「いつかきっと」を夢見てる

「この子は普通に育たない」と言われたのは、もう随分昔。
そして、「5歳を過ぎても一言も出ないと、その後の言葉の獲得は難しい」と言われた５歳はとっくに過ぎた。

ぶーちゃんの脳の萎縮で一番目立つ部分は、俗に言う言語を司る場所だった。
大人がその部位にダメージを受けると、まず言葉を操ることは出来なくなる事がほとんどらしい。
でも、ぶーちゃんはまだ小さいから「刺激を与えて」発達を促せば、もしかしたら別の部位がその代わりとなって動き出すかもしれないと言われたんですよね。
それはわずかな可能性かもしれないけれど、その可能性を信じて私たちは過ごしてきた。

ちなみに１０歳になったぶーちゃんは、今も一言も意味のある言葉は話さない。
あーあー。うーうー。ん～・・・だの、バリエーション豊かな喃語を操りはするんですがねぇ・・・

でもここ数年、随分言葉の理解力が出てきたと思う。
ちょっとちょっとしたことに、反応があるんですよね
それは日常のこんな些細な事からも感じている。

お風呂に入って遊ぶおもちゃは４つあります。
かえる、あひる、ミッフィーちゃん、何故かちびまる子ちゃん（爆）。
この４つのおもちゃが、手すりの部分にちょこんと並んで置かれていて、ぶーちゃんはそのおもちゃを取っては湯船に落としてを繰り返して遊んでいる。

ぶーちゃん、ミッフィーちゃんはどれ？

その問いかけに、ぶーちゃんミッフィーを取って湯船にドボン。

ぶーちゃん、かえるは？

同じく、かえるのおもちゃを取ってドボン。

お片付けしてね～

すすす・・・と、おもちゃを手すりに綺麗に乗せる。

言葉は無いが、良い感じでやりとりできていて私は嬉しい。

そんな中、私が良くやること。

ぶーちゃん、「ぶーちゃん」は何処？

自分のほっぺをつんつんつん。

ぶーちゃん、「ママ」は何処？

自分のほっぺをつんつんつん。

えー？？ママ何処よ～？？と半べその私など気にもせず、ぶーちゃんつんつんつんつん自分のほっぺをつついてる。


・・・。

・・・・・・

ま。こんなもんですよねぇ・・・
えぇ、いいんです。
そんなことではめげませんよ～。

そんなことを繰り返していた、つい先日。
お風呂で相変わらずの問いかけを私はしていた。

ぶーちゃん、「ぶーちゃん」は何処？

自分のほっぺをつんつんつん。

ぶーちゃん、「ママ」は何処？

じとーっと私の顔を見ていたぶーちゃんが、私のほっぺをつんつんつん。



ぶーちゃん、ぶーちゃん、「ママ」は何処？

ぶーちゃん、再び私のほっぺをつんつんつん。

疑り深い私は、もう一つ質問しちゃってみた。

ぶーちゃん、「ぶーちゃん」は何処？

そうしたら、ぶーちゃん、自分のほっぺをつんつんつん。


あぁ・・・幸せだ
言葉は無くても、ぶーちゃんの指が私をこんなにもうっとりとさせてくれる。

いつの日か「ママ」と呼んでくれるその日が来るのを、私は夢見るように待ち続けよう
その日が来るのを信じてる。