reasons 時の理由
第80話 端月act.2-another,side story「陽はまた昇る」
もう何度目かの部屋、だから「いつも通り」だと解かる。
間取りは自分の部屋と変わらない、けれど片づけ方が潔癖に整っている。
ベッドカバーは皺一つない、テレビのリモコンも定位置が決められて本も必ず書棚にある。
どこまでも几帳面で生活感が希薄、そのくせ温かい。こんなふうに部屋は性格が出るのかもしれない?
―なんか居心地いいな、伊達さんの部屋って…賢弥の部屋とすこし似てる?
ほら、大学の友達を想いだして不思議になる。
あの明るい屈託ない笑顔と沈毅寡黙な男が似ているなんて不思議だろう?
大学生と警察官、それも特殊部隊のエリートに共通点を探しながら周太は尋ねた。
「あの、伊達さん、お手伝いできることありますか?」
こんなとき賢弥なら「じゃあ一緒に作ろうか」と笑ってくれる。
けれどシャープな瞳は穏やかに微笑んだ。
「座ってろ、本でもテレビでも好きに使え、ベッドで横になってても良いぞ?」
やっぱり「座ってろ」なんだな?
こんな返事もいつも通り変わらない先輩に微笑んだ。
「ありがとうございます、じゃあ本をお借りして良いですか?」
「いいぞ、」
低く透る声に台所の音たち聞えてくる。
ことこと包丁リズミカルに手慣れて響く、そんな今が不思議だ。
―あの伊達さんの部屋でお雑煮なんて、ね?
冷静沈毅、優秀、隙がない。
そんな評価の先輩と組んで正直「息苦しい」と想っていた。
けれど今は居心地が良い、こんなこと3ヶ月前は想像つかなかった。
―英二の時もそうだったな、初対面は大嫌いで、
書棚を眺めながら俤ひとつ見つめてしまう。
今ごろは奥多摩の神社で巡回しているはず、その時間を想いながらも目が留まった。
『発酵工学の基礎―実験室から工場まで』
『発酵―ミクロの巨人たちの神秘 』
並ぶ書名が意外だ、けれど納得も出来る。
だって話は聴いたばかりだ?
『俺の家の酒だ、俺は酒を呑むと長いぞ?何代も酒を吸ってる家の人間だからな、』
造り酒屋の長男、それなら当然の蔵書かもしれない。
そして気づいた事に訊いてみた。
「伊達さんは発酵工学を専攻したんですか?」
確か工学部出身と聴いている、そのとおり低い声が透った。
「ああ、湯原も興味あるか?」
「学生時代に講義で聴きました、友達もお酒を造ってて、」
答えながら新しい面に嬉しくなる。
きっと家業のために伊達は選んだ、そんな推測に笑ってくれた。
「そっか、友達も造り酒屋とかなのか?」
「普通の農家なんですけど、お祭で遣うために造るそうです…伊達さんはお家のために醸造工学なんですか?」
そういう事なんだろうな?
尋ねた先、低い声は穏やかに笑った。
「後を継ぐつもりだったからな、弟も農学部で酒のことやってる、」
言われた言葉に納得しながら気づかされる。
やっぱり伊達は父と似ているかもしれない?その推察から尋ねた。
「あの…伊達さんはどうして警察官になったんですか?」
「スカウトだな、」
さらり応えてこちら来てくれる。
携えた盆から湯気ゆるやかに温かい、その碗をテーブルに置きながら続けてくれた。
「射撃部の試合で声かけられたんだ、その腕を活かさないのは勿体無いってな。それで誘いに乗ってみた、」
そんなふうに父も声を掛けられたのかもしれない?
