少年トッパ

<本の感想> 『サウスバウンド』

●『サウスバウンド』奥田英朗 (角川書店)
http://www.kadokawa.co.jp/sp/200506-05/index.html

 あー、面白かった。これほど一気に読み終えてしまいたいと思った本は久々じゃないかな。どんな風に話が進むのか気になって仕方なかったもん。

 主人公の父親は元過激派だ。なので50代かと思っていたら、なんと僕と同じ44歳じゃん。すっかり学生運動が下火になった時代に大学生になった年代だ。シラケ世代、なんて言われたものである。もう少し下の年代は「新人類」って呼ばれたもんだ。
 この父親は、あらゆる面で国家権力に刃向かい、資本家を嫌い、ブルジョアを蔑視する。その言動は、ひたすら豪快で爽快で、なおかつ思いっきりハタ迷惑だ。振り回される家族は、なんだかんだ言いつつも父親の磊落さに惹かれ、行動を共にする。そして、自由に生きることの素晴らしさを身体で覚えていくのである。

 終盤で興味深いのは、市民運動団体にはそっぽを向いていた父親が、右翼とは仲良くなってしまうことだ。そういう気持ちは、よく分かるような気がする。人が誰かに共感を抱く場合、それは相手の思想信条に惹かれるからではない。人となりや人柄に惹かれるものなのだ。そこには右翼も左翼も関係ない。ただし、やや乱暴な言い方になるが、左翼っぽい思想の持ち主の方が「群れる」ことに対して積極的だ。「個」を基準に生きる者にとっては「共闘しましょう」という物言いが鬱陶しく思えるのは当然だろう。そこには「打算」が透けて見えるのだから。

 ま、僕の感想なんてどうでもいいから、今すぐ買って読んでみてくださいませ。奥田英朗の本は『イン・ザ・プール』と『空中ブランコ』もオススメよ。

コメント一覧

トッパさん
かつきさん、はじめまして! 確かに父親と同世代
ではありますが、あの行動力の1億分の1も持ち合わ
せておりません(笑)。

トラックバックありがとうございます。こちらもト
ラックバックさせていただきますね。
かつきさん
http://ameblo.jp/mousui/
はじめまして。
上原家の父親世代の方の感想だと、父親のほうが気になる小説ですよね。なるほどなあ、と読ませてもらいました。
TBさせてくださいね。
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