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ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

着物・残念シリーズ その3

2008-01-17 16:55:58 | 着物・古布
宝尽くしの柄で埋め尽くした「遠山柄」、華やかでいて品のいい、
昔ながらのしぼのあるちりめん、ズシリときます。

先日、残念シリーズ(いつシリーズになったん?)の着物を、
何枚か整理しまして、アップさせていただきました。
あのブルーの御所解きは、幸いにも陽花様のお友達が、
お嫁にもらってくださることになりました。
和裁をよくなさる方なので、細身のお身内のために縫われるそうです。
あたしじゃあムリ、いや縫えないだけでなく「横幅」が…
ほんとによかったです。

同じように切れてしまっているこれを出してきたのですが、
この着物はどー考えてもムリなので、解くために出しました。
これはどうも裁ちまちがいとか、ほかのものを裁っているときにはさんだとか
そういうことよりも、仮仕立てでザッと畳んでおいたものが、
何か機械にはさまったって感じですねぇ。
もったいないことに、こんな切れかたです。
切れたところが分かりやすいように、アイロン台の上に乗ってます。


           


写真だけ見たら、鳥が飛んでるみたいですけどね。
近くで見ると…やっぱり鳥…いや違います、ザックリなんです。


          


重なって一緒に切れちゃったところ、こちらもです。
こっちはなんか笑ってる感じにみえますねぇ。


            


アップはこちら、ほらぁ、やっぱ笑ってる…。


    


この前のように脇のほうが切れているなら、細身の人用とか、
ちっと脇をせばめて、帯に作り変えることもできますが、
柄の真上で、しかも反物の真ん中近くまで切れちゃってます。
帯にするなら、柄をうまくとって、帯として締めたとき
中に入るところでつぎはぎして作り帯にする…。
それでもずいぶんステキな染め帯ができると思います。
新春のおでかけに、白紬かなんかに締めたら、いいですねぇ。

残りの部分、たとえばあんまり柄が多くないところだったら
こんなふうにバッグにして、作り帯とおソロで。


         


せっかくたくさんの職人さんが関わり、丹精こめて作ったモノです。
着物としての道は絶たれても、布としての命はまだまだ十分あります。
今私は、一人でアレコレどたばたの暮らしで、
モノ作りにゆっくり費やす時間がなかなかとれません。
もしどなたか何かを作りたいとおっしゃるなら、お譲りしますし、
ずっとうちですごすなら、いつか何かにしてあげたいと思っています。

細かい宝尽くしの柄、ほんとにきれいです。
これも以前お話ししたことのおさらい?ですが…、
「宝尽くし」は文字通り、人が宝と呼ぶものを集めた柄です。


    


鶴の右下、これは分かりやすいですね「巾着」、金銀を入れる袋です。
左下は「蓑」、蓑は天狗の隠れ蓑、のように人ならぬものが持つ宝。
普通「宝」と言うと金銀財宝を思いますが、それだけでなく、
人にはできないこと、人より優れたことをできるチカラ、能力、才能…も、
昔の人は宝と思ったのですね。

蓑の右下のものは「丁子」、あの香辛料の丁子です。クローブですね。
なんで丁子が宝物かといいますと、かつて日本には、中国から
さまざまなものが渡来したわけですが、その中には「薬」と言う形で
入ってきたものもたくさんありました。今のお茶や砂糖も元は「薬」です。
中国は「漢方薬」の親元で、さまざまな薬草や薬品があったわけです。
なかでも丁子は薬品としても、また香辛料や染料などにも使えました。
そういう意味で万能だったわけで、とりわけ貴重なもの高価なものだったのです。

丁子の右上の楕円はおなじみの「七宝」、文字通り七つの宝、
これは仏教からきていまして、経典の中で七つの宝とされているものを
あらわしています。仏教もいろいろ宗派がありますから一定ではないのですが、
おおむね「金・銀・瑠璃・玻璃・硨磲(しゃこ)・瑪瑙・珊瑚」とかで、
真珠が入ったりする場合もあります。瑠璃はラピスラズリ、玻璃は水晶、
硨磲(しゃこ)はシャコガイの貝殻です。
仏教は奈良時代から日本にはいってきていますから、
今のように「高価な宝石」と言う感覚とは、また違っていたのでしょうね。
七宝の下は巻物、これも巻物そのものが宝物ではなく、こういうものは
経典が書かれていたり、学問や政務につかわれたものですから、
要するに「頭脳明晰で立身出世しますように」ですね。

