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常設型の住民投票条例でも住民投票の実施を拒否できる?

2014-02-17 18:30:00 | 自治のこと
『成蹊法学』76号〔判例評釈〕住民投票実施請求代表者証明書の交付申請却下処分が適法とされた事例(広島市住民投票拒否事件)/武田真一郎

この事例、詳しく知らなかったのだが大変興味深い。旧広島市民球場の解体の賛否を問う住民投票の実施を請求するため、署名収集を行おうとしたが、住民投票実施請求代表者証明書の交付を申請したところ、市長は、旧広島市民球場の解体は「市政運営上の重要事項」に当たらないとして、申請を却下した、という事例。

先日の小平市の住民投票の事例でもみられたが、地域の重要争点について住民投票のための条例を直接請求して制定し、住民投票を実施することは、首長や議会の壁に阻まれとても難しい。

これを回避するのが常設型の住民投票条例で、一定数の署名が集まれば必ず住民投票を実施しなければならないとようにするものだ。

広島市にも常設型の住民投票条例があるが、その第1条、第2条は以下のように規定している。

第1条 この条例は、地方自治の本旨に基づき、市政運営上の重要事項について、市民の意思を問う住民投票の制度を設け、これによって示された市民の意思を市政に的確に反映し、もって市民の福祉の向上を図ることを目的とする。

第2条 住民投票に付することができる市政運営上の重要事項(以下「重要事項」という。)は、現在又は将来の市民の福祉に重大な影響を及ぼし、又は及ぼすおそれのあるもの(次に掲げるものを除く。)とする。
(1)市の機関の権限に属しない事項
(2)法令の規定に基づき住民投票を行うことができる事項
(3)専ら特定の市民又は地域に関係する事項
(4)市の組織、人事又は財務の事務に関する事項
(5)前各号に定めるもののほか、住民投票に付することが適当でないと明らかに認められる事項

すなわち住民投票の対象が、「市政運営上の重要事項」に限定されている。

さらに広島市住民投票条例施行規則第12条1~3項は以下のように規定している。
(1)条例第5条第1項の規定により住民投票の実施を請求しようとする代表者(以下「請求代表者」という。)は、住民投票請求書を添え、市長に対し、文書で住民投票実施請求代表者証明書(以下「代表者証明書」という。)の交付を申請しなければならない。

(2)前項の規定による申請があった場合において、市長は、住民投票請求書に記載された住民投票に付そうとする事項が条例第2条の重要事項又は条例第6条の形式に該当しないと認めるときその他適法な方式を欠いていると認めるときは、請求代表者に対し、相当の期間を定めて、その補正を求めなければならない。

(3)前項の規定により補正を求められたにもかかわらず、請求代表者がその定められた期間内に補正をしないときは、市長は、第1項の規定による申請を却下しなければならない。

すなわち市民が直接請求をしようとしても、市長が、対象となる事項が「市政運営上の重要事項」ではないと判断すればそれを拒否できる、とも読めるようになっている。常設型の住民投票条例であっても実際には首長の判断によって直接請求の申請を拒否できる可能性があるわけで、住民投票をめぐる問題点の一つといえる。

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