指導者のもとに届く日本サッカー協会からの冊子があります。「Technical news」というものです。
こちらに、この前の全日の内容についての記事がありました。
興味深い内容なのでみんな必ず見ておいてください。ちょっと長文ですが…指導者にも4種の進め方のポイントとして読んで欲しいです。少し抜粋。
本当に長文です(もうクレームが来ましたw)
以下
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「1技術・戦術的な成果と課題」
日本が目指しているサッカーは、基本の質の高い選手たちが全員攻撃・全員守備のもと、チームのために攻守にアグレッシブにハードワークするようなサッカーである。そこでは当然ながらテクニックと攻守の関わり(量と質)が大切である。世界のサッカーのトレンドを見ても、優れた選手はポジションに関係なく、ピッチのエリアでやるべきプレーが攻撃でも守備でもできるフットボーラーとしての基本のベースを持っている。そのような選手になるためには、U12年代からゲームの中で攻撃と守備に関わり続け、テクニックと判断、そして良い習慣を身につけることが大切である。
Most impressive Team賞は、8人制サッカーの趣旨に沿って、攻守に両面において関わり続けるサッカーを志向しているチームの中から、最も印象に残ったチームを表彰する。今大会は丸亀フットボールクラブが受賞した。丸亀FCの選手は全員が適度な距離感を保ちながら関わり、意図的にボールを動かしながら、ゴールを目指していた。そして、後方の選手もどんどん人とボールを追い越していく。モビリティーで崩れたバランスを決めごとではなく、気付いた選手が埋めていた。守備でも切り替えを速くして、積極的に奪いに行っていた。選手個々が意図的に自然に攻守に関わるサッカーであった。
8人制サッカーにおいては、選手が関わると得をするのでおもしろい、逆に関わらないでいるとチームとして損をしてしまう、ということが分かりやすい。結果的に選手個々が意図的に、そして積極的に攻守に関わるようになり、その中でトライ&エラーを繰り返しながら学んでいると感じた。
(1)攻撃
8人制となり、ディフェンスの選手も攻撃に関わる事が多くなった。ディフェンスからの攻撃の組み立て、オーバーラップによる攻撃参加、そしてシュートなどのプレーが増えている。ディフェンスの選手によるシュート数は全体の22%であり、全得点の15%がディフェンスの選手によるものであった。このデータからも攻守分業ではなく、ディフェンスの積極的な攻撃参加が主流であることがわかる。
また、シュートに至るまでの崩しでは、個のドリブルやワンツーなどのコンビネーションによる中央からの突破、サイド攻撃からのクロス、カウンターなどの多彩な攻撃が見られた。
意図的に攻撃を組み立てるチームが主流になっている。参加チームは大きく4つのカテゴリーに分類できる。
①プレッシャーの中でも意図的に攻撃の組み立てができ、主導権を持って戦える
②ある程度意図的な組み立てができるが、相手のプレッシャーが高くなると、個々の技術の課題が多くみられる
③意図的な組み立てからゴールに向かおうとしているが、個々の技術や関わりの量が不足していてフィニッシュまでいくことが少ない。
④意図的な組み立てを志向せず、意図のない前線へのロングフィードやリアクションでの攻撃が主体で、ポジションの役割を明確に決めることで攻守分業になっている
柏レイソルU12、名古屋グランパスU12、ベガルタ仙台ジュニア、SALFUS、oRs、京都紫光サッカークラブ、丸亀FCなどは幅や厚みを使い、選手が関わりながら選択肢となり、意図的に組み立ててフィニッシュまでいけるチームであった。参加チームの大半が②か③のカテゴリーであり、③のグループでは全体的に前に急ぎ過ぎの傾向があった。スピードが上がり過ぎ、技術的なミスをしてしまう、観るものが少なく選択肢がなくなる、後方から関わる選手の時間が作れないなどのシーンが見られた。
課題として、サポートの幅や厚みが使えていない場合が多い。狭い中でボールを動かそうとするのではなく、幅や深みのあるポジショニングからスペースや時間を使って関わりたい。また、逆にピッチを広く使おうとしてシステムだけ幅をとろうとしていると、かえって選択肢にならなくて、関われない場合もある。関わりやすい距離感や局面での効果的な幅と深みが大切である。さらに、GKのビルドアップへの関わりも大切である。FPがGKと同じコースに入って、選択肢を増やせていない場合がある。DFの背後へのボールなども簡単にタッチにクリアしてしまうのではなく、GKを使うことで確実にマイボールにして攻撃につなげたい。
2つ目の課題としては、全体的に「ゴールに向かう」「ボールを前に運ぶ」意識があってもよい。ゴールに向かわない原因に、スペースへボールを運ばないことがある。パスだけを探してしまうのではなく、ドリブルの選択肢も持ちながらプレーしたい。前にスペースがあるなら少しでもボールを運ぶ、ファーストタッチで持ち出すなど、ボールを持ち出すことで状況を変えてパスコースをつくることができる。ターン技術と判断も課題である。前を向ける状況であるのに、ターンしないでボールを下げてしまう。攻撃方向を変えるためのターンや相手のプレッシャーがあっても、スクリーン&ターンをすることにもっとトライしてほしい。そのためにもオフの良い準備や、観ることが重要である。
課題の3つ目は、受け手がアクションを起こすことである。ボール保持者がフリーの状況なのに、前線のサポートの動き出しがなく、止まっている。出し手とのコミュニケーションがなく、出されたボールに反応して追いかけるといったリアクションのプレーが中心の選手もいる。相対的な身体能力の高さで勝負できるうちはいいが、上の年代に進んだ時に、ボール状況を観て自らアクションを起こす習慣がないと苦労するだろう。自らアクションを起こしてボールを受けようとすることは大切である。
最後の課題は、スローインである。自チームのスローインでボールを失っていることが多く、改善の余地は大きい。スローインについてはチームによって取り組みに大きな差があった。
(2)守備
多くのチームが積極的にボールを奪いに行き、ボールへのプレッシャーもあった。8人制サッカーで個々の守備の責任がはっきりしたためか、粘り強い守備やゴール前での身体を張ったディフェンスも多く見られた。特に優勝した新座片山FC少年団はファーストDFの決定とボール保持者への寄せが早く、周りの選手がそれに連動してボールを奪うアグレッシブな守備を行っていた。またSALFUSも一人一人の守備意識が高く、チャレンジ&カバーのポジションからハードワークして意図的にボールを奪っていた。
課題は、上の年代でもしばしば見られるが、ロングボールの対応とヘディングである。GKからのキックやゴールキックのときにポジションが相手につき過ぎてしまい、結果的にボールをかぶってしまう、バックステップしながらのヘディングになっている。中盤の選手も同じで、相手につき過ぎて最終ラインと離れ過ぎていることが多い。まずは正しいポジショニングが予想して対応したい。
もう一つの課題としては、ゴール前で簡単にシュートをうたれていることである。ファーストDFの決定とアプローチを速くして、ミドルシュートをうたせないようにしたい。
(3)GK
準決勝と決勝戦の3試合のデータを昨年と比較すると、GKが1試合にプレーする機会において、攻撃の機会が増え、守備の機会が減少した(攻撃では2.4回増加、守備では7回減少)。これはブレイクアウェイのプレーが減少したことによる。一昨年の11人制に比べると、プレー機会は1.4倍(攻撃+12.1回、守備+2.7回)と多く、8人制ではゲームの中でのGKのプレー機会が多い事は明らかである。1試合で1人のGKがプレーする機会は、1分32秒に1回であった。
