ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

喪服・色無地

2007-08-24 21:36:04 | 着物・古布
昨日、色無地の反物を出してなんやかややっているときに、
ブルル~ンとバイクの音、郵便やさんでした。
行ってみると、「月刊アレコレ」が入っていました。
「アレコレ」は、こちらへもコメントを下さるみやざえもん様
編集に関わっておられる小冊子です。
着物ビギナーもベテランも、楽しみながらタメになる…
なんかどっかで聞いたようなコピーですねぇ。
とにかくステキな本です。ひとまず反物を置いて読みましたら、
ちょうど「喪服」のお話しが載っておりました。
ステキなきものびと「きくちいまさん」のコーナーです。
ご自身の体験談から、喪服や略礼装のお話しを書いておられました。
私も色無地をだして並べながら「これは仏事にも着られるなぁ」とか
「こっちはお祝い事の方に向いてるなぁ」とか、やっているところでした。
それが上の写真です。
どちらも着尺分ちゃんとあります。モノは悪くありません。
右はもう少しグリーンがかっています。
オレンジっぽいほうは紋綸子で、柄としては大きめの柄が織り出されています。
表側は繻子の面が大きくて、全体に「テカり」ます。
40すぎたら裏向きに作って光り具合を押さえたほうがいいかな、と思います。
オレンジっぽいほうの裏表、上が「裏」下が「表」です。
柄をはっきり出すのに、調整しましたので、色はぜーんぜん違っています。


    


さて、そこで「喪服」について…。
喪服が黒になったのは、以前書きましたが「明治天皇崩御」のとき、
といわれています。要するに、鎖国を解いて外国との交流が深まっていたため、
「天皇の葬儀」については外国の参列者も多い、
その外国では「喪は黒」が決まりであったため、政府は男性には燕尾服、
女性には「黒い着物」を着ることを命じました。
ここから、庶民にもそれがひろまって喪服は黒になったわけです。
それ以前は「白」でした。それも着るのは遺族だけ。
遺族が死者と同じ着物を着るわけですが、その際死者の着物は
縫い糸のお尻に結び玉を作らない糸で、ひとりではなく数人で縫ったもの、
更にそれを着せ付けるとき、前を右が上になるように着せて、
「もうアナタは仏さんになったんだよ、戻れないんだよ」と示したわけです。

さて、黒になったのはともかく…今、この「葬儀」に関する着物の立場は
ほんとに微妙です。わかりにくくなってますね。
理由は「洋装」が台頭してきたことと、地域地方でいろいろ違うということ。
まず、オーソドックスな「葬」の服装について…

親族は喪服、男性はブラックスーツでも可。
通夜は参列者は準喪服かそれに類するもの。
告別式は、親族、親しい間柄は喪服、それほどでもない場合は準喪服。

これだけでもあれってところ、ありますね。
まず親族は喪服、なんですが、最近では親族も「洋装」って珍しくありません。
また男性は本来は紋付なわけですが、明治で燕尾服にしたせいか、
イマドキ葬式に紋付着る男性って…「特殊な社会」の方々だけのような…。
それから「お通夜」、本来お通夜は「急を聞いてとりあえず駆けつけました」
という気持ちをあらわすためにどこかに「黒」を…と言うのが普通でした。
喪服では、不幸が起こると予想して準備していたと思われて失礼に当たる…
と、そういう感覚で、みんな地味な着物に黒い帯、とか
洋服なら紺とか茶のスーツとか…、ちょっとはずした服装でした。
それが今では、お通夜から「からす軍団」です。
特に都会では、お通夜から全員「黒」って当たり前のようになってます。
また「片化粧」といって、紅だけはつけないのが決まりですが、
最近では薄い色ならとか、けっこうゆるんできています。