そこにある本音を聴きたくて尋ねた。
「でも、いつかご実家でお酒を造るんでしょう?いつまで警察にいるとか決めてるんですか、」
「そうだな、」
相槌してくれながらデスクから椅子を携える。
そのままテーブルに据えて腰下ろすと穏やかに微笑んだ。
「食うぞ、冷めたら餅が硬くなる、」
ほら、また食事のこと気にしてくれる。
こんなところは書棚の本たちと相応しい、それが何か嬉しく席についた。
「いただきます、」
合掌して箸をとり、椀の中が物珍しい。
ささがき牛蒡に鶏肉と切り餅は見かけるだろう、けれど芹と蕨が入っている。
山菜が入っている雑煮は見たことが無い、その初めての碗へ口つけ微笑んだ。
「おいしいです…鶏だしなんですね、山菜も入って、」
実家の雑煮とはだいぶ違うな?
そんな感想に穏やかな眼差し訊いてくれた。
「山形は鶏だしの醤油が多いんだ、山菜は内陸部だけらしいが。湯原の家はどんなだ?」
「いりこ出汁で醤油です、丸餅に蕪を入れます、」
答えながら家が懐かしくなる、そして少し心苦しい。
だって今年も母を独りきりで年越させてしまった。
―お母さん、ひとりでお雑煮つくったのかな…メールは入れたけど電話も出来なくて、
自分の年越は警備だった、それも「特別な場所」は電話ひとつ自由に出来ない。
ようやく帰った今は午前3時を過ぎてゆく、もう母は眠っているだろう。
どうか明日すこし埋合せできたらいい、そんな思案から気になり尋ねた。
「あの…伊達さんも、明日はお母さんの所に帰るんですか?」
こんなことを訊くのはルール違反かもしれない?
なにより伊達の家庭事情では怒らせても当り前だ、それでも自分事に気になってしまう。
だって独りは寂しい、その孤独を知るからこそ見つめた真中でシャープな瞳すこし笑った。
「俺はここで寝正月だ、多分あっちは父が来るだろ?」
やっぱり会いに行かない、それでも笑って教えてくれた。
その微笑が前よりずっと柔らかい、こんな変化を見せながら伊達は携帯電話を開き笑った。
「弟からメールだ、こんな時間まであいつ起きてんのか、ほら?」
笑ってこちらへ画面向けてくれる。
その添付された写真にため息ひとつ微笑んだ。
「…すごい雪ですね、きれい、」
深々、白銀あわく夜へ雪が降り積もる。
深い銀色に町は大気から静まらす、そんな写真に先輩は微笑んだ。
「1月は1mから積もるんだ、きれいな分だけ雪下ろしとか大変だけどな、」
大変だ、そう言いながらも瞳は穏やかに笑っている。
いま故郷を懐かしむ、そんな眼差しに問いかけを戻した。
「雪は大変だけど帰りたいですか?ご実家でお酒を造るために…警察を辞めて、」
この伊達がいつか辞める、そんな未来は3ヵ月前なら信じられない。
けれど今はもう納得してしまう、そう見つめるまま二重瞼の瞳やわらかに笑った。
「夏までは辞める予定も薄れてたよ、俺も染まってるから、」
染まってる、なんて哀しい言葉だ。
その意味が伊達の左手首、リストカットの傷痕たちに見えてしまう。
『人殺しが作った飯はうまいか?』
そう問いかけた声も眼差しも忘れられない、あれは帰られない傷だろう。
たぶん傷は最初に狙撃した瞬間を刻まれて、そのまま酒造りを諦めかけている。
そんな想いに左手首の理由は見えてしまう、だからこそ支えたくて笑いかけた。
「伊達さんの作ったお酒、僕にも飲ませてくれますか?」
自分がすることを待つ人がいる、それが一番の励ましだ。
それは自分こそ解かる、だって自分も待ってくれる人がいる。
『周太、絶対に大学院で一緒にやろうな?俺の共同研究者は周太がいいんだ、』
『湯原くん、ずっと一緒に勉強しようね。森林学のてっぺんを探しに行くの、約束よ?』
いま二人も自分は待たせている、その道へ立つことを母も待っている。
父も祖父も待っているだろう、そこでは田嶋教授も待ってくれている。
『君のお父さんは学者の道に立つべき人だと信じている、君を見ていると信じた通りって想えるよ?君のなかに生きて馨さんも湯原先生もここに帰って来たって、』
ずっと父を信じて待っていた人、あの想いに応えたい。
こんな自分だから目の前の人にも願いたくて、そんな想いに訊かれた。
「湯原は俺が良い酒を作れると想うのか?人殺しの手でも、」
ほら、傷また開かれて軋みだす。
この痛みは涯無いのかもしれない、それでも生きてほしくて微笑んだ。
「伊達さんのお雑煮すごく美味しいです、お酒もきっと美味しいと思います、」
あなたの手は作れる、だってこんなに温かい。
それが出逢ってから自分をずっと支えてくれた、その感謝に口開いた。
「お酒は発酵するの今日明日じゃありませんよね、時間を懸けないと出来ないでしょう?それはお酒を造る人の時間かもしれません、」
発酵工学を専修した相手には釈迦に説法かもしれない。
それでも今想うこと伝えたくて声にした。
「あのラーメン屋もそうです、父の事件の…佐山さんのラーメンが温かい味なのは佐山さんが過ごした時間の味だと思うんです、だから伊達さんのお酒はきっと美味しいです、」
伊達が生きてきた時間は美しいばかりじゃない、普通じゃない苦痛も踏んできた。
だからこそ醸せる酒がある、そう信じた願いに笑ってくれた。
「酒には佳い水が要るんだ、佳い水には良い森が要る。湯原は森林学だったな?」
ほら解ってくれた、解って応えようとしてくれる?
きっと叶うと信じたい、その願い年の初めに笑いかけた。
「僕も必ず樹木医になります…伊達さんのお酒、楽しみにしていますね?」
伊達がSATを除隊することは容易くない、それくらい解かっている。
優秀な人材は簡単に手放してはもらえない、辞めると言えば様々な方法で引留められるだろう。
だからこそ父は学問の場所に帰られなかった、それくらい簡単じゃないと解るけれど願い叶えてほしい。
どうか待っている場所へ時間へ帰ってほしい、それは平凡で普通の夢だからこそ愛しくて、だから支えたい。
(to be continued)
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第80話 端月act.2-another,side story「陽はまた昇る」
もう何度目かの部屋、だから「いつも通り」だと解かる。
間取りは自分の部屋と変わらない、けれど片づけ方が潔癖に整っている。
ベッドカバーは皺一つない、テレビのリモコンも定位置が決められて本も必ず書棚にある。
どこまでも几帳面で生活感が希薄、そのくせ温かい。こんなふうに部屋は性格が出るのかもしれない?
―なんか居心地いいな、伊達さんの部屋って…賢弥の部屋とすこし似てる?
ほら、大学の友達を想いだして不思議になる。
あの明るい屈託ない笑顔と沈毅寡黙な男が似ているなんて不思議だろう?
大学生と警察官、それも特殊部隊のエリートに共通点を探しながら周太は尋ねた。
「あの、伊達さん、お手伝いできることありますか?」
こんなとき賢弥なら「じゃあ一緒に作ろうか」と笑ってくれる。
けれどシャープな瞳は穏やかに微笑んだ。
「座ってろ、本でもテレビでも好きに使え、ベッドで横になってても良いぞ?」
やっぱり「座ってろ」なんだな?
こんな返事もいつも通り変わらない先輩に微笑んだ。
「ありがとうございます、じゃあ本をお借りして良いですか?」
「いいぞ、」
低く透る声に台所の音たち聞えてくる。
ことこと包丁リズミカルに手慣れて響く、そんな今が不思議だ。
―あの伊達さんの部屋でお雑煮なんて、ね?
冷静沈毅、優秀、隙がない。
そんな評価の先輩と組んで正直「息苦しい」と想っていた。
けれど今は居心地が良い、こんなこと3ヶ月前は想像つかなかった。
―英二の時もそうだったな、初対面は大嫌いで、
書棚を眺めながら俤ひとつ見つめてしまう。
今ごろは奥多摩の神社で巡回しているはず、その時間を想いながらも目が留まった。
『発酵工学の基礎―実験室から工場まで』
『発酵―ミクロの巨人たちの神秘 』
並ぶ書名が意外だ、けれど納得も出来る。
だって話は聴いたばかりだ?
