つらねのため息@gooブログ

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脱原発にヒーローは要らない

2013-09-26 01:02:00 | 日本のこと
最近、脱原発派を目指す人たちから新潟県の泉田裕彦知事を評価する声が聞こえてくる。ぼくはそのことにちょっとした疑問を感じている。

疑問を感じる第一は、泉田知事がどちらかと言えば保守的、経済界寄りの人だからである。泉田知事は元々通産・経産官僚であり、彼が新潟県知事となった2004年の選挙の際には、自民・公明の推薦を受け、民主・社民両党の推薦を受けた候補を破っての当選だった。柏崎・刈羽原発を抱える新潟県知事という立場が彼の現在の立ち位置を形づくっていることを否定はしないが、根っからの脱原発派ではない人物に過度な期待を抱くのはどうかと思う。

第二に、例えば首都圏のような県外に住む市民が新潟県知事の政治姿勢を云々するということの構造的な問題である。柏崎・刈羽原発の再稼働を阻止するために首都圏に住む人間が新潟県知事に期待するというのは、原発を福島と新潟という圏外の地に押し付けてきたことの裏返しのように見えてしまう。新潟県知事は新潟県民の代表であり、新潟県民により選ばれ、新潟県民のために行動するはずだ。私たちは脱原発すら「地方」に押しつけてしまうのだろうか。

第三に問題を特定の政治家にゆだねてしまうことの是非だ。原発の問題は首長の意見ではなく、私たち市民一人ひとりの熟議を積み重ねていくことによってこそ、決めることのできる問題だ。もちろん、それぞれの地域で議論が深まることはとても良いことだが、特定の政治家や首長の判断や決定がよいものであっても、その人の立場や意見が変わってしまっては元の木阿弥になる。ひとりの良心的に見える人を持ち上げるのではなく、彼らを後押しする世論を熟議の中でつくりだしていくことが重要だ。政治家は私たちを導くリーダーではなく、代表なのだから。脱原発にヒーローは要らない。