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【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

税理士報酬には「社会・労働保険手続」に関する報酬が含まれる?

2016-06-30 20:30:00 | 起業(会社設立など)と経営
労働保険料の申告・納付

算定基礎届の提出

税理士、税務署が所得税の確定申告の時期は忙しくしているように、これらの手続に関連している人たちにも忙しい時期があります。

社会・労働保険に関する手続(計算、申請、申告など)が会計事務所(税理士)の業務であると思い込んでいる人が少なからずいます。しかし、これらは会計事務所の業務ではありません。「社会保険労務士」が唯一の公的資格です。社会保険労務士という資格は公正な国家試験に合格した者にしか付与されません。

確かに、法律的にはグレーな部分はあります。しかし、まともな会計事務所であれば社会・労働保険に関する手続は行っていないと思います。「社会保険労務士法27条(スペース)税理士」、ネットを検索してください。しかし、中には事務所のサイトやブログなどで、社会・労働保険に関する業務を行っているとしている会計事務所もあります。

「まずは、顧客と共に考え、悩み・・・、最終的には丁重な態度で最適な役所や専門家へ誘導する」

ほとんどの会計事務所はこのようにしています。「専門外」のことをたずねられたからといって無下に断るのはもってのほかです。かといって、自身の能力を超えた仕事を引き受けて、結果的に顧客に損害を与えてしまうことも避けなければなりません。

◆「にせ税理士」の依頼者には「ろくな人」がいない?
にせ税理士に依頼する人は、飲食店などで見当違いなサービスを要求し、それを拒否されて激怒している客と同じだと思います。「してはいけないことを平然と要求する」客です。要求を受け入れる店も店です。社会・労働保険に関する手続を会計事務所に要求するのもこれに似ていると思います。

◆給与計算を会計事務所に頼んでいる
誤解を生む原因のひとつが給与計算を会計事務所が行っているということです。給与計算は所得税や住民税の徴収が伴うという典型的な税務です。そして、給与計算に「付随して」、給与から徴収する社会・労働保険料の計算をするのは会計事務所でも行えます(というよりも、給与計算ソフトが自動的に計算します)。

◆「税理士又は税理士法人が行う付随業務の範囲に関する確認書」
平成14年6月6日、日本税理士会連合会と全国社会保険労務士会連合会の間で交わされています。これを読む限り、税理士は「提出代行」と「事務代理」はできないようです。「税理士さんに提出してもらっている・・・」、違反なのではないでしょうかね?

◆社会・労働保険に関する提出書類には税理士の署名押印欄はありません!
これも非常に重要なことです。税務申告書のように、税理士に役所との対応を任せることはできないということです。税理士に依頼している場合は、必ずこの件について「その税理士の見解」を確認しておく必要があります。「昔から慣習として認められている」「こんな程度のことは専門知識がなくてもできる」「・・・だって税理士の業務を侵害しているではないか!」では論理が破綻しています。理路整然とした説明ができ、最終的に「責任をもって・・・」といえるかどうかが大切です。

◆依頼している会計事務所の報酬に社会・労働保険手続に関する報酬が含まれている場合
当然、会計事務所に依頼はせずに自身で行えば報酬を減額してもらえます。あからさまに社会・労働保険に関する報酬として請求されている場合は当然として、その他の報酬に含まれている(紛れている)場合も同じです。「これは無料です・・・」はウソです。本当に無料であるならば、税務を一切依頼していない者に対して「社会・労働保険手続だけ」を無料でするはずです。

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★公的資格を付与するための要件=公正なる国家試験の実施

わが国には、弁護士、弁理士、公認会計士、司法書士など、様々な公的資格がありますが、資格を得るにはそれぞれの職域に関する専門科目を中心とした国家試験に合格することが大原則となっています。社会保険労務士や税理士も当然そうです。税理士試験の科目は会計と税務です。税理士試験には社会・労働保険に関する科目はありません。

以上のような疑義や誤解が生じ、最終的に依頼者に損害が生じないようにするためには、制度そのものを改める必要があります。既成事実からして(税理士業務が社会・労働保険と密接な関係がある)、「税理士には社会・労働保険に関する業務は一切行わせない」は行き過ぎです。ですから、税理士に社会保険労務士試験の一部科目を受験させるとか、厳正な(所定の役所の管理下での)研修の受講を義務付けることが必要だと思います。今後の社会保険労務士法の改正時には必ず俎上に載せなければならない論点です。また、税理士業界としても真摯に検討しなければなりません。

純資産がマイナスであれば融資は受けられない?