更にややこしいのは、そういうことが住んでる地方・地域で違うということ。
ですから、実際には「郷に入っては郷に従え」、でいいわけですが…。
たとえば、数年前に近所で「名士」といわれる方がなくなりました。
一応すぐ近くでしたしお顔はしっていましたので、告別式に行きました。
私はそのとき洋装にしたのですが、近所のいつも和服の奥さんが、
こげ茶の細かーい柄のじみーな小紋に、黒帯と黒羽織で参列していたところ、
私の後ろにいたけっこう年配の女性たちが、
「お葬式に黒を着てこないなんてねぇ」「持ってないのよ喪服」とひそひそ…。
そーじゃない…という勇気がなかったのが、今でも悔やまれます。
当日、親族は全員「洋装」でした。

以前呉服屋に勤めていた友人は「最近はお通夜だけ出て、告別式は出ない、
そういうお付き合いも増えている、だからお通夜から黒でいい」と言いました。
それって呉服屋さんの陰謀に加担してないか?
たとえお付き合いの様相がかわっても「急を聞いて駆けつけました」
という思いの表れとして、全身真っ黒ではない服装で…というのは、
大事にしたいとおもうのですけれどねぇ。
と言いつつ、我が家の近くでは、全員お通夜から黒、なので
そういうときは「郷にしたがって」おります。

さてさて、ブラックフォーマルという着るのにラクなものが出てきてからは、
葬儀関係のときの着物は、それでなくとも目立ってしまう。
親族が洋装なのに、どうするべ…とか。
そんなこともあって余計面倒だから洋服でいいや、になってしまうんですよね。
そうそう「ブラックフォーマル」というと、今や「葬儀用」と、
なんかそんな感じですが、お祝いにも着られるって今の人知ってるかなぁ。
私が20代のころは、ブラックフォーマルで華やかなコサージュ、
ヒカリもののアクセなどつけて、同じ服で結婚式にも着てました。
でも今って「カラーフォーマル」が主流ですからねぇ。
着物着てください!

何かとややこしい「葬」の服装ではありますが、
色無地は法事でも重宝致します。ぜひ一枚…ってなんか宣伝になってます。
気をつけるのは色目、これがねぇ若いからと、少し明るい目、赤っぽい系、
これを選ぶと実際の仏事や、お葬式の準喪服としては、
少しハデ目に見えてしまうんですね。
私も30代で、母からもらった色無地を染め替えて、
かなりくすんだローズ色にしたのですが、それだけ見てると地味なのに、
いざそういう「場」に行くと赤いのですよ。
鮫小紋も嫁入りのときに作ってもらいましたが、これが赤紫、
地味だと思っていましたが、それもやっぱり「場」では赤い…。
今は、母からもらった江戸紫の極鮫か、もらい物のモスグリーンです。
ちょっとじみかなーと思うような「寒色系」を一枚持っていれば重宝ですよ。

お葬式の話しばっかりになってしまったので、
ちょっとだけおまけ、これはヘッドドレスってやつですね。


     


これは後にパールとかビーズなどの飾りをつけて、
華やかなお席にも…と思って買っておいたのです。
実は、昔外国映画で見た「ネット越しの顔」ってのに憧れましてね。
フシギと「美人」にみえるんですよこれが…。
ところがねぇ…主人に言われたんです「本気でかぶるの?」って。
そんなにおかしいですか???
結局一度も使ってませーん。






