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【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

別会社の設立(複数の名義を使い分ける)

2012-06-02 13:00:00 | 起業(会社設立など)と経営
「別会社」を設立したいという相談をよく受けます。

「別会社」とは、すでに活動している「既存会社」とは別の会社のことです。別会社は既存会社とは別の名義(商号、社名)で活動しますので、第三者には両会社は全く関係がないように見えます。

別会社を設立する目的は様々です。

○営業地域や商品ごとに会社を分ける(独立採算の徹底)
○会社ごとに従業員の処遇を変える(会社単位での処遇の統一)
○節税対策(利益分散=低い法人税率、交際費枠の活用など)

★名義(商号、社名)が「もうひとつ」必要!

ここでは別会社を設立して名義を「もうひとつ」得るという場合を説明いたします。名義がもうひとつ必要なのは既存会社の社名では取引上不都合があるからです。

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わが国では会社を自由に設立することができます(特定業種の会社は許認可などが必要)。また、一人の人物が複数の会社の株主や役員になって、同時にその複数の会社を支配することもできます。

◆別会社の役員(取締役と監査役)を誰にするか?
既存会社と別会社の社名が全く違っていても、役員が同じであれば、第三者には両会社が実質的には同一であることを容易に判明します。役員の顔ぶれは法務局で誰でも簡単に調べることができるからです。
そこで、「別会社の役員になってくれそうな人物はいるのか(役員としての責任を負えるのか)?」「その人物は命令に従うのか(意のままに動くのか)?」が問題となるのです。

◆別会社の所在地をどこにするか?
これも役員と同じく、既存会社と所在地が同じでは意味がありません。
なお、会社の所在地というからには相応の実体がなければなりません。「看板」「電話」「留守番」「応接場所」は当然のことです。

◆既存会社と別会社の「財布」は別々
当然です。決算も税務申告も別々です。「連結(決算、納税)すればいいんでしょ?」「連結すれば低コストで済む!」「会計ソフトで簡単に!」、は甘いです。

◆既存会社と別会社の取引に注意(税務上問題になるケースが多い)
既存会社と別会社の事実上の経営者が同一であれば、両社間の取引を都合のよいように行い、結果として税負担を少なくすることもできます。当然、税務署は黙ってはいません。

◆別会社設立に伴う既存会社から別会社への従業員の転籍や出向
◆別会社設立に伴う既存会社から別会社への事業用資産(備品や車両など)の売却
これも様々な問題を生じさせます。

別会社は有効に活用すれば多大なメリットがありますが、活用を誤ると(使いこなせなければ)、「信用を失う(不信感を抱かれる)」「事務作業が増大する」「税務署に目を付けられる」という結果だけになってしまうこともあります。ですから、別会社の設立にあたっては事前に十分な検討が必要です。

遅れて提出する設立届

2012-04-19 17:00:00 | 起業(会社設立など)と経営
会社を設立すれば2か月以内に設立届(法人設立届出書)を税務署に提出しなければなりません。会社を設立した事実と設立の日は登記によって明らかにされますので、会社を設立した以上は税務署から逃げることはできないのです。「税務署と関わるのは儲かってから・・・」は通用しません。

にもかかわらず、設立届を期限内に提出していないケースがあります。期限が過ぎたからといって提出が不要となることはありませんので至急提出しなければなりません。

●提出日付
実際に提出する日になります。設立から2か月経過後の日付(提出期限)ではありません。

●設立年月日
法務局で登記されているとおりに書きます。これ(会社成立の年月日)はごまかすことはできません。

●事業開始(見込み)年月日
正直に書くしかありません。「(設立登記はしたけれども)事業開始が遅れたから・・・」は言い訳にはなりません。会社を設立すれば税務署に届ける義務があるのです。当然、申告もしなければなりません。

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◆税務署の受付印の日付

設立届の控(提出用の複写)に税務署は日付が表示された受付印を押印してくれます。当然、この「日付」は実際に受け付けた日付になります。

登記事項証明書に記された「会社成立の年月日」と税務署の「受付印の日付」から設立届の提出が遅れたことは一目瞭然です。金融機関などに設立届の控を見せなければならない場合には恥ずかしいです(笑)。

◆都道府県と市町村へも設立届を提出しなければなりません

忘れないでください。「税務署が連絡してくれるだろう・・・」は甘いです!

遅れて提出する個人事業者の開業届

2012-04-17 17:00:00 | 起業(会社設立など)と経営
個人事業者の開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)は事業開始の事実があった日から1か月以内に納税地(通常は住所地)の税務署に提出しなければなりません。この届けの記載事項は事業開始から「1か月以内」の提出を前提としていることから、提出期限を過ぎて提出する場合には、用紙の空欄に文字を書き込んでいる最中に思わず「ペンが止まってしまう」ことが多々あります。

●提出日付
実際に提出する日になります。事業開始の日から1か月経過後の日付(提出期限)ではありません。

●開業日
正直に書くしかありません。ウソを書いても税務調査で預金通帳や領収書の日付でばれてしまいます。

●青色申告承認申請書の提出の有無
開業初年度の場合、事業を開始した日を基準にして提出期限が決まってきます。提出期限を過ぎている場合には青色申告の適用がありません。辛いかもしれませんが開業日は正直に書くしかありません。

●給与支払いを開始する日
「開始した」日になる場合もあるでしょう。これは、源泉徴収義務に影響してきます。

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◆税務署の受付印の日付
開業届の控(提出用の複写)に税務署は日付が表示された受付印を押印してくれます。当然、この「日付」は実際に受け付けた日付になります。

◆開業時と住所が違う
とりあえず、現住所を管轄する税務署に相談してください。

法人成りに伴い個人事業から会社に引継いだ資産に関する税金(消費税に注意!)

