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【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

正確な給与計算は経営者の義務! (なぜ控除するのか?)

2016-09-02 12:30:00 | 起業(会社設立など)と経営
給与から税金や保険料の控除をする(徴収する、天引きする)ことを面倒がる経営者がいます。「控除すると手取りが減るので可哀そう」と思う経営者もいます。しかし、控除しなければならないのです。法律でそう決まっているのです。従業員は控除されたからといって文句はいえないのです。会社は従業員に断りなく控除できるのです。

◆所得税(国税)

個人の所得に課税される所得税は、「申告により納税」するものと収入を受け取るときに「その支払者から一定額を徴収されることによって納税」するものとがあります。サラリーマンの給与は後者の典型です。所得税を徴収することを「源泉徴収」といい、源泉徴収をする義務がある者を源泉徴収義務者といいます。従業員を雇用して給与を支払っている会社は源泉徴収義務者にほかなりません。

給与から徴収する所得税の額は、給与の額や扶養親族数によって異なりますが、その計算は源泉徴収義務者が行う必要があります。源泉徴収義務者は徴収した所得税を国(税務署という役所)に納めなければなりません。

◆住民税(地方税)

サラリーマンの住民税は給与から徴収されます。住民税を控除する理由も所得税と同じです。所得税との違いは、所得税のように源泉徴収義務者が徴収税額を計算するのではなく、役所が通知してくる従業員ごとの税額をそのまま徴収するということです。

会社は各従業員の年間給与の額や扶養親族数などを各従業員の住所地の市町村に報告しなければなりません。この報告により市町村は各従業員の住民税の額を計算し、会社に通知をして徴収させるのです。このことを「特別徴収」といいます。

◆社会保険料(健康保険、介護保険、厚生年金)

サラリーマンは勤務先を通して社会保険(病気や老後の生活に備える公的扶助)に加入します。会社は従業員の社会保険に関する諸手続と保険料の納付をしなければなりません。

社会保険料は会社と従業員で折半します。保険料を納めるのは会社ですが、会社は最終的な負担が半額になるよう従業員からも徴収するのです。税金(所得税と住民税)の控除額がそのまま納付されるのとは違います。

◆労働保険料(雇用保険)

社会保険と並んで大切なのが、従業員の失業に備える雇用保険です。この雇用保険の諸手続と保険料の納付をするのは会社です。

保険料は会社と従業員で折半します。会社は最終的な負担が半額になるよう従業員から徴収します。なお、労働保険料は雇用保険料と労災保険料に分かれますが、折半になるのは雇用保険料で、労災保険料は全額会社の負担ですので従業員からは徴収しません。

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★給与明細で控除内容と金額を明らかにしておく
給与から一定の控除をしたならば、控除の内容と金額を給与明細において明らかにしておく必要があります。控除欄で、「所得税」「住民税」「健康保険料」「介護保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」と別々に明記します。

正確な給与計算は経営者の義務! (税務と社会労働保険の知識は必須です)

2016-08-27 17:00:00 | 起業(会社設立など)と経営
給与計算のことで従業員とトラブルを起こす経営者は多いです。その原因のひとつが「控除項目」です。控除(こうじょ)項目とは、給料や賞与から徴収(天引き)をしなければならない税金や社会労働保険料のことです。

徴収しなければならない税金や社会労働保険料の計算はそれ相応の知識がなければできませんが、この知識を習得するための労を惜しむ経営者がいます。従業員を一人でも雇用したならば(厳密には雇用することが決まったならば)速やかに習得しなければなりません。また、税金や社会労働保険料の計算方法は頻繁に変更されます。ですから、数年前の知識はまずは役立ちません。変更に関する情報がタイムリーに入手できるようなアンテナを張っておかなければなりません。

給与計算を経理担当者や会計事務所(税理士)に任せている経営者もいると思います。この場合であっても、「丸投げ」は禁物です。給与計算の基データは経営者が提供し、計算結果についても必ず報告を受け、納得の上で給与を支払わなければなりません。「私は知らないので、○○(経理担当者や会計事務所)に聞いてくれ!」では経営者失格です。

給与計算の間違いが従業員のモラル低下につながることが非常に多いです。経営者は正確な給与計算に勤め、万が一計算間違いをした場合には、その従業員が誰であれ誠意をもって謝罪をしなければなりません。そして、給与計算を訂正することです。

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★給与から徴収する税金や社会労働保険料に関する情報の入手先

これさえも知らない経営者がいます!