『俺の家の酒だ、俺は酒を呑むと長いぞ?何代も酒を吸ってる家の人間だからな、』
造り酒屋の長男、それなら当然の蔵書かもしれない。
そして気づいた事に訊いてみた。
「伊達さんは発酵工学を専攻したんですか?」
確か工学部出身と聴いている、そのとおり低い声が透った。
「ああ、湯原も興味あるか?」
「学生時代に講義で聴きました、友達もお酒を造ってて、」
答えながら新しい面に嬉しくなる。
きっと家業のために伊達は選んだ、そんな推測に笑ってくれた。
「そっか、友達も造り酒屋とかなのか?」
「普通の農家なんですけど、お祭で遣うために造るそうです…伊達さんはお家のために醸造工学なんですか?」
そういう事なんだろうな?
尋ねた先、低い声は穏やかに笑った。
「後を継ぐつもりだったからな、弟も農学部で酒のことやってる、」
言われた言葉に納得しながら気づかされる。
やっぱり伊達は父と似ているかもしれない?その推察から尋ねた。
「あの…伊達さんはどうして警察官になったんですか?」
「スカウトだな、」
さらり応えてこちら来てくれる。
携えた盆から湯気ゆるやかに温かい、その碗をテーブルに置きながら続けてくれた。
「射撃部の試合で声かけられたんだ、その腕を活かさないのは勿体無いってな。それで誘いに乗ってみた、」
そんなふうに父も声を掛けられたのかもしれない?
そこにある本音を聴きたくて尋ねた。
「でも、いつかご実家でお酒を造るんでしょう?いつまで警察にいるとか決めてるんですか、」
「そうだな、」
相槌してくれながらデスクから椅子を携える。
そのままテーブルに据えて腰下ろすと穏やかに微笑んだ。
「食うぞ、冷めたら餅が硬くなる、」
ほら、また食事のこと気にしてくれる。
こんなところは書棚の本たちと相応しい、それが何か嬉しく席についた。
「いただきます、」
合掌して箸をとり、椀の中が物珍しい。
ささがき牛蒡に鶏肉と切り餅は見かけるだろう、けれど芹と蕨が入っている。
山菜が入っている雑煮は見たことが無い、その初めての碗へ口つけ微笑んだ。
「おいしいです…鶏だしなんですね、山菜も入って、」
実家の雑煮とはだいぶ違うな?
そんな感想に穏やかな眼差し訊いてくれた。
「山形は鶏だしの醤油が多いんだ、山菜は内陸部だけらしいが。湯原の家はどんなだ?」
「いりこ出汁で醤油です、丸餅に蕪を入れます、」
答えながら家が懐かしくなる、そして少し心苦しい。
だって今年も母を独りきりで年越させてしまった。
―お母さん、ひとりでお雑煮つくったのかな…メールは入れたけど電話も出来なくて、
自分の年越は警備だった、それも「特別な場所」は電話ひとつ自由に出来ない。
ようやく帰った今は午前3時を過ぎてゆく、もう母は眠っているだろう。
どうか明日すこし埋合せできたらいい、そんな思案から気になり尋ねた。
「あの…伊達さんも、明日はお母さんの所に帰るんですか?」
こんなことを訊くのはルール違反かもしれない?