その下は分銅、これは金銀を計るときの天秤に使われるものですから
当然金銀に恵まれますようにの思いですね。
その左下の柄のついた先の曲がった棒は「鍵」、蔵の鍵ですね。
昔の蔵の鍵は、外からガチャガチャとあける鍵ではなく、
「こざる」という細工、雨戸のあの棒を敷居の穴に差し込む鍵、
あれのフクザツなものです。蔵の壁にあけた穴から、
これを差し込んで、こざるをはずしたりしてあけました。
つまり、外から鍵を壊すことはできなかったわけです。
鍵は宝物を守るものであり、またこんな鍵を使う蔵を建てられるように、
という願望もあったことでしょう。
そのほかにも勾玉や宝珠など、めでたいものがぎっしりです。

こういう柄は、全部ではなく一つ一つとか何個か、と言う形でも使われ、
子供の着物や花嫁衣裳にもよく使われました。
子供がシアワセであるように、世の役に立つ人間になるように、
という親心、まさに親にとっての宝は「子供」であったのだと思います。

こんな柄をひとつひとつ、丁寧に染めて描いて刺繍して…、
そんなものがこのまま埋もれてしまうのは、ねっもったいないでしょう!!
なんとかせねばーです。




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9 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (陽花)
2008-01-17 18:55:40
本当に様々な人の手が掛かった反物が、
着物として着られないのは本当に
もったいないと思います。他の物にでも
是非なればいいのにと思います。
返信する
ほんと、モッタイナイですねーー; (zizi)
2008-01-18 09:18:49
留袖にも使われるお目出度い柄、山陰の木綿絣にも多く見られるのはどうしてなんでしょうね? 絹物でなく木綿だから普段着ですのに・・・

こういった木綿の絣の模様の良いものはとても魅力的なので困っています。既に鶴松柄の木綿絣があるのに、まだお目出度い絣柄が欲しいのです。。。。困りますっ。ほんと、オメデタイですゎ。
返信する
もったいないですね (えみこ)
2008-01-18 09:45:44
裂け目が痛々しくて~着物が泣いているよう。
なんとかしたいですね。
返信する
Unknown (蝸牛)
2008-01-18 19:26:03
これだけの物が・・裂け目が本当に残念ですね。
何かに再生してあげて下さい。
バッグなどにしたら素敵な物が出来そうですね。
返信する
Unknown (とんぼ)
2008-01-18 20:54:20
陽花様
ここまできて…ですよね。
なんとかこまごま考えてみようと思います。
何がいくつできるかなー。


zizi様
おめでたい、というのもあると思いますが、
「守り」とか「祈り」という意味も
あると思いますよ。「恵まれますように」
「身を立てられますように」というような。
きっと嫁ぐ娘や生まれた子に、
そういう願いをこめてつかったんでしょうね。


えみこ様
ほんとに泣いてますよぉ。
私も泣いちゃいましたー!!


蝸牛様
バッグなんかは、ハデめのところとジミめのところ、
使い分ければ、いろいろできると思います。
考えているのは楽しいんですけどねぇ、
さて、いつ形になることやらです。


返信する
すてき・・・ (ふぁんしぃ)
2008-01-22 15:19:43
はじめまして。
素敵な柄ですね~
帯やバッグにできなくても、最悪の場合は額に飾ってもいいのでほ、欲しいです・・・・
宝尽くしの柄、好きなんです・・・・
お譲りいただけないでしょうか。
(どのようにご連絡させていただいたらよろしいでしょうか。)
返信する
Unknown (とんぼ)
2008-01-22 19:55:08
ふぁんしぃ様
はじめまして、ようこそおいでくださいました。
ほしいと言っていただけるのは、とても幸せです。
とりあえずは、このページの左下にある
「とんぼへのお便り」欄にメールをいただけますか。
ただ、たいへん申し訳ないのですが、
ただいまパソコン不調でして、あすからメンテです。
お返事が週末になりますが、お許しください。
ふぁんしぃ様とのお話しがすむまでは、
予約取り置きという形で、しまっておきますので、
ご安心ください。
返信する
Unknown (ふぁんしぃ)
2008-01-24 03:04:17
たいへん申し訳ないのですが、「とんぼへのお便り」欄を見つけることができませんでした・・・

このページ、ブログのトップとも目をお皿のようにして探してみたのですが・・・・
左側のプロフィールなどがあるところなども探してみたのですが、見落としてますでしょうか。
返信する
Unknown (とんぼ)
2008-01-24 09:21:08
ふぁんしぃ様
おお、申し訳ありません、PC不調なので、
お便りを別に保存できるように
設定を変えたとき、場所が変わってました。
えっと左の「ブックマーク」の一番上、
「とんぼへMail」のところです。
昨日やり直したので、ちょうど設定しているとき
きていただいたのかもