
入手ほやほやの羽裏です。みつけたときは、思わず「いってみよー!」と
オークションに参戦しました。ところがだーれもこなくて・・・。
それだけたいへんお安く手に入ったので、ありがたいのですが、
こういうのは人気ないんですかねぇ、でもおもしろいです。
これは「狂言 二人袴(ふたりばかま)」の一場面。
私は狂言についても、いくつかストーリーを知っている・・・という程度で、
深い知識はありません。能・狂言は、流派や演じる役者などによって、
いろいろ変わる場合がある・・と言うのは聞いておりましたので、
とりあえず、検索してみました。大筋は私の覚えていたものと同じでしたが、
演者の年齢が近いときは「親子」の設定が「兄弟」になったり、
また、人物の描き方などもさまざま変更があるようです。
とりあえず、一番オーソドックスと思われるあらすじをお話致しますと、
これは「婿入り」、といっても養子にいくのではなく、昔の「婚姻」の
しきたりとして行う、いわば新婚の婿さんの「嫁側実家ご挨拶行」・・・。
この新郎さん、どうにも頼りなく、親離れできていない・・・、
嫁さんの実家の舅に挨拶に行くのに、父親に袴を穿かせてもらい、
更には「一人じゃやだー」とばかりに付き添いを頼む・・すんごいファザコン。
嫁さんの家の門口まで送っていった父親は、これまた子離れできておらず、
外で待っている・・やがて中で挨拶をしているうち、父親が外にいる・・と
バレてしまい、嫁のほうの舅が「そんなところにいないで入ってていただけ」と
父親を家の中に招く、ところが、そんなめでたいことの日だというのに、
つきそってきた父親は、まさか家の中に入ることになると思っていなかったため、
袴をはいていない・・・。しかたなく、外で息子の袴を借りて中で挨拶をし、
息子が呼ばれると、また外で袴を渡し・・と一枚の袴を互いに穿いてはごまかす。
そのうち「かわりばんこに入ってこないで二人一緒に」といわれた親子は、
とうとう一枚の袴を半分に裂き、「前掛け」のようにあてがって家に入る。
後ろがないから、立ち居振る舞いも自然とおかしくなる、
やがて歌うの踊るのになって・・ついにバレてしまうが、
舅の機知で場は収まり、楽しく歌って舞って・・になる・・、
とまぁそんなストーリーです。私は写真でしか見たことがないのですが、
袴のうしろがないのをごまかすとなれば、当然カニ歩きになったり、
誰かが後ろにこようとすると、体をずらせたり・・狂言ですから
さぞかし「滑稽」なのでしょうね。
羽織の図柄は、そのファザコン息子が末広を広げてなにやら声をあげている様子、
うたっているのか、ごまかしながら舞おうとしているのかわかりませんが、
前掛けのように前だけの袴と、本来隠れるはずの着物が丸見えのところ、
ちまっと揃えられた足裏など、細かいところが妙におかしいです。
なんとかごまかしとおそうと悲壮な二人、実際の舞台を見てみたいと思います。
もう一枚、こちらも羽裏。
しかし、どうして昔の羽裏はこんなにおもしろいのでしょう。
大根にくわい、ネズミと打出の小槌です。

大根はたぶん「豊穣」の象徴、ネズミは穀物を扱う農民にとっては大敵でしたが、
「子沢山」という意味では「子孫繁栄」の意味を持ちます。
くわいはお正月のおせちに使われますね。打出の小槌は言わずもがな・・・。
この小槌には文章がはめこんであります。

「伊勢内宮」、手描きのようです。なんと書いてあるのかはご勘弁を・・。
バックは「福」「富」などのおめでた系の「字」と「丁子」「分銅」など
宝尽くしによく使われる「宝物」の柄、
後ろの字も小槌の絵も、なんともうるさい色柄なのですが、
とにかく「おめでたい」づくし・・。
今回はこのほかに「鳥」の柄のものも入手しました。
いずれまたご紹介を・・・。私は「羽裏コレクター」ではないので、
今も依頼があれば、手持ちの羽裏をお売りしていますが、
「これは手元に置こう」或いは「自分で着よう」と思うものが
だんだん増えてきています。それでも、こういうものは、
もうなかなか作られないだろうと思うと、
とっておきたい・・と思ってしまうのです。
近くまたおもしろいのを手に入れようと画策中です。
とんぼ様説明の二人袴面白くて是非見てみたい
と思ってしまいました。
こういう画力のある人、今いるかしら。
滑稽を絵にするって、かなりムツカシイと思う。
皆で競って、あれこれ羽裏を注文して、
筆持つ人を育てよう。(って、違うか。。。)
うっふっふ、面白かったです。
流派の発表会などの見学無料の狂言でときどき見学してきます。
見たいですね。言葉遣いなど当然昔言葉だし、
狂言のお約束事もよく知りませんが、
これならきっと笑えますよね。
ぶりねぇ様
これが袴を脱いだり着たりしているところでも
2枚にさいているところでも、おもしろくない。
この「意味のわかる笑える一瞬」を切り取る、
その技量と画力ですね。
今の額裏というと、山水画か龍・・・、
ありきたりが一番安心なのでしょうか。
寂しいですね。
うまこ様
わかりやすいので初心者向き・・みたいなことは
言われたのですが、おもしろそうですよね。
いいなぁ・・。
でも掛け物って座敷床の間でしょう、羽裏ならば自分だけの楽しみですし、どうしたものかと迷いも
めでたづくしなんですね。正月にねずみのお尻をかけるかな。これってどうよ。
めでたづくし、とかおめでたい意味のあるものは、日本の図柄にはよくあります。たとえば松竹梅も、馬が九頭もひょうたん六つもそうですね。それらは別に「お正月」に使うものではなく、夏場にひょうたん柄をさげたりすると思うんです。ネズミのお尻と言うのがお正月から・・とお思いなら、お正月以外の普段使いになさるとかでいかがなもんでしょう?書画骨董もお茶も素養のない私が言うのもなんですが・・。
さすが、京都ならでは
それに茂山七五三さんとは中学校の同級生です
一度、彼の舞台も見たいものです。
わからなくて、ごめんなさい。縁がないですねぇ。わからないなりにも、能舞台は見たいなぁと思っているのですけれど、思うばっかり・・・。もっぱらテレビ観賞ばかりです。