2016-06-07 21:00:00 | 起業(会社設立など)と経営
純資産がマイナスになる場合があります。この状態を「資本の欠損」といいます。

「純資産=総資産-総負債」ですので、純資産がマイナスということは「負債>資産」ということにほかなりません。当然好ましくはありません。「危機的状態!」です。現状の資産をすべて換金しても負債(借入金や買掛金など)を返済することができないからです。

「純資産=資本金+設立以来の累積利益(あるいは-設立以来の累積損失)」ですので、純資産がマイナスであるということは、設立時に出資した資本金よりも設立以来の累積損失が多いということです。設立当初に出資した資金を使い果たし借入金(負債)に頼っている状態です。

もうこれ以上、金融機関は融資をしてくれません。

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★返済不要の借入金?(代表者借入金)

借入金といっても様々です。返済期日に遅れれば情け容赦ない催促をしてくるものもあれば、いわゆる「ある時払いの催促なし」の寛容なものまであります。この世知辛い世の中に後者があるとは思えませんが、実はあるのです。「代表者借入金」です。

代表者借入金とは、文字通り会社の代表者である社長からの借入金です。中小零細企業の場合、会社の資金繰りが苦しいときに、代表者がその個人の資金を会社に提供するということがごく普通に行われます。「自分の会社が危機的状況にあるのだから仕方ない・・・」「いつ返してもらえるのかわからない・・・」というのが代表者の心境です。

金融機関は負債を把握するにあたって、このような代表者借入金を除外する場合があります。そして、除外した結果、純資産がマイナスでないと計算されたならば融資をしてくれます。

★代表者借入金は玉虫色(本当に返済不要なのか?)

代表者借入金といっても、その性質は様々です。返済が全く不要なものから、特定の時期までに返済しなければ会社も代表者個人も「破綻」してしまうものまでと様々です。ですから、金融機関はおいそれと代表者借入金を負債から除外してはくれないのです。

★債務免除と資本金への振替え(代表者借入金についてのケジメ!)

金融機関は代表者借入金に関して「債務免除」あるいは「資本金への振替え」という処理を要件として融資をしてくれることがあります。債務免除は代表者が借入金の返済を放棄することで、免除した借入金相当額の利益が生じます。資本金への振替えは、借入金という負債勘定から資本金という純資産勘定へ振り替えるという方法ですが、登記手続が必要で手続に際して「借入金額の評価」が難航し、この方法を断念しなければならないこともありえます。

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純資産がマイナスであれば基本的には融資は受けられません。しかし、上記のような方法で融資を受けているケースも少なからずあります。ですから、あきらめることなく、また、隠すことなく金融機関に相談してみることです。

【緊急告知!?】役員変更登記が必要です!

2016-04-29 16:00:00 | 起業(会社設立など)と経営
早いもので平成17年の会社法大改正(施行は平成18年5月)から10年が過ぎました。平成17年の改正は歴史に残る画期的なもので改正事項は多岐にわたっていましたが、中小零細会社にとっては「身の丈に合った会社制度」が確立されたと要約されるでしょう。

平成17年の改正前、中小零細会社を苦しめたことのひとつが取締役の任期が2年と極めて短かったということでした(そのほか役員の定数や最低資本金も厳しい制約でした)。取締役が2年という任期を迎え再度同じ者が取締役となる場合であっても、株主総会で再任の決議をしなければなりませんでした。この決議だけならばたいしたことはないのですが、問題はたとえ再任の場合であっても「役員変更登記」が必要であるということです。登記ですので費用が発生します。これが中小零細会社には負担だったのです。

改正により取締役の任期は最長10年に伸長することができるようになりました(原則は従来どおり2年)。中小零細会社は「こぞって!」取締役の任期を10年にしたのでした。当たり前です(笑)。

★あれから10年が経ちましたよ!

役員変更登記が必要なことを法務局は連絡してくれません。決算や申告を依頼している税理士は登記をしてくれません(登記は司法書士の業務です)。登記をしなければ過料という金銭で支払うペナルティがあります。登記をしないで一定期間を過ぎると「みなし解散」となってしまい、以後の活動ができなくなります。

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【法務省サイト】役員の登記の添付書面・役員欄の氏の記録が変わります(平成27年2月27日から)

取締役の就任(再任を除く)の登記を申請するときには「本人確認証明書」の添付が必要となりました。「本人確認証明書」とは、住民票記載事項証明書、戸籍の附票、住基カードや運転免許証のコピーなどです。

以前のように、著名人を「勝手に?」名目役員(代表権のない取締役)にしておくことができなくなりました。「あの有名な○○氏は当社の役員です(当社を信用するでしょ!?)」が容易に(本人の許可なく)できなくなったのです。

会社制度は時代に応じて緩和と規制の両面から変化し続けているのです。

初めて事業資金を借りる(住宅ローンや自動車ローンとは違います!)

2015-10-03 12:31:00 | 起業(会社設立など)と経営
住宅や自動車などの購入資金を金融機関(銀行やローン会社など)から借りる場合には「借りたお金を返せるのか(いくらまでなら返せるのか)」についての審査がありますが、事業資金を借りる場合も同様の審査があります。「返せない者には貸さない」「利息でしっかり儲ける」という金融の仕組みは同じです。

■本当に事業をしているのか(どのような事業をしているのか)?

