少年トッパ

『チェ 28歳の革命』『チェ 39歳 別れの手紙』の感想

 チェ・ゲバラが革命に殉ずる姿を描いた2部作。前編はキューバ革命を成功させたところで終わり、後編ではボリビアでの日々が描かれる。

 とにかく、ものすごい力作であることは間違いない。完成度も高いし、立派な作品であることに異論を唱える気は毛頭ない。しかし、肝心なことが描かれていなかったので、どうも物足りなさを感じてしまうのだ。

※お気に入り度→★★★★☆
※公式サイト→http://che.gyao.jp/
 何が描かれていなかったかというと、要は「なぜゲバラは革命の志士となったのか」である。
 もちろん、当時のキューバ(を含む、いわゆる後進国)の人民が貧困に苦しんでいたことは分かるし、その中で革命の気運が高まっていったことも理解できる。しかし、ゲバラ個人は、どんなきっかけによって、その中に身を投じたのか。どんな出来事が彼を駆り立てたのか。そこのところが、この映画では伝わってこないのだ。まあ、過去に読んだ本の中で多少のことは知ってるけど、それでも改めて映画の中で描いてほしかったと思う。
 引き合いに出すのはナンだが、たとえば『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』では、冒頭で1時間近くを費やして、当時の時代状況や学生たちの心情を説明していた。ナレーションや資料映像を多用したことで安っぽい再現ドラマのような雰囲気になったが、それはひとえに「観客に理解させるため」だったのだろう。一方、この『チェ』2部作は「説明」を最小限にとどめ、極めてストイックに出来事を綴っていく。それはそれで美意識が感じられるものだが、結果的に敷居が高く感じられる映画になってしまったのではないだろうか。一見さんお断り、みたいな。
 なので、チェ・ゲバラのことを何も知らない若者が観ても理解できるような構成にしてほしかったと思う。まあ、そういう人がこの映画を観るかどうか分からないけど。

 とはいえ、印象に残るシーンはいくつもある。特に、喘息に苦しみながら森の中で過ごすところ。自分の中に弱さを抱えていたからこそ、ゲバラは弱き民衆に優しかったし、革命に成功して浮かれる部下を戒めたのだろう(前編のラストシーン、高級車を略奪した者を叱るシーンは秀逸)。人間かくあるべし、と思った。
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