雑記-白堂別館-

雑記なう
無職止めました。
出来ることからやってみよう

第八節

2010-04-27 11:47:59 | Dear to me
また少しの時間が過ぎて、自分の状況に香奈穂が気付き始めた頃、静かに雄二の目が開いた。
まだ完全に覚めきっていないのか、声をあげるでもなく、周りをゆっくりと見ている。
それから自分と手を繋いでいる香奈穂を見た。香奈穂の頭は混乱してうまく働かず、言葉にならない声しか出ない。
何か言わなきゃ、と焦る香奈穂にかけられた言葉は予想もしないものだった。

「温かい・・・」

思いがけない言葉だった。
けれどその反面、感情のこもった言葉がとても嬉しかった。
その嬉しさを言葉にして雄二に返したかったが、ノックの音に驚いてしまい果たす事が出来なかった。
扉を開けて現れたのは、用事から帰って来た先生だった。香奈穂はその姿に慌てて手を引っ込めた。
雄二は動じた様子もなく、ベットから降りて部屋を出ていこうとした。
けれど室内にいるため、自分が履物を穿いて無いことに気付くと香奈穂に向かって、
靴はどこ?
と先程とはうってかわって抑揚のない声で聞いて来た。
香奈穂がしどろもどろになりながら答えると、雄二は言葉なく歩き出した。
扉の前の先生に呼び止められ、体調について受け答えしたあと部屋を出ていくまでの間、香奈穂は身動き一つ出来なかった。
先生は雄二を見送るとさっきと同じく机に戻り仕事を始めた。
香奈穂は恐る恐る先生に聞いた。
「・・・あの・・・先生、何時から見てました?」
先生は少し考える素振りを見せると一言、
「・・・香奈穂さん、熱があるか計っていく?」
とだけ言った。
香奈穂は最初意味が分からなかったが、次第に雄二君から言われた言葉を揶揄しているのだと分かると、本当に熱が出そうな位に顔が赤くなった。
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第七節

2010-04-27 10:55:19 | Dear to me
保健室の中で雄二と香奈穂は二人きりになってしまった。
こういう時に限って他の利用者はいない。
あまりの急な展開に逃げ出してしまいたかった香奈穂だが、先生から留守を頼まれてしまった以上そうすることも出来ない。
仕方ないと言い訳て、ベットが見える位置にあった椅子に座った。

何をするでも無く手持ち無沙汰でいると、いつの間にか雄二の顔に目が向いていた。
心持ち、前より痩せているような気がする。
疲れが溜まっていると先生は言っていたけど、やっぱりお父さんの事で色々と悩んでいるのだろうか。
雄二君のお父さん・・・実際に会ったことはないけれど、雄二君にとってどれほど大切で尊敬している人だったか、言葉を聞くだけでも伝わってくる。
その分、失ってしまった時の心の穴は両親が建材である自分には想像できない。
(自分には何が出来るだろう・・・)
もちろん、ただの中学生なだけの自分に出来る事なんて限りがある。
むしろ出来る事なんて何も無いかもしれない。
早く大人になりたい今ほど思わない時は無かった。
大人ならこんな時、すぐに答えを導き出せるはず。

・・・ 行く先の見えない考えを廻らせていると、ベットから声がした。
雄二君の目が覚めたのだと思ったけどそうではないようだ。
近づいてみると、何かにうなされているみたいだった。
何か言ってるみたいだけど、ここからでは聞こえない。
恐る恐る耳を寄せるとかろうじて聞こえて来た。


「・・・・うさ・・・・いで・・・と・さん・かないで・・・とうさんいかないで・・・」


トウサン、イカナイデ・・・


雄二君の悲痛な心の叫びを聞いて、香奈穂は泣いてしまいそうだった。
布団が動いたかと思うと腕が伸びてきて、何かに縋るように宙をさまよっていた。
迷う事なく、香奈穂はその手を握りしめた。
すると、手はしっかりと握り返され雄二は安心したように静かな寝息に戻っていった。
けれど、その手の力は解けることなく香奈穂の手と繋がれていた。
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第六節

2010-04-27 03:35:06 | Dear to me
保健室に入ると、奥の事務机に座っている先生がこちらを見ていた。
香奈穂が雄二の事を伝えると、背負ってる男子越しに雄二の顔色を確かめた。
そのまま男子にベットを指差してそこまで運んで寝かせるように言った。

香奈穂達の見ている前で手際よく雄二の脈や熱などを診た先生は、
「疲れが溜まって気を失ってるだけのようね。起きたらすぐに教室に戻れるから。
また頻繁に倒れたりするみたいなら、病院に行かせるようにこの子の担任の先生に伝えておくわ。」
そう香奈穂達に言うと雄二に布団を掛けて、先生はまた事務机に戻って作業の続きを始めた。

ホッと一安心した香奈穂達は、もう自分達がここに居ても出来る事は無いだろうと部屋を出ていくことにした。
そこで香奈穂は先生に呼び止められた。
「今ちょうど昼休みよね・・・悪いけど、私は職員室まで少し用があって行かないといけないの。
私が帰ってくるまでいいから留守番をお願い。」
それだけ言うと、有無を言わせず先生はすぐに部屋を出ていってしまった。
一緒に来ていた男子は、当然のように既に居なくなっていた。
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第五節

2010-04-27 01:00:51 | Dear to me
男子に雄二を背負ってもらい、香奈穂を先頭に保健室の前まで来ていた。
香奈穂は二人で担いでいく気でいたけれど、男子から
「自分が雄二を背負うから保健室まで案内して」
と言われ、走った直後でフラフラの香奈穂は雄二を男子に任せてここまで案内をした。

男子が保健室の場所を知らないというのは意外に思えたけれど、よくよく考えてみれと香奈穂も委員会の用件を除けば数えるほどしか保健室に行った事がない。
香奈穂の通う中学校は比較的生徒が多いため、身体検査などの行事は体育館で行われている。
(確かに怪我でもしないと普通は来ないかな?)
そんな風に妙に納得してしまった。

扉にかけた手を一旦引いて、男子は香奈穂の方に振り返って保健室の先生はどんな人なのか聞いて来た。

保健室の先生は「物静かな大人の女性」という表現がピッタリの人で、他の先生のように声を張って話してる所を見ることが無い。
美人であることも手伝って、運動部の一部で隠れたファンがいるらしいと噂で聞いたのを思い出した。
香奈穂も委員などで保健室に来た際は、おしゃべりすることもある。

恐い先生でない事が分かった男子は、ホッとして扉をノックして開けた。
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2010-04-26 23:58:47

2010-04-26 23:58:47 | 雑記
もうすぐ日付も変わりマッスルが、
そしたら断食開始なんだよねぃ
しかも、明日の手術は1700時頃からだからほぼ一日は確定だと・・・(゜_゜

動かない日はあまり食わないから別にいいけど、しんどいかな(-_-;)
でも食って術後大変になるよりはマシなので我慢我慢
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