2012-01-27 17:00:00 | 起業(会社設立など)と経営
法人成りする(個人事業者が会社を設立する)場合、商品・製品・原材料などの棚卸資産は当然として、個人事業時代に事業用に使用していた車両、機械、備品なども会社に引き継ぎます。この引継ぎは個人から会社への「売却」ですので(収入と利益が生じるので)、これに関して様々な課税関係が生じます。

★所得税の課税

次のように個人事業から会社に引き継ぐ資産によって、所得の区分(所得の計算方法、税負担)が異なってきます。

○商品・製品・原材料(棚卸資産)→事業所得
法人成りした年度(個人事業者としての最後の年度)の収入(売上)に売却(引継)価額を加算します。売却価額は通常の販売価額によるべきですが、税務上は通常の販売価額の70%程度までの「値引き販売」は認めています。

○車両・什器備品・建物内装など「土地建物以外の」有形固定資産→譲渡所得(総合課税)
事業所得、つまり事業の損益計算には含めないで総合課税の譲渡所得として別に計算します。売却価額は第三者間で決定される価格によります(中古品価格など)。

○売掛金→課税関係なし
損得を発生させずに会社に引き継ぐので課税関係は生じません。

★消費税(法人成りの年度に消費税の課税事業者である場合)

「資産の譲渡」であるので消費税の課税対象となります。個人事業者として最後の年度に行う消費税の申告において、この資産の譲渡に関する消費税額(税込譲渡価額の5÷105)を含めなければなりません。

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◆時価での売却(引継ぎ)が基本!

詳しい説明は省略しますが、個人事業から会社への引継ぎは時価で行うのが基本です。そうでない場合(時価より高い・安い、無償の場合)には、思いもよらない(素人では理解できない、受け入れがたい)課税関係となってしまいます。

「これくらいの値段のほうが都合よい!」は御法度なのです。

◆売らずに「貸す」という選択も

中小零細企業の場合、廃業する個人事業と設立する会社は実質的には同一です。資産の引継ぎは単なる名義の変更にすぎません(引継ぎの前後で実質は何も変わらない)。にもかかわらず、思いのほか多くの税負担が生じてしまう場合もあります。また、引き継ぐ資産によっては名義変更手続に手間と費用がかかる場合もあります。

そこで、資産を会社に売るのではなく、貸すという方法もあります。特に、個人事業で使用していた自己保有の土地建物は、売却によって思いのほか税負担が生じるとともに登記という多額な費用がかかる手続も必要となることから、名義は個人のままで、会社に貸すという選択をすることも多いです(売却よりもはるかに多いかもしれません)。

ただし、貸した場合には、会社から個人に支払われる賃料が個人の収入となりますので、その収入から諸経費を差し引いた額(所得額)によっては、所得税の確定申告が必要となる場合があります。また、消費税も課税されてしまう場合もあります。

◆消費税に注意!

消費税の課税事業者が法人成りをする場合には、この問題を避けて通ることができません。特に、在庫(商品、製品、材料などの棚卸資産)は会社に引き継ぐしかありませんので、在庫の多い業種の場合には要注意です。個人事業者としての最終年度には、思いのほか消費税を多く納めなければならないこともあるのです。

開業届の提出をためらう人・・・

2011-12-01 17:00:30 | 起業(会社設立など)と経営
個人で事業を始めたけれども、個人事業者としての開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の提出をためらう人が少なからずいます。

■今年は売上がないかもしれない・・・

事業内容によっては受注や製品の完成に月日を要し、開業初年度には売上がゼロになるケースもあります。「事業を開始した日」が何時であるかの判断が難しいのは事実ですが、少なくとも「初めての注文が取れた日」や「初めて代金の入金があった日」でないことだけは確かです。ですから、自身で「事業を始める!」「もう、後へは引かない!」と思ったならば開業届を提出すべきです。

結果的に事業と呼べるような状況には至らなかった場合(売上がゼロ)には、事業所得としての申告をする必要はありません。税務署から問い合わせがあれば、自信を持って答えられるようにしておけば大丈夫です!

■雑所得で申告するべきでは・・・

このような選択もあります。雑所得でしたら開業届の提出は不要です。

■失業保険が・・・

(説明省略)

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★青色申告の申請(所得税の青色申告承認申請書の提出)

まだ早いと思います(笑)!

「赤字を繰り越せる(純損失の繰越控除)」かもしれませんが、売上ゼロでは税務署を説得するのが相当難しいと思います。