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私立高校が特進、選抜コースを置く理由

◆学校経営に不可欠な2点のため
都立高校にはなくて、私立高校にあるもの。それは「コース分け」

都立でも「国公立クラス」などを設けている学校もあるが、入学試験を受ける時点では受験生全員が同じ条件で同じ試験に臨む。
つまり、入学してからコースを選べるということだ。

私立高校は、受験するコースによって合格基準(テストの点や、単願&併願優遇の内申点)が異なる。
入学前の時点で、学力の上下によってコースを振り分けられているわけだ。
入学試験のデキいかんで、上のコースで合格できる場合もある。

「コース分け」は、特に中位以下の学校に多い。
開成や巣鴨、城北、豊島岡女子といった上位校にコース分けはない。

◆1つの高校に、偏差値17ちがう生徒が集う
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出典:旺文社2020年度入試用 高校受験案内より>

もっとも偏差値の高いコースと低いコースを比較し、その差が大きい順に並べた。
普通科のみで比較している。工業・商業・スポーツ科などの専門学科は除外してある。

なぜこのように「コース分け」をするのか。
理由の1つめは多くの人に受験してもらい、多くの生徒に入学してほしいから。

公立中学校と違い、高校は同じような学力レベルの子が集まる。
偏差値50レベルの高校なら、50~55くらいの子がほとんどだ。

私立高校も本来はそうあるべきだろうが、それだと偏差値40レベルの高校には偏差値40くらいの子しか集まらない。よって大学合格実績も出せない。だから受験生のレベルも毎年変わらない。ということになる。

受験生の数は、偏差値50に近いほど多い。
もし偏差値40のAコースと、偏差値45のBコースを用意すれば、対象となる受験生レベルは偏差値38~48くらいに広がる。
コースを複数用意すると、その高校に適した生徒の数がどかんと膨れ上がるのだ。

例えば豊島学院は4コースあり、最上位のスーパー特進は偏差値60くらいの子も受ける。
最下位の楚普通進学類型なら偏差値40くらいの子も受ける。単願なら学力は無関係だ。通知表だけ良ければいい。
すると全体の66%程度は豊島学院を受験できる層になる。
もちろん通える場所に住んでいなければならない。が豊島学院は池袋駅から歩いていけるので、埼玉県から受験する子も少なくない。

するとたくさんの受験者が集まり、年度によって入学者数にも大きな差ができる。
300人ほど入学の年もあれば、500人ほど入学する年もある。これによってどんな問題が生じるだろうか。考えてほしい。
問題なのは生徒にとって、である。学校運営側としては大きな問題ではない。
(過去、この回答は記事にしたはず)

◆もう1つの理由は合格実績
さらに1つ、複数のコースを置く理由がある。
それは、指定校推薦を下のコースの子に使わせるためだ。

例え話をする。
Z高校には2つのコースがある。
偏差値50のXコースと、偏差値60のYコースだ。

そしてこの高校には法政大学や中央大学の指定校推薦がある。
ただし高校内のルールで、Yコースの生徒は指定校を含む推薦で大学受験は不可」となっている。
高校としては、デキる生徒には複数の私立大学を受け、1つでも多くの「合格実績」を集めたいわけだ。進学実績は1名で1つの大学だが、合格実績なら1名で5でも10でも出すことができる。デキる子は指定校推薦使わなくても合格できる。

そうすれば、余った指定校推薦を「本来なら法政大学に一般入試では受かりそうもない Xコースの子」に使わせることができる。
結果、Z高校としては同じ「法政大学合格 1名」とカウントできるのである。

こうして
・デキる子は一般入試で合格実績を稼がせる
・不出来な子は指定校推薦で現役合格させ、現役合格率アップに貢献させる
という、高校にとってベストな合格者生産法が完成した。

しかし、ここに落とし穴がある。
特に授業料や入学金免除の恩恵を受けたYコースの特待生は、センター利用も含めると10以上の大学に出願する(ように高校から指示される)ことも珍しくない。
この出願にかかる費用は、もちろん家庭で負担する。
入学金20万円を免除されても、受験料だけで25万円かかるのなら金銭面では損だ。

◆都立高校ではどうなのか
都立高校ではこういうことはできない。

抜群に学力が高く、難関国立大にも受かりそうな子がいたとする。仮に W子 としよう。
でもそのW子は入試の緊張感に弱く、通知表の点はいいが模試などではイマイチ。

通知表の評定がいいので、指定校推薦で大学を決める。そうすると国公立大は受けられない。
指定校推薦は入学することが前提なので、他の大学を受けることはNGなのだ。

高校としてはW子に多くの合格実績を稼いでもらいたい。でも都立高校ではそれを生徒に強制できない。
W子は、より高いレベルの大学より、安全に受かる大学の方がいいという価値観なのだ。

そういうジレンマが毎年毎年、生まれている。

◆私立高校が複数コースを置くことにデメリットはあるか
もちろんある。
「高校公認 目に見える学力格付け」がなされるという点である。

何組が特進コースで、何組が普通コースなのかは生徒たちはみな知っている。
分かりやすい言い方をすれば、誰がお利口クラスで、誰が馬鹿クラスなのかが明確なのだ。もちろん都立高校ではこれはない。
都立は、誰が2次募集で入ったかすら厳格に伏せるのだ。
生徒間同士で情報交換しない限り、全員が学力格付けされることはない。

クラスは違っても、部活や委員会などは一緒になる。
「お前は馬鹿クラスのくせに、そんな偉そうにすんなよ」というセリフを言う奴も、残念ながら存在するのだ。
"馬鹿"のレッテルを貼られた者がはい上がっていく。
もちろん不可能ではないが、皆さんは蛇喰夢子ではない。実際は難しい。

そういう雰囲気のない高校ももちろんある。
が、心の内側でどう思っているかは分からない。
私だったら、馬鹿クラスと呼ばれる・思われるような所にはカネもらっても入りたくはないね。

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