ラヂオデパートと私

ロックバンド“ラヂオデパート”におけるギタリストとしての津原泰水、その幾何学的な幻視と空耳。

サマソニ

2009-06-21 00:30:00 | ライヴ
 宣伝戦略に踊らされているだけのような気もするのだが、エンタメ市場meetsなるチケット販売業者による、サマーソニック2009の公募にエントリーした。
http://emeets.jp/pc/
 個人的には公募も審査も好きではない。僕がいま小説家を名乗れているのは、学生時代にアルバイトとして書いた無記名の記事の数々が、口コミで「あれはあいつ」と広まった、結果の結果の結果といったところ。たまさか得られた少女小説の仕事にも「これでもか」と心血を注いだ。
 当時の読者は子供だったから版元にとっては「市場」に過ぎなかったが、今は大人の読書人である。そして今なお津原を応援してくださる。この影響力は計り知れない。その恩恵に浴して生きている。振り返れば気が遠のくような道程だったが、自分には合っていたと感じて、運命に感謝している。

 もし僕が公募を前提に小説を書いていたなら、『妖都』も『ペニス』も『綺譚集』も、また『ブラバン』も生まれなかっただろう。より確実に受けるものを狙った筈である。

 閑話休題、審査対象はYouTube映像だというので、自分達が反省するための記録映像(普通の小さなデジカメで撮っている)を引っ張りだし、iMovieをマニュアル首っ引きで操作して曲ごとにまとめ、ぎりぎりアップロードが間に合い――と思ったら、〆切が延びていた。
 こういう後出しジャンケンがあるから、本当、公募は怖いし厭だ。エントリーしたのはファンの薦めがあったからだ。ラヂデパにだって僅かながらファンは居る。より素晴しいロケーションで我々の音楽を聴けたら、と願ってくださる。ここで馬力を出さなかったら芸人失格というもの。

 そんな泥縄な事情なんでエントリーした画像は悲惨。でも音は、低音には欠けるものの、そう悪くなかった。さすがソニー。
 真っ当な審査を受けられるのは――この種の事情もあとから伝えられたのだが――二百位以上とのこと。はたとサイトを確認すると、ごくごく身内の投票だけで五百位台に乗っかっている。しかも同一バンドに「毎日一回」投票できるらしい。うわ、微妙に諦めにくい。

 バンドの長い歴史のなか初めて一般公開する映像であり、常連各位に面白がっていただけたなら、精神的には充分なのだが――。もし「上手いじゃん」「佳い曲じゃん」と思われたなら、連日の御投票を賜われると、正直、滅茶苦茶嬉しい。ちなみにメールアドレスすら記入する必要はないのでノーリスクです。
 投票できるのは7/6迄で、毎日0:00を過ぎると「投票する」ボタンが出てくる仕組のようだ。
http://emeets.jp/pc/artist/2305.html

 厭だ厭だ、でも投票して、というのは明らかに自己矛盾で、以上の記述を不快に思われた方もいらっしゃろう。見る角度によっては全く辻褄が合っていないのを自覚している。澄みません。
 今も毎日練習を欠かさない僕は、ライヴには自信がある。だから、せめてライヴ審査は受けたい。そういう吐露だ。

 映画『バベットの晩餐会』で、原作ではチョイ役に過ぎない音楽教師がこう云う。
「世界中の芸術家の叫び声が聞える。私に発表の場を。発表の場を」
 奇蹟的に『妖都』が出版される以前の僕は、毎晩のようにヴィデオでこれを観ては、泪滂沱としていた。今、ふと思い出した。
 素晴しい映画だからぜひ御覧ください。ものを創る人は全員、観てほしい。
 最後の最後にまた話が逸れちゃったよ。

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