プレーの分析では、攻撃の成果として攻撃参加の成功率が上がっている。これはパス&サポートとアンダーアームスローによるショートパスでの成功が増えた事による。パス&サポートのプレーで昨年との違いで目に付いたのは、相手の攻撃者が前線からプレッシャーをかけてきた時に、2列目の選手へパスをしていた。これは飛距離を出すというよりは、プレッシャーを回避するためにボールを浮かすキックが蹴れること、2列目の味方がよいポジショニングをとることにより、成功していた。GKを効果的に使うチームは、当然ながらFPのサポート準備の意識も高い。
攻撃面での課題は昨年と同様、ボレーキックの成功率が低いことである。ボレーキックの技術を向上させることが重要である。2つ目は、攻撃への関わりが少ないことである。パス&サポートの成功率は向上したが、味方選手がボールを保持している時の関わりを増やしていきたい。これはGKが味方をサポートしてパスの選択肢を増やすこと。ただし、GKがパスを引き出すことだけが関わりを持つということだけではなく。チームにとって有効な情報提供の声(フリー!逆が空いている!等)を出す事も大切な関わりである。3つ目は、ゴールキック。GKの攻撃参加のプレーとして、2番目に多いゴールキックをFPが蹴っているチームが16チームあった(昨年は10チーム)。GKのプレースキックが飛ばない事が原因であると思われる。GKの攻撃の機会が増えることと、攻撃を8人で行える優位性を生かしていくためにも、GKがゴールキックを蹴ることを推奨していきたい。解決するには、GKのプレースキックの技術を向上させることだろう。また、味方選手が素早く準備しているチームは、GKのキックが飛ばなくても成功していた。チームとして攻撃への切り替えを速くして、できるだけ良い準備をすることも重要である。
守備の成果としては、アンダーハンドキャッチでファンブルせずに、1回で安全確実につかむプレーが多く見られた。課題はオーバーハンドキャッチである。その中でも、頭上のボールへの対応ができていなかった。原因としては、単純にこの高さのボールに対する経験不足+トレーニング不足が考えられる。経験値が低いため、ボールが来る前にポジションをとることと、構えることが遅れてしまう。そして、ボールの軌道を予測して落下点を把握する事ができないため、ボールの後方に手を持ってくることができずにミスをしてしまう選手が多く見られた。
味方との連携では、ゴール前で簡単にシュートをうたれてしまうシーンが見られた。GKとしては、自らの準備をしながら、ファーストDFに指示をして、ボールにしっかりとプレッシャーをかけさせることを行いたい。
ボールが頻繁にくるゲーム環境で、トライ&エラーを重ねて成長していくことの重要性をあらためて考えさせられた大会であった。昨年よりGKのファインプレーが目立つ大会ではなかったが、11人制に比べれば実戦でのプレー機会が多いことは変わらず、試合を重ねるごとに向上してパフォーマンスを発揮できるようになっていく選手がみられたのはよかった。このゲーム環境を生かして、攻守における効果的な関わりを身につけて、ゲームの中でより良いパフォーマンスを発揮できるようにしていきたい。
「5指導者の関わり」
選手たちは一生懸命に全力でプレーしていた。全国大会の舞台で選手に良い経験をさせて成長してもらおうという、多くの指導者の働きかけによるものである。ハーフタイムではベンチの椅子を円にして、選手だけで話合う時間をつくり、見守っている指導者の姿があった。選手に考えさせた後に、コーチはアドバイスを与えていた。
しかし、全体的にはベンチから選手の自主性や判断を奪うようなサイドコーチングが今大会は多くなっているように感じた。ゲーム中でもコーチングは必要である。選手の良いプレーを認め、褒めることでフィードバックしてあげる。また、コーチから選手に気付かせてあげる。ヒントを与えることは重要な働きかけである。そして、選手が勇気を持ってチャレンジしたときには、見守り、励ますことも必要であろう。リスペクトとは、自チームの選手に対しても持つべきものである。「プレーヤーズファースト」「トライ&エラー」といった育成に関わる指導者の合言葉をもう一度考えていただきたい。