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7 コメント

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ほんと、悩ましい。 (蜆子)
2007-08-24 22:19:18
無地着物、法事用もさることながら、お茶席に多いのですね~。なんか無難路線。一つ紋ついてりゃどこでも間に合う、こんな安直な発想、ぜひとも断りたい。
そんなわけで、茶席には無地着物は極力着ません。そうすると、訪問着、付けさげになって、これがまた大袈裟になりがち。
法事用は無地着物に、グレーの帯で羽織なしが普通になってきました。嫁入りの時に持ってきました黒の一つ紋、さらに三つ紋の羽織。
色絵羽の一つ紋の羽織、みんな出番がありません。
いつか羽織について(女物の)の使用についての解説をお願いいたします。
Unknown (陽花)
2007-08-24 23:05:56
子供の頃、お隣のお婆ちゃんが亡くなったのですが、
その頃まだ土葬で身内の方が白装束で腰には縄紐を
巻いてワラ草履を履いていた記憶があります。
幼かったのでその姿に驚いたんだと思います。未だに忘れられません。その頃から比べると随分お葬式の
形も服装も変わりましたね~。
やっぱり郷に従って・・・になってしまいますね。
寒い冬には着物の方が暖かくていいんですけど着物は
ほとんど濃い身内の方だけですね。
ずいぶん前になりますが (Suzuka)
2007-08-25 06:09:39
中学の友人が急死した知らせを受け、夜道を走って駆けつけたことがあります。

まだ手を通したのかという美しい訪問着を逆さに、あんなにお喋りした相手は目をとじていました。

すきなく着付けた喪家の通夜の装いに、場違いな自分を感じながら、ぼんやりと、嫁であったのだなと考えていました。

めったに色喪服って見かけませんね。
数年前、東京での通夜でしたが、夕やみにまぎれたお年寄り方の深紫、濃紺など拝見して、ああ、こうして着こなすのだと感じ入りました。
周囲となじむには、深く沈んだ色、艶のないいろ。
故人との距離を表す喪の色は、やはり限られていて、日常との兼用は難しいのかもしれません。

7対3 ? (萬屋千兵衛)
2007-08-25 08:34:55
「アレコレ」の、みやざえもんさん!
ご自身でも、編集に関わっていると表現されてますが、
正式には、「アレコレ」統括責任者の編集長様です!
ま、裏の顔として「駄洒落の女王」という肩書きも持ってますが(爆)

葬儀の話ですが、私は若い頃は町内の会に所属していたせいで、
あるいは、現在までも仕事関係で、多くの葬儀に列席してますが、
本来は、訃報を受け、地味な装いで通夜に向かい遺族を慰め、
そして、翌日は礼装にて告別式に列席するというのが正しいと
思われますが、私の統計によりますと(統計なんか取っちゃないけど)
7対3の割合で、現在は通夜への列席者が多く、且つ、
重視されてるような気がしてなりません。

「通夜に列席できないから、告別式に行くよ」というような
意味が判らない表現を、普通に耳にします。
喪服も、きもの姿を見る事は列席者では、まず見ないですね。

さて、問題のヘッドドレス!
ツッコミを入れてもらいたくて、掲載されたのでしょうから、
私が、ご希望をかなえてあげましょう!(笑)

「フシギと「美人」にみえるんですよ」って、あなた!
それは、普通の女性の場合の話でしょ?(笑)

ご主人のおっしゃる通り、おやめなさい!(爆)
Unknown (マックはは)
2007-08-25 08:37:51
おはようございます!
我がブログにコメントありがとう~
ホント、久し振りで嬉しかったですよ!

それにしてもいろいろと良くご存じで・・・
ワタシなんかノー天気で恥ずかしいですぅ~
着物に関して、殆どというかまるで知らないのでとても勉強になりますよ。
これからもちょくちょくお邪魔しますのでよろしく~

