ラヂオデパートと私

ロックバンド“ラヂオデパート”におけるギタリストとしての津原泰水、その幾何学的な幻視と空耳。

錯覚進行

2006-12-20 13:14:05 | 作詞作曲
 コード進行は、可能なかぎりIIm7/V9/I/I#dimの循環で行こうと思っている。ギターで色々と飾りが付くから、厳密にはこのヴァリエーションという事になる。
 ギターを弾いて口ずさむうち、言葉が微修正され、以下の暫定的構成が出来上がる。最後が[C']になっているのは、恐らく転調するであろうという予感から。ここまでに三日。ただ曲想が水面下にあり掴み所の無かった状態が長いので、手早く出来た曲とは云えない。

 雲雀よ雲雀

[Intro]

[A-1]
昔噺は明日の噂
歴史に描かれているのはきっと未来

年寄りは厭と貴方は叫ぶ
お祖母ちゃんそっくりな声音で叫ぶ

[B]
ゆうべ夢をみたよ
貴方も出ていたよ
私も出たらよかったかな
夢なら出ても許されたかな

[C]
一番の美女は惨めに死んで
二番めの美女は老いさらばえ
その次の美女は人を殺して
私のことだけ誰も知らない

一番の魔女は王子を盗み
二番めの魔女も王子を盗み
その次の魔女も王子を盗み
私のもとには蛙しかいない

雲雀よ雲雀、空の誰かに
この足許を照らしてと伝え
舞い降りてきて私の耳に
安心だからと教えておくれ
(繰り返し)

[A-2]
ごとごとを客車は躯を
どんな国まで運んでいくんだろう

かたかたと揺れる硝子には
何が映り何が透けているんだろう

[B]

[C]

[Solo]

[C']

 ソロにはさすがに違う進行を放り込みたい。[C]と[C']が半音違いだとしたら、どういう進行が考えられるか。出てきていないIVを投入するとして――ひとつ、IVsus4/IV/IVsus4/IV/IIIm6/IIIdim/IIIm6 /IIIdimというのを思いついた。内声音をふわふわと半音で上下させた後、その勢いで残りの音もずらしてしまう。感覚的には下がっているのにメロディはさっきより上がっているというこの進行は、面白い錯覚を生まないだろうか。IIIdimは、IIm7の半音上がりと共通音が多いから歌い出しへの伏線にもなる。まあ、採用するかどうかはわからない。

 で、これを僕はメンバーの前で歌うのである。小山が入ったばかりの時は気を遣ってテープに録っていたが、いつしか昔からの方式に戻ってしまった。太朗と小山には簡単なコードのメモを渡す。
 太朗は当初ルートで合わせるだけで、具体的なベースラインは次回までに家で考えてくる。彼なりの詩的なプロセスがあるのだろう。奥野は譜面もメモも用いない。代わりにいつも小さなレコーダーを回している。小山もレコーダーを回していることが多い。更に小山譜とでも称すべき奇妙なメモをとっている。ルートに対して何度の音を歌うのかを、数字で書き込んでいるようだ。バンドの中でギターが何を弾くかは、実は最後に決まる。ウワモノが一つしか無いバンドなので、ドラムとベースを構築したのち、足りない所を補うという考え方で弾いている。
 リハーサルを繰り返しながら形にしていく、きわめて原始的な方式でラヂデパの楽曲は出来ている。二十四日にこの曲は間に合わないだろうね。

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