それから一ヶ月、時間はあっという間に過ぎた。
雄二と香奈穂の距離は変わった様子もなく、雄二の心に光りが戻って来ることはなかった。
・・・ただ、雄二はあの日倒れてから、段々と学校を休みがちになってしまった。
あと幾らとしないうちに、期末試験がやって来る。この時期のテストの成績は進路を左右する位に大事なものだ。
最近、雄二君は調子が良くないようでここ数日も欠席している。
そうでなくても、今の状態だと勉強自体に身が入らないと思う。
ただ雄二君の事も心配だけれど、私も人の事ばかり考えていられるほど余裕があるわけじゃない。
テスト準備期間中、部活はお休みだ。
私を含めて何人かが、放課後に教室で残って自習をしていた。
今回は国語と理科が難関で、覚えなきゃいけない所が沢山ある。
二時間位経ってきりも良かったので、今日は帰ることにした。
筆記用具を片付けていると後ろから声をかけられた。
その相手はクラス委員長だった。
普段あまり話さないので、なんだろうと思って話を聞くと、
「雄二君の家まで、一緒に授業のノートを届けに行ってほしいの。」
突然の申し出だった。
彼女は先生から、委員長として雄二君に授業のノートを届けるように頼まれたが、一人で行くのは不安なようだ。
先生にしても、わざわざ女子に頼まなくてもいいのに・・・
内気な彼女にすれば男子に頼むよりも、私に頼む方が楽だったのだろう。
私も断る理由はないので、彼女に付いていくことにした。