徴収した税金や社会労働保険料は会社が役所に納めなければなりませんので、これらに関する情報もそれぞれの役所が提供しています。

所得税(国税)・・・税務署(会社を管轄する)
住民税(地方税)・・・市町村(従業員の住所地の)
社会保険料(健康保険+厚生年金)・・・年金事務所(会社を管轄する)
労働保険料(労災+雇用)・・・労働基準監督署あるいはハローワーク(会社を管轄する)

疑問点はそれぞれの役所に問い合わせてください。「こんなに詳しい説明書があったのか!」と驚くような冊子を渡してくれます(すでに郵送されていることもあります)。

銀行から借りているということは?(自分の会社ではないということです=明朗会計を!)

2016-08-20 11:00:00 | 起業(会社設立など)と経営
銀行から融資を受けている場合には、毎事業年度の決算申告が終了したならば銀行から決算書と申告書控の提出を求められます。このことを不快に思う人が多いですが、当然のことですので憤慨してはいけません。なぜならば、銀行は会社の債権者ですので会社の決算内容を知る権利があるのです。会社が決算を行う目的のひとつは債権者への情報提供なのです。

銀行から融資を受けたならば、「もう自分の会社ではない」という認識を持つ必要があります。自分の資金だけで経営ができないからです。「個人的な出費(事業とは無関係)を会社の経費に計上するのは経営者の特権!」といった考えは捨てなければなりません。「そんなこと(個人的な出費)に使うために融資をしたのではありません!」「融資した資金は事業のために有効に使ってください!」と叱責されます。

自分のためだけの経理ではないのですから、タイムリーな処理が要求されます。「領収書の放置」や「仮払金・仮受金(入出金の内容を追及しない)」の多発は許されません。融資の額や経理状況によっては、「月ごと」に経理内容の報告が求められます。月ごとの報告は「試算表」で行います。当月分の試算表は、遅くとも翌月の10日までに完成させる必要があります。さらには、試算表のほか「資金繰り表」の提出も求められます。試算表では把握できないこともあるからです。

「経理担当者(または税理士)に任せている!」では失笑を買います(笑)。経理担当者(まはた税理士)は経営者が動かした資金の結果を記録するのですから、経営者が資金の動きを明瞭に伝えてくれなければ仕事ができません。正確で明瞭な「試算表」「決算書」「申告書」は経営者から経理者への正確かつタイムリーな情報提供があって初めて作成されるのです。

勘定科目にも留意しなければなりません。税務署は比較的勘定科目の誤使用には寛大です。例えば、買掛金と未払金を間違っても問題としません(税額に影響しないからです)。また、同一の出費に対して使用する勘定科目が統一されていなくても、その出費が経費になるのであれば問題としません(これも税額に影響しません)。正確な勘定科目処理は、各種経営分析数値の算出と各勘定科目の異時点間の比較の大前提です。

★担当の銀行員の立場
担当の銀行員の立場を考えなければ銀行とはスムーズに取引はできません。銀行という大組織においては「書類」が重んじられます。「信頼関係」「実績」「評判」だけではどうにもなりません。担当の銀行員の行内での評価を下げる取引先は「敵」です。自分勝手な論理を押し付けると、いずれは銀行のほうから去っていきます。一度失った信頼は二度と取り戻すことはできません。「それが大組織!」なのです。

社長借入金を放棄する(債務免除益)

2016-07-30 13:00:00 | 起業(会社設立など)と経営
社長(代表者)借入金のこと考えるときには、「貸借関係の視点」を十分認識したうえで考えなければなりません。そうでなければ思考が混乱し迷路に入り込んでしまいます。

「会社の視点」から考えてみると、社長借入金は社長という個人から資金を借り入れたので「負債」です。負債として「借入金という勘定科目」で経理処理をします。負債ですのでいずれは社長に返済しなければなりません。金融機関などの「他人」から借りた場合と同じです。

