の量産体制が整ったので」といった具合です。構想を練っている段階の「新製品」「新規事業」については触れる必要がありません。

◆リスク要素(自社の弱み)

質問者は意地悪な質問もしてきます。会社が抱えているリスクや弱みを探り出し、最悪の場合のシナリオも描くのです。

決算書にはその会社のリスクや弱点も表れますので、質問には正直に答えるしかありません。決算書は様々な数式の集合です。数式のどの部分にリスクと弱点があるかを説明しなければなりません。「価格変動」「天候」「供給体制」「人員の確保」など、リスクは様々です。

◆熱くなりすぎない

決算書の説明を始めると様々なことを熱く語りだす経営者が多いですが、ほどほどにしておく必要があります。決算書に対する説明ですので、それにはそれの「目的」「視点」「要点」があります。「経営理念」「経営戦略」「経営計画」も大切なことですが、それは別の機会に説明することです。

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★正確な情報公開が信用につながる

あらゆる世界で情報公開が求められています。企業の場合には決算書がその中心をなすものです。質問には耳障りなものもあります。しかし、その「見られているという緊張感」が「見られても恥ずかしくない経営状態」につながり、ひいては企業の信用と発展につながるのです。

情報公開

信用度の向上(良好な経営状態にするためのモチベーション)

企業の発展(融資や補助金により獲得した資金の活用)

継続的な情報公開

経営者はこの好循環(さらなる発展)を創造しなければなりません。

「中小零細企業の社長は会社の経費で飲食ができて高級自動車に乗れる」では、融資も受けられないし補助金ももらえない時代がやってきたのです。これは本当です。

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ビジネスの世界で生き残るための現場の会計思考
安本 隆晴
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)


決算書の説明(コスト構造)

2019-11-14 15:00:00 | 起業(会社設立など)と経営
決算書におけるコストとは損益計算書に表示される「費用」のことです。

決算書のおける「コスト=費用」を説明するには、様々な会計のルールを知らなければなりません。説明を聞く相手は会計的思考と視点を持っていますので、同じ立場で説明しなければ理解をしてもらえません。

◆段階的利益計算(性質の異なるコスト)

決算書(損益計算書)のコストを説明するにあたって最初に理解しておかなければならないのは、利益は段階を経て計算されるということです。

利益は「全収益-全費用」ですが、損益計算書では収益と費用に属する各勘定科目を一定のルールに従って配列し、配列した順序ごとに順次利益の計算をしています。

A売上高(収益)→本業の収益
B売上原価(費用)→販売した商品(上記の売上高)に対する仕入代金

売上総利益→A売上高-B売上原価(いわゆる粗利)

C販売費及び一般管理費(費用)→人件費、家賃、交通費、通信費などのいわゆる経費

営業利益→売上総利益-C販売費及び一般管理費

D営業外収益(収益)→本業以外の収益
E営業外費用(費用)→本業以外の費用

経常利益→営業利益+D営業外収益-E営業外費用

経常利益に臨時の生じる特別利益(収益)と特別損失(費用)を加算減算してそこから法人税を差し引いたのが「当期利益」です。

◆売上原価と販売費及び一般管理費の違い(両者の明確な区分が必要)

売上原価は商品の仕入代金や製品の製造原価で、売上高に対して直接的で比例関係にある費用です。卸売業や小売業の売上原価は仕入代金と購入時の諸経費(運賃など)が大部分を占めますが、製造業の場合には材料費、人件費、製造設備関連費用など多種多様な費用から構成されています。

販売費及び一般管理費は売上高に対して間接的なコストで比例関係を明確に求めることができません。販売と管理(事務)に関する費用であることからその内容は多種多様で、業種や業態によって内容が相当異なってきます。

製造業の場合には、製造原価と販売費及び一般管理費の区分が困難な費用があります。例えば、本社事務所と工場が同一の建物にある場合です。この建物に関して様々な費用が生じますが、両者を合理的な基準で製造原価と販売費及び一般管理費に配分しなければなりません。

説明をする前提として、自社の損益計算書においてこの部分の計算がどのようになっているかを十分理解しておく必要があります。

◆売上総利益で販売費及び一般管理費を賄えているか

企業というのは売上総利益を獲得して、それでもって販売費及び一般管理費を賄わなければなりませんので、売上総利益というのが非常に重要なのです。販売費及び一般管理費の額によって獲得しなければならない売上総利益が決まってくるのです。

この部分の構造は企業にとって非常に大切ですので、その計算方法や内容を説明できるようにしておかなければならないのです。

◆売上総利益の水準について説明する(自社の特質を説明する)

主力商品や顧客についての利益率や利益額を説明しなければなりません。その説明の結果として、損益計算書の「売上高-売上原価=売上総利益」の合理性を相手に納得させるのです。

売上総利益率の変動が激しい場合にはその理由が説明できなければなりません。「いくつかの定番商品があるが売値の変動が激しい、あるいは仕入値の変動が激しい」「取扱商品が頻繁に入れ替わっていて利益率が一定しない」といった具合の説明が必要です。

◆原価計算(製造業の場合)

製造業の製造原価を計算することを原価計算といいます。製造業の場合には、製造原価を構成する費用を説明できなければなりません。材料費、製造要員の人件費、設備の購入費用(減価償却費)、設備の運転と維持に関する費用など、具体的かつ詳細な説明が必要です。そして、これらの費用をどのようにして製品と関連付けているのかが説明できなければなりません。

◆サービス業の売上原価

サービス業とは製造業のように目に見える物を作って売るのではなく、無形のサービスを提供してその対価を得ている業種です。ソフトウェア業、派遣業などのことです。サービス業には製造業の材料費や設備関連費用のように目に見える費用はありませんが、人件費、事務所家賃などの費用が売上に対する直接的な費用として生じます。

◆販売費及び一般管理費の各勘定科目について説明する(自社の勘定科目の使い方)

〇金額が大きい勘定科目は詳細に説明する
金額の大きい勘定科目については詳細な説明が必要です。人件費(給料、賞与、法的福利費)については人員数と人員構成、減価償却費については貸借対照表に計上している有形固定資産(建物、車両、備品など)、家賃については賃借している物件などと関連させて説明しなければなりません。

〇特殊な勘定科目
業種や業態によっては特殊な費用が多額に生じ、それが特殊な名称の勘定科目として計上されることがありますので、これについての説明が必要となります。

〇勘定科目の用い方
勘定科目の用い方は会社によって異なってきます。例えば、営業用車両に関する費用です。
ガソリン代は旅費交通費あるいは消耗品費、一時利用の駐車場代は旅費交通費あるいは賃借料といった具合に選択肢があります。この点について、面倒でも質問には答えなければなりません。

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決算書はここだけ読もう〈2020年版〉
矢島 雅己
弘文堂


決算書の説明(営業の状況)

2019-11-06 10:30:00 | 起業(会社設立など)と経営
決算書における「営業」とは、「仕入れて」「作って(メーカーの場合)」「売る」というプロセスのことです。

営業に関して説明しなければならないのは会社のビジネスモデル、つまり「儲ける仕組み」です。会社がどのようにして生まれ成長し現在があるのか、今後どのように存続・発展していくのかを、相手が具体的にイメージできるようになるまで説明しなければなりません。

「この会社なら大丈夫だ!」と相手に思わせる説明の裏付けとなるのが、過去から直近までの決算書の諸数値なのです。経営者が語る過去や現在とは切断された未来(夢?)ではなく、過去と現在の事実なのです。

◆決算書からだけでは具体的な営業状況がわからない

決算書の営業に関する部分は金額が大きいことから決算数値に与える影響も極めて大きいです。したがって、決算書の読者はこの営業に関する部分がどのようにして計算されたかの説明について非常に関心を持ちます。

〇損益計算書
A売上高
B売上原価(期首棚卸資産+当期仕入-期末棚卸資産)
売上総利益(A-B)

〇貸借対照表
売掛金
棚卸資産(商品、製品、原材料)
買掛金

決算書(貸借対照表と損益計算書)を眺めただけでは、どんなに会計に詳しい人でも営業の内容がわかりません。そこで経営者による説明が必要となるのです。

◆「誰に」「何を」「どのようにして」売っているのか(ビジネスモデル)

〇主な顧客
顧客が企業の場合には「卸売業」「小売業」「製造業」「サービス業」などの業種を説明します。一般消費者である場合には「性別」「年齢」「職業」などを説明します。

〇主力商品
会社のホームページやパンフレットを見せて、何を売っているのかを説明します。商品を見せるとさらに効果的です。取り扱っている商品が製造用の材料や部品である場合には、最終製品と関連させて説明します。

〇顧客のニーズと競争力
商品が売れるのはニーズがあるからです。また、同業他社よりも競争力(特徴や顧客のメリット)があるからです。この点を説明すると説得力が増します。

〇販売方法
「店舗販売」「ネット販売」「訪問販売」「ルートセールス」などです。これは取扱商品と顧客層から必然的に導かれることになります。販売方法によって企業の構造(組織や設備)は大きく異なり決算書にもそれが表れますので、相手はこの点を注意深く聞くとともに質問を投げかけてくることもあります。

〇販売地域
「地域限定」「全国」「海外」などです。これも決算書に与える影響が大きいです。

◆売上高(事業年度別)の内訳【重要】

「決算数値」の説明ですので「損益計算書(事業年度別)の売上高」の説明をしなければなりません。顧客別、商品別などの売上高を示して、その結果として各事業年度の売上高が計上されていることを説明します。

◆仕入と製造(売上原価)について

仕入や製造の方法ついても説明しなければなりません。販売は利益を出さなければ意味がなく、「売上-売上原価」の説明を欠かせません。特に大切なのは、主力顧客と商品で十分な利益を上げているということです。「販売価格-仕入値あるいは製造コスト」である粗利(売上総利益)こそが企業の膨大なコストを賄う源泉だからです。

◆販売代金の回収方法

「即現金回収」「掛売」「手形回収」「クレジット」などのことです。「掛売」「手形回収」「クレジット」については現金化するまでの日数を説明しなければなりません。健全な(会社が成り立つ)回収方法が確立され、それが徹底されていることが大切です。これができていない場合には、その歪みが決算書に表れています。

◆仕入代金の支払い

「即現金支払い」「掛仕入」「手形払い」などのことです。「掛仕入」「手形払い」については現金決済までの日数も説明します。支払方法と期日を守れていない場合にはそれが決算書に表れます。

◆在庫の状況

在庫を抱えている場合には、常備している在庫や季節による変動を説明しなければなりません。仕入代金の支払いを済ませ、それを在庫として抱えていれば販売するまで資金にはなりませんので、在庫が増えると資金繰りを圧迫します。これは決算書に如実に表れます。

◆業界独自の取引慣行の説明(根気よく、丁寧に、そして謙虚に)

営業の状況を説明するにあたっては、業界独自の取引慣行の説明を避けて通ることができません。相手は素人なのですから、根気よく丁寧に説明しなければなりません。「〇〇の常識は△△の非常識」といわれるように、説明にあたっては「自分たちの業界が世間一般とは違っているんだ」という謙虚さが必要です。

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★業種を正確に告げる(NG業種に分類されないように!)
営業の状況を説明するにあたっては、まずは「業種」を正確に告げることです。業種が明らかになれば説明を聞く相手の「方向性」も定まります。業種に関して最も恐ろしいのは、説明が不十分なために「NG」の業種に分類されてしまうということです。誤解のないように説明しなければなりません。

★勘定科目内訳明細書と法人事業概況説明書
法人税の申告書を税務署に提出する際に添付する「勘定科目内訳明細書」「法人事業概況説明書」にも営業に関する情報が記載されています。外部者に決算書を提出するにあたってはこの二つも一緒に手渡しておくことです(相手も要求することが通常です)。

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佐伯 良隆
朝日新聞出版


債務超過(最悪!もう融資は受けられない?)

2019-10-05 11:45:00 | 起業(会社設立など)と経営
債務超過になると金融機関の評価は「最悪」となります。経営者は自らの会社を債務超過にしてはなりませんので、債務超過についての正確な知識を持たなければなりません。

◆債務超過とは(資産<負債)

債務超過とは、貸借対照表の資産よりも負債が多い状態をいいます。あらゆる資産でもってしても返済や支払いができないということです。

個人でいえば、財産よりも借金のほうが多い状態です(破産、夜逃げ、ホームレス・・・)。

◆純資産がマイナスであるということ

決算書をご覧ください!

資産と負債の差額は純資産ですので、債務超過とは純資産がマイナスの状態をいいます。

大丈夫ですか?

もし、債務超過であっても、最後までお読みください!

◆資本金との関係

会社設立当初は、資産(出資された現金)=純資産=資本金となりますが、この算式は活動するにつれて変化していきます。

資産100-負債40=純資産60(資本金50)→資本金よりも純資産が増えている
資産100-負債50=純資産50(資本金50)→資本金と純資産が同額
資産100-負債60=純資産40(資本金50)→資本金よりも純資産が減っている

資産100-負債110=純資産マイナス10(資本金50)→債務超過(純資産がマイナス)

債務超過とは、全ての資産を現金化しても返済できないということです。つまり、設立時に資本金として出資された現金をすべて使い果たし、さらには借金をしているということです。

◆債務超過(純資産がマイナス)になる原因

債務超過の原因は赤字(収益<費用)です。設立以来の各事業年度の利益の合計がマイナスで、それが資本金を上回れば債務超過に転落します。

収益が生じると、現金預金や売掛金などの資産が増え純資産も増えます。費用が生じると、現金預金という資産が減る、あるいは買掛金や未払金という負債が増え純資産は減ります。赤字は、「資産の増加<負債の増加」「資産が減る一方」「負債が増える一方」という状況ですので、これが続けば純資産はマイナスになります。

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◆債務超過でも融資を受けている会社がある(実質的には債務超過ではない)

「資産<負債」という債務超過であれば追加の融資は絶望的です。しかし、現実には債務超過でも追加で融資を受けている会社は多数あります。

〇資産の担保提供や保証人の存在
債務超過であっても、金融機関からの借入金をカバーできるだけの資産(会社および経営者個人が保有する)が担保提供されている、保証人に十分な返済能力がある場合には追加で融資を受けることができます。

〇負債の内容
負債は「支払い」「返済」をしなければなりませんが、中にはこれが不要あるいは相当の長期間待ってもらえるものもあります。グループ会社(経営者が同じであるなど)からの仕入代金、経営者や近親者からの借入金がそれです。そうであれば、これらは負債から除外されますので債務超過でなくなります。

〇資産の時価評価
貸借対照表に計上されている資産の中には計上されている金額よりも価値=時価が大きいものもあります。土地や有価証券がその典型で、これらを時価評価し直せば資産総額が増えて債務超過でなくなることがあります。

〇一時的な債務超過
債務超過が一事業年度だけの場合には、債務超過が解消された事業年度以降は再び融資を受けることができます(債務超過が解消される見込みがあれば融資が受けられる)。

〇資本金が少なすぎる
資本金があまりにも少ない場合には、少額な赤字でも債務超過に転じてしまいます。

◆リスケと法的手続

名実とも債務超過の場合には約定返済ができませんので、リスケか破産・民事再生という法的手続をするしかありません。

この手続は口頭のみで行えません。様々な計算をして、書類を作成しなければなりません。これを経営者自身で行える場合はいいとして、そうでない場合には公認会計士(税理士)や弁護士に依頼しなければなりませんので、その報酬は確保しておかなければなりません。

くれぐれも、自暴自棄になって投げ出してしまう(記帳、決算、税務申告をしない)のだけはやめてください。

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相馬 裕晃
中央経済社