
木霊
夕焼けチャイムの
歌う声に
電線が分割する
路地裏の
狭い空を見上げる
(晩ごはんは何にしようか?)
(カレー、たべたい)
(おとといカレーにしたじゃない)
(ママのカレー、おいしいもん)
夕焼け小焼けと
染まる雲に
自転車母子の
笑い声が溶けて
風が地を這った先
(あちこち、痛いんじゃ)
(もう、そろそろ、死にたい)
(そこも、ここも、痛くて)
(もう、死にたいのじゃ)
物陰にゆらりっ、と
たれの影か?
もう死にたいと独り言つ
ことし御歳数えで百の
老婆の溜め息が、木霊する
(南無阿弥陀仏)
(南無阿弥陀仏)
(もう、死にたいのじゃ)
(南無阿弥陀仏、お迎えを)
夕焼け燃える、西方浄土も
夢に描いた、王道楽土も
(南無阿弥陀仏)
(南無阿弥陀仏)
虚しき祈り、と
木霊する、のだった
written:2017/11/02
elaborated:2017/11/03
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