ワタシの中のとんぼさんのイメージは最後の帽子が良くお似合いだと思うんですけど、かぶったことないのですか?
諸行無常・・・ (maymayman)
2007-08-25 16:34:05
納棺に着せる帷子・・・これを今でも作られる方はいます(羽二重&比翼地)、当日慌てて作る場合3人程で作ります、時間が無いのと穢れを一人で背負い込まないようにと言う事らしいです、総て返し縫と、縫い止めをしません(袖は平袖、衿は棒衿、丈は足が隠れる長さに)。こういう泥縄は流石に現在では少なくなりましたが、元気なうちに用意される方はまだ偶に有ります。つまり当日自分が着る事に成る帷子が真っ白では恥ずかしいのです、生前よりいつも覚悟があって、用意していたと言う事が本人にとっての美学なんです、薄く黄ばんだ帷子がかっこいいというわけです。
羊も義理がけが多いので(商売の為)葬儀にはよく出かけます、喪主側の着物姿はマダマダ多く見かけますが、流石に参列のお客様は、着物姿は少なくなりました。稀にお通夜の席で、ご年配のご婦人が渋い万筋やホントに小付けの地味な小紋に、喪の帯若しくは色喪の帯に、黒の一つもんの羽織姿に遭遇する事が有ります・・・葬儀の席で不謹慎だとは思うのですが・・・なんてかっこいいご婦人!と思ってしまいます。
最後に、服装は相手に対しての礼儀でもあります、生前のお付き合いから判断して、きちんと着物を着る事も喪主側の人達に、あ~大変な思いをして駆けつけてくれたんだな~~と、感じてもらえるのです・・・俗に着物の多いお席は格が高いとも言われます・・・皆が着ないからという判断ではなく(自分が楽をしたいとかでなく)相手に対する関係性で着物が必要なら着て行って上げて下さい!!!
Unknown (とんぼ)
2007-08-25 17:05:25
蜆子様
あるものの悩み…ですねぇ。
お茶席は着物品評会ではないのですから
(そうですよね)無地オンパレードでも
それはそれでいいんじゃないですか?
着物で悩むより「器」で悩んでください。
いい器とお茶を愛する心をお持ちなのですから。
羽織については、また書いてみますね。


陽花様
母の実家も、私が子供のころは土葬でした。
いろいろ地域地方で残っていますね。
私も冬場のときはできるだけ
着物にするようにしています。
ほんと…目立っちゃうんですけどね。


Suzuka様
近しい人ほど、身内でなくても呆然…ですよね。
他人の立場で「哀悼」と言う想いをあらわすには、
黒より沈んだ色目、が自分の気持ちにも
沿うとおもいますねぇ。


萬屋千兵衛様
はいはい、みやざ様のことは承知しておりますです。
ご本人のお言葉をお借りしましたぁ。
それにしても「葬儀」の方法が変わっていくのは
ちっとうら寂しい気がしますね。
私の近くでも「お通夜か告別式かどっちかにいきゃ
いいんだから」なんていうのをよく聞きます。
会場でたとたんに、何の話だかゲラゲラ笑ったり。
人の死というものの厳粛さを忘れるんですかね。

「美人に見える」のはホントですっあたしでもっ!
んなとこ突っ込まんでいいっ!
(千さん、かぶってみる?)


マックはは様
いらっしゃーい。うれしいですー。
着物はずっとすきだったんですが、
まさかこんな風にあれこれ書くようになるとは、
おもっていませんでした。
楽しみながら書かせていただいてます。
ヘッドドレス、つけたいんだけどねぇ、
ダレも結婚しねーのよ、身内の若いもんが!
いき遅れにもらいそびれ…なんとかしてぇ。


maymayman様
私は両親の「帷子」、作ってひそかに
しまってあります。紋綸子です。
親は私のためだけを考える人たちですから、
これは最後のときの親孝行と思って作りました。
もちろん二人ともしりません。
黄ばんだ経帷子着せたときに「潔い」とその美学を
思ってくれる人はいないかもしれませんが、
両親ともに、最後まで世間様にきちんと正面向いて
暮らしてくれる人だと思っていますので、
私だけがわかればよい、と、そう決めて作りました。
自分のはまだなんです。
ホラぜったい長生きするつもりだしぃ?

普段着物は自由でいいけれど、礼装だけは、
あまり崩してほしくない、というのは、
それが「相手があること」だと思うからです。
相手を祝う、家族の喜びをわけてもらう、
相手をしのぶ、遺族を悼む…
そういう気持ちの表れとしての衣装は、
やはり「好きなように」ではない、と思います。

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