ラヂオデパートと私

ロックバンド“ラヂオデパート”におけるギタリストとしての津原泰水、その幾何学的な幻視と空耳。

コードの基礎の基礎

2006-12-03 18:02:08 | 作詞作曲
 IIImの代わりにIII、IImの代わりにII7――などと前項で書いたが、高校の頃の僕に理解できただろうかと反省したので、より基礎から解説する。
 ピアノの白鍵、すなわちドレミファソラシだけで構成された基本コードを列挙すると、Cmaj7、Dm7、Em7、Fmaj7、G7、Am7、Bm7(b5)となる。これらをダイアトニック・コードと呼ぶ。
 ややこしげなコード名ばかりなのは、学校で習う三音によるコードではなく四音のコードを書いているからで、曲にとって不要なら四音も重ねる必要はない。一番上に重なっている音を省いてみよう。C、Dm、Em、F、G、Am、Bm。だいぶ理解しやすくなった。
 これらのコードだけで作られた曲は、ピアノの白鍵だけで伴奏できる。そしてそういう名曲は数限りない。ただし歌い手の声域がキイCやキイAmに合っている場合の話であって、どうにも最低音が出ないなんて時には、やむなくドの位置を動かすことになる。悪夢の黒鍵が登場する。でもギターなら心配無用。カポを付ければいい。ただ最高音がぎりぎり出ないという場合は、例えば10フレットにカポを付けるよりは、チューニングを弛めるかコードを書き直したほうがいいね。
 いちいち書き直すのが面倒な僕らは、A、B、Cの代わりにI、II、IIIと記しておくことが多い。そしてkey=Cなどと添え書きする。するとIはC、IVはFだとわかる。IImとあったらDmだ。この方式に慣れると、曲の構造が即座に把握できるようになって良いよ。錯覚を起こしやすいABC表記が不親切に思える程。

「先生、ここにはパワーコードが出てきませんが」
 いい質問です。ちなみに小父さんが少年の頃、パワーコードという言葉は存在しなかった。でもなんだかはわかるよ。CにG、DにはAを重ねた、時にはその上にもオクターヴ上のCやDも重ねたあれだね。
 あれには二種類あると小父さんは思うんだ。まず作曲者の意図として、最初から二音だけで構成されたコードである場合。ヘヴィメタルのリフなんかは、マイナーもメジャーもへったくれもないぜって調子の、この二音コードの連続って事が多い。
 もう一つは、本当はImaj7だったりVIIm7(b5)だったりするのを、ギタリストがわざと下半分しか弾いてない場合。細かい話は歌やベースを聴いてればわかるだろう、というこの投げやりな姿勢が、実は小父さんは好きだ。音楽なんて錯覚の積み重ねなんだから。
 それに、こっちは親切のつもりでBm7(b5)をきっちりと弾いてるとするじゃないか。なのに「細かすぎて何を弾いてるかわかんないよ」と抜かすメンバーが現れたりするんだ。仕方なく「これは必要だ」って音以外を抜いていったら、けっきょくパワーコードになっちゃった、なんて事はよくある。いやパワーコードならまだましで、真ん中の一音だけになっちゃう事もある。音程を発さない、いわゆる空ピックで済ます時や、弾かない事さえある。
 弾かないってのも、音楽における重要な選択肢なんだ。

 小説に似てるね。小父さんの稼業は小説を書いて売る事なんだ。
 小父さんは昔から、登場人物の容姿をあまり描写しない。でも口調や行動から、読者の頭の中には確固たる像が出来上がる。大概は好もしいイメージで。
 書かずにそれが出来るんだったら、そのほうがいいと思わないか?

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