
これまた「じゅばんの袖一枚分」、このじゅばん、着てみたかったなぁ!
男物だっての…。とりあえず、柄の内容につきましては、あとから…。
こういう柄をじゅばんとしてきていたのは、昭は初期ごろだと思うのですが、
その意匠の斬新さは、今の時代でも十分通用する、というより、
じゅばんの柄で言うならこのころのものの方が、ずっとステキです。
縦に長く伸ばした写真がこちら、これで模様ワンセット?半、です。
暗いグリーン部分がが傘の絵、紺地が役者絵です。
とても大胆な構図です。よく見てください。

一番上の右の傘の左下のラインと、その下の傘の左下のラインが平行です。
次に真ん中の傘の右上のラインと、一番下の傘の右上のラインが平行です。
つまり、二組の平行線をずらして組み合わせて地を分割し、
傘の絵と役者絵をはめ込んでいるわけです。そうやってできた斜めのワクの形は、
実は傘の骨と骨の間にできる形、そして中の傘は開いていますから、
傘は開けば「円」、で、役者絵の方にも開いた丸い傘と役者絵のはめ込みも
丸紋のように円取りしているわけです。凝っていると思いませんか?
傘だけで何もないグリーンのところには、アクセントに「石突」を描いて、
色でわけてあっても、隣の柄と関連性を持たせています。
今、こういう柄を思いつくだけの職人さんはいるんでしょうか…。
私が今もし、京の町屋のような家に暮らしていたら、
煤竹かなんかで細長い衝立を作って、そこにこれをそのまま貼り付けたのを、
玄関先の目隠しかなんかに使いたいっ!今の家じゃねぇ…。
なげいていてもしょーがありません。柄のお話に致しましょう。
お芝居関係のものは、着物よりじゅばん・羽裏によく使われる図柄です。
これは見てお分かりと思いますが「白波五人男(しらなみごにんおとこ)」。
毎度申し上げますが、とんぼは芝居・能・狂言系は、ほんっとわかりません。
とりあえず知ってることを先に申し上げますと、
白波と言うのは「盗賊」のこと、語源、これは知っておりました。
中国で後漢末期に現れた「黄巾賊」という盗賊、実は盗賊というより
「農民の反乱軍」でしたが、当時の王朝に対する反乱でしたから
「賊」と呼ばれたわけです。ずいぶん大暴れしたのですが、
結局頭目「張角」が捕えられ分散、その残党がホンモノの盗賊となって
更に荒らしまわったようです。結局「白波谷」というところに篭ったため、
「黄巾賊」から「白波(はくは)賊」と呼ばれるようになった…。
この「はくは」の訓読みで「しらなみ」イコール盗賊、となったわけです。
私は「白波」より「白浪」の方が、目に慣れているのですが、
「白浪」では「はくろう」になっちゃいますからねぇ。
ちなみに「白波五人男」の正式な外題は「青砥稿花紅彩画」、読めません…。
「あおとぞうしはなのにしきえ」だそうです。
一枚では入りにくかったので、分けて「五人全員」を…。


で、この「五人男」のうち、実在の盗賊がモデルになっているのは3人、
残り二人は「創作」、実在の方の親分格がお芝居の方でも親分役で、
「日本左衛門」、役名は「日本駄衛門」になっています。
お芝居のストーリーで知っているのは、やっぱり有名でよく演じられる場面だけ。
このお芝居ほんとはすごく長いのだそうですが、
有名なのは「しらざァ言って聞かせやしょう」の、弁天小僧菊之助の場面、
それとこの五人がずらり並んで名乗りを上げる場面。
本日のタイトル「問われて名乗るも…」は、このときの日本駄衛門のセリフです。
このとき全員が傘をさして後ろ向きに立っていて、
一人ずつ前を向いて「自己紹介」の口上を述べる、といわけで「傘」なわけです。
お芝居についてはお好みもあり、歌舞伎ファンの方には、
わざわざ私が講釈するまでもありませんのでこのへんでやめておきますが、
こんな風に後々の世までも、取り上げられて絵にも柄にもなる、というのは、
ひとえに「歌舞伎の人気」のおかげですね。
歌舞伎では心中ものや仇討ちものなど、実際の事件を題材にしたものが
数多くありますが、けっこうノンフィクション部分が多いわけです。
それは当時の世情もあったでしょうし、また書く方(戯作者など)も、
お客がこなければこまるわけですから、その辺りは「ウケ」狙いの手段、
当時の日本人の気質にあったように作ったわけですね。
それにしてもこの芝居ができてから、200年くらいは経っていると思うのですが
いまだに大向こうから声がかかる、すごい物だと思います。
もちろん、演じる役者さんがたの力量もたいしたものなわけですが…。
さて、おしまいにもう一枚、こちらも人気の点では「ロングラン」??
だるまさん柄ですが、なんたってひとつひとつのだるまさんの顔がかわいい!
これも袖一枚分ほどしかありませんが、こんなの「スカーフ」でも
けっこうかわいいと思いませんか?

ちらっと見せるの
だるまさんは、半襟に♪
今日は雨だったので、ベタなんですが、和傘が散っているウール小紋を着ました。こういう遊びができるので楽しいですよね。
だけは覚えていました。高下駄を履いて見得を
きっていたような記憶が・・・
それにしても、盗賊なのに優男ばかりですね~。
縦半分にして、袖口の方は別布をつけ、
「振」の部分だけ、この柄を見せる、っていう手も
ありますよぉ~。
季節やお天気、風物行事、それと関わる柄、
損なのは着物ならではの楽しみですね。
陽花様
こんな盗賊なら「どーぞ持ってってー」って、
持ってくほどのものもないか…。