なにより伊達の家庭事情では怒らせても当り前だ、それでも自分事に気になってしまう。
だって独りは寂しい、その孤独を知るからこそ見つめた真中でシャープな瞳すこし笑った。
「俺はここで寝正月だ、多分あっちは父が来るだろ?」
やっぱり会いに行かない、それでも笑って教えてくれた。
その微笑が前よりずっと柔らかい、こんな変化を見せながら伊達は携帯電話を開き笑った。
「弟からメールだ、こんな時間まであいつ起きてんのか、ほら?」
笑ってこちらへ画面向けてくれる。
その添付された写真にため息ひとつ微笑んだ。
「…すごい雪ですね、きれい、」
深々、白銀あわく夜へ雪が降り積もる。
深い銀色に町は大気から静まらす、そんな写真に先輩は微笑んだ。
「1月は1mから積もるんだ、きれいな分だけ雪下ろしとか大変だけどな、」
大変だ、そう言いながらも瞳は穏やかに笑っている。
いま故郷を懐かしむ、そんな眼差しに問いかけを戻した。
「雪は大変だけど帰りたいですか?ご実家でお酒を造るために…警察を辞めて、」
この伊達がいつか辞める、そんな未来は3ヵ月前なら信じられない。
けれど今はもう納得してしまう、そう見つめるまま二重瞼の瞳やわらかに笑った。
「夏までは辞める予定も薄れてたよ、俺も染まってるから、」
染まってる、なんて哀しい言葉だ。
その意味が伊達の左手首、リストカットの傷痕たちに見えてしまう。
『人殺しが作った飯はうまいか?』
そう問いかけた声も眼差しも忘れられない、あれは帰られない傷だろう。
たぶん傷は最初に狙撃した瞬間を刻まれて、そのまま酒造りを諦めかけている。
そんな想いに左手首の理由は見えてしまう、だからこそ支えたくて笑いかけた。
「伊達さんの作ったお酒、僕にも飲ませてくれますか?」
自分がすることを待つ人がいる、それが一番の励ましだ。
それは自分こそ解かる、だって自分も待ってくれる人がいる。
『周太、絶対に大学院で一緒にやろうな?俺の共同研究者は周太がいいんだ、』
『湯原くん、ずっと一緒に勉強しようね。森林学のてっぺんを探しに行くの、約束よ?』
いま二人も自分は待たせている、その道へ立つことを母も待っている。
父も祖父も待っているだろう、そこでは田嶋教授も待ってくれている。
『君のお父さんは学者の道に立つべき人だと信じている、君を見ていると信じた通りって想えるよ?君のなかに生きて馨さんも湯原先生もここに帰って来たって、』
ずっと父を信じて待っていた人、あの想いに応えたい。
こんな自分だから目の前の人にも願いたくて、そんな想いに訊かれた。
「湯原は俺が良い酒を作れると想うのか?人殺しの手でも、」
ほら、傷また開かれて軋みだす。
この痛みは涯無いのかもしれない、それでも生きてほしくて微笑んだ。
「伊達さんのお雑煮すごく美味しいです、お酒もきっと美味しいと思います、」
あなたの手は作れる、だってこんなに温かい。
それが出逢ってから自分をずっと支えてくれた、その感謝に口開いた。
「お酒は発酵するの今日明日じゃありませんよね、時間を懸けないと出来ないでしょう?それはお酒を造る人の時間かもしれません、」
発酵工学を専修した相手には釈迦に説法かもしれない。
それでも今想うこと伝えたくて声にした。
「あのラーメン屋もそうです、父の事件の…佐山さんのラーメンが温かい味なのは佐山さんが過ごした時間の味だと思うんです、だから伊達さんのお酒はきっと美味しいです、」
伊達が生きてきた時間は美しいばかりじゃない、普通じゃない苦痛も踏んできた。
だからこそ醸せる酒がある、そう信じた願いに笑ってくれた。
「酒には佳い水が要るんだ、佳い水には良い森が要る。湯原は森林学だったな?」
ほら解ってくれた、解って応えようとしてくれる?
きっと叶うと信じたい、その願い年の初めに笑いかけた。
「僕も必ず樹木医になります…伊達さんのお酒、楽しみにしていますね?」
伊達がSATを除隊することは容易くない、それくらい解かっている。
優秀な人材は簡単に手放してはもらえない、辞めると言えば様々な方法で引留められるだろう。
だからこそ父は学問の場所に帰られなかった、それくらい簡単じゃないと解るけれど願い叶えてほしい。
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