「社長個人の視点」から考えると、会社に資金を貸したので貸付金という「財産」です。手もとから資金がなくなりますが、いずれは戻ってきます。また、利息ももらえるので、会社への貸付金は預貯金と同じく財産そのものです。財産ですので「譲渡」「贈与」「相続」の対象となります。

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「社長借入金の放棄」という話がされる多くの場合は、貸借関係を会社の視点から捉えます。社長借入金という負債を、借りている相手先である社長個人が返済を免除(放棄)してくれる、「もう返さなくてもよい」といってくれているのです。このことによってどのような経理処理が生じ、結果として会社の資産や負債、そして利益にどのような影響が出るかです。

社長借入金という「負債」がなくなるわけですから利益が生じます。「どうして利益が?現金をもらったわけでもないのに!」と思われるかもしれません。確かに、社長個人が放棄をしても、その時点では会社に現金は入ってきませんが、過去において借入金相当額の現金が会社に入ってきています。その借りた現金を返す必要がなくなるのですから会社にとっては利益なのです。

社長借入金の放棄があった場合の仕訳は次のとおりです。

≪借方≫社長借入金(負債の減少=消滅)≪貸方≫債務免除益(収益の発生)

「債務『免除』益」という収益です。損益計算書の「特別利益の部」に表示します。

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社長借入金の放棄が行われる目的は、負債を減らして金融機関からの融資を受けやすくする(会社の視点)、社長が相続税対策のために会社への貸付金(返済を受けるつもりも、返済が受けられる見込みもない)という財産を減らすということです。

いずれにせよ、放棄が行われ消滅した借入金は元に戻すことはできません。この点を十分留意しておく必要があります。社長にすれば、無税で会社から現金を引き出せなくなるのです(役員給与の場合には社長に所得税が課税されます)。

〇免除・・・会社の視点です(債務免除)。
〇放棄・・・社長個人の視点です(債権放棄)。

利益が出たので借入金を返済する(節税になるのか?)

2016-07-23 12:30:00 | 起業(会社設立など)と経営
▲当期は利益が相当出たので、節税にもなることだし借入金を全額返済して来期から新たな気持ちでスタートしたい(笑)!

△ごめんなさい!それは節税にはなりません・・・

▲借入金を返済すれば現金(預金)が減るから節税になるのでは?

社長と会計事務所(公認会計士、税理士)の間で古今東西を通じてされてきた会話です。

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会社に対する税金である法人税は「収益-費用」として計算する「利益」に課税されます。ここで大切なのは「費用は出金とは必ずしも一致しない」ということです(収益も入金とは必ずしも一致しません)。

借入金の返済は費用ではない出金の典型です。

★「費用が先行」する際には借入金で資金調達をしなければならない

借入金をするときの経営状況を考えてみると納得できます。例えば、起業直後に売上もないのに店舗や事務所を借り、人を雇い、広告宣伝をしなければならない場合には借入金で資金を調達しなければなりません(資本金でも不足する場合には)。

しばらくして事業が軌道に乗れば、先行した費用を回収できるだけの収益が生じます。借入金を返済できるようになるのはこの段階になってからです。この借入金の返済を費用として扱えば、費用を二重に計上することになってしまいます。

★「費用が遅れる」場合もある

借入金で資金を調達したのに費用は後から生じる場合もあります。その典型は、建物や機械など「減価償却」の対象となるものを購入した場合です。減価償却する場合、出金時に購入代金の全額が費用とはならず、数事業年度(長い場合には40とか50年の場合もある)にわたって費用計上しなければならない場合もあります。

このような場合、費用に先行して借入金の返済をしなければなりません。相応の収益があればよいのですが、無い場合には返済のための借入金をしなければなりません。

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◆借入金がある場合は経理担当者や会計事務所との入念な打ち合わせをしてください!

上記以外にも様々なパターンがあり出金と費用の関係が複雑になるケースがあります。借入金がある場合には、経理担当者や会計事務所と入念な打合せをしたうえで方針を決定しなければならないということです。

借入金は経営者の金銭に関する尺度を狂わせます。「入金と出金」「収益と費用」「利益と法人税」の関係が理解できなくなります。自社の利益と税金が実感と著しくかけ離れてしまうこともあります。