また少しの時間が過ぎて、自分の状況に香奈穂が気付き始めた頃、静かに雄二の目が開いた。
まだ完全に覚めきっていないのか、声をあげるでもなく、周りをゆっくりと見ている。
それから自分と手を繋いでいる香奈穂を見た。香奈穂の頭は混乱してうまく働かず、言葉にならない声しか出ない。
何か言わなきゃ、と焦る香奈穂にかけられた言葉は予想もしないものだった。
「温かい・・・」
思いがけない言葉だった。
けれどその反面、感情のこもった言葉がとても嬉しかった。
その嬉しさを言葉にして雄二に返したかったが、ノックの音に驚いてしまい果たす事が出来なかった。
扉を開けて現れたのは、用事から帰って来た先生だった。香奈穂はその姿に慌てて手を引っ込めた。
雄二は動じた様子もなく、ベットから降りて部屋を出ていこうとした。
けれど室内にいるため、自分が履物を穿いて無いことに気付くと香奈穂に向かって、
靴はどこ?
と先程とはうってかわって抑揚のない声で聞いて来た。
香奈穂がしどろもどろになりながら答えると、雄二は言葉なく歩き出した。
扉の前の先生に呼び止められ、体調について受け答えしたあと部屋を出ていくまでの間、香奈穂は身動き一つ出来なかった。
先生は雄二を見送るとさっきと同じく机に戻り仕事を始めた。
香奈穂は恐る恐る先生に聞いた。
「・・・あの・・・先生、何時から見てました?」
先生は少し考える素振りを見せると一言、
「・・・香奈穂さん、熱があるか計っていく?」
とだけ言った。
香奈穂は最初意味が分からなかったが、次第に雄二君から言われた言葉を揶揄しているのだと分かると、本当に熱が出そうな位に顔が赤くなった。
まだ完全に覚めきっていないのか、声をあげるでもなく、周りをゆっくりと見ている。
それから自分と手を繋いでいる香奈穂を見た。香奈穂の頭は混乱してうまく働かず、言葉にならない声しか出ない。
何か言わなきゃ、と焦る香奈穂にかけられた言葉は予想もしないものだった。
「温かい・・・」
思いがけない言葉だった。
けれどその反面、感情のこもった言葉がとても嬉しかった。
その嬉しさを言葉にして雄二に返したかったが、ノックの音に驚いてしまい果たす事が出来なかった。
扉を開けて現れたのは、用事から帰って来た先生だった。香奈穂はその姿に慌てて手を引っ込めた。
雄二は動じた様子もなく、ベットから降りて部屋を出ていこうとした。
けれど室内にいるため、自分が履物を穿いて無いことに気付くと香奈穂に向かって、
靴はどこ?
と先程とはうってかわって抑揚のない声で聞いて来た。
香奈穂がしどろもどろになりながら答えると、雄二は言葉なく歩き出した。
扉の前の先生に呼び止められ、体調について受け答えしたあと部屋を出ていくまでの間、香奈穂は身動き一つ出来なかった。
先生は雄二を見送るとさっきと同じく机に戻り仕事を始めた。
香奈穂は恐る恐る先生に聞いた。
「・・・あの・・・先生、何時から見てました?」
先生は少し考える素振りを見せると一言、
「・・・香奈穂さん、熱があるか計っていく?」
とだけ言った。
香奈穂は最初意味が分からなかったが、次第に雄二君から言われた言葉を揶揄しているのだと分かると、本当に熱が出そうな位に顔が赤くなった。