事業資金の審査はここから始まります。住宅ローンや自動車ローンの場合には、借りた資金の使途が「目に見える物」の購入ですのではっきりとしています。しかし、「事業」は漠然としていることから、金融機関は事業実態の把握を慎重に行います。

■自らの事業内容を説明しなければならない

事業内容の説明は融資を受ける事業者がしなければなりません。「どのような事業」を、「どこで」、「いつから」「どのような形態(会社あるいは個人事業)」で行っているのかを説明しなければなりません。「どのような」の説明が大変な場合があります。「特殊である」「新しい」場合には根気よく説明するしかありません。

■事業をしている証拠(登記事項証明書、決算書、税務申告書控、営業許可証など)

ここで戸惑う人が多いです。証拠は公的なものと事業者自身で作成したものとがあります。

公的なものの典型は、登記事項証明書(会社の場合)、納税証明、営業許可証(許認可が必要な事業の場合)です。これらは役所へ行けば発行してもらえますが、定期的に必要とされる手続を行っていない場合には、発行を受けられない、発行を受けられたとしても内容が不適切であることから融資審査における不備事項となる場合があります。

事業者自らが作成するものの代表は決算書と税務申告書控です。いずれも、融資を申し込むからといってわずか数日で作成できるものではありません。また、税務申告書控は税務関連役所の受付印の日付が本来の申告期限内を過ぎており融資申込みの直前である場合は、経理がずさんな事業者(期限内に決算申告をする事務能力がない)とみなされてしまいます。

■事業主の個人情報

事業資金の融資は事業に対して行われるので、事業で稼いだお金の中から元金を返済して利息を支払わなければなりません。しかし、この想定通りにいかない場合には、事業主の個人的な資産から元金の返済と利息の支払いをしてもらうしかありません。特に、中小零細企業の場合には想定通りにいきません。ですから、事業主の個人情報も提供しなければならないのです。

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住宅ローンや自動車ローンは、住宅メーカー、自動車販売会社が申込み手続の代行してくれる、あるいは審査に通りやすくなるように金融機関に働きかけてくれます。ですから、「気が付いたらローンが組まれていた」ということもあります。しかし、事業資金の融資においてはこのような後押しをしてくれる者はいません。これが事業資金の融資を申し込むにあたっての「敷居の高さ」です。

いきなり金融機関の窓口で「事業資金を貸してほしい」といっても、一般的な説明と難解な専門用語だらけの説明書を手渡される程度で終わります。「資金が足りなければ(住宅ローンや自動車ローンのように)借りればいい」と安易に考えで起業した人は真っ青になります。

★制度融資(まずはこれからスタート!)
制度融資とは、中小零細企業を各種の制度に基づいて資金面で支援するというものです。その典型は、「日本政策金融公庫」と「信用保証協会」です。まずはこのあたりから情報収集をして、電話で問い合わせてみる、場合によっては直接出向いて説明を受けてみることです。

申告をしていない人の思い(?)

2015-09-25 17:01:00 | 起業(会社設立など)と経営
「申告していません。」
「申告をしなければならないのですか?」
「申告はしたくないのですが・・・」

うんざりするほどこの相談が多いです。しかし、この会話からお付き合いが始まることも多いですので、会計事務所としては無下にするわけにはいきません。懇切丁寧な説明が必要なのです。

■税務署にばれないだろう(申告していない人がいる)
この考えの人を説得するのは相当困難です。この人たちが会計事務所に求めるのは税金を「ごまかす方法」です。それを「ごまかし」とは思っていないのでなおさら大変です。最悪の場合(かなり多くの場合)、話の途中で立腹する人もいます。しかし、「孤独」「疑心暗鬼」「四面楚歌」という心理状態の人もおり、その状況に耐えきれず、やがては態度を軟化させる場合もあります。

■特定の収入だけを申告したい
税務署とも歩み寄る姿勢があり、税金に関する知識が多少はある人です。中途半端な知識があるだけに、少しでも税金を減らしたい、税務署にも多少のことは見逃してほしいと考えます。だだし、中には「納得すれば動く(話せばわかる)」というタイプの人もおり、説得は困難ですが、納得すると過去を猛省して同じ間違いは二度としないという強い意志の人もいます。

■申告が必要だとは知らなかった(誰も教えてくれなかった)
税金に関して無知で無関心な人です。このような人は、以後は申告をするようになることがほとんどです。しかし、呑気なだけに、領収書の保管や記帳ができるようになるまでの指導が大変なことが多いです。

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★無申告に対する会計事務所のスタンス
申告をしていないことを正当化することはできません。かといって、申告を強制することもできません。もちろん税務署に密告などはしません。無申告であることを会計事務所(税理士)に相談する場合には、まずは、「本当に申告が必要なのか?」の説明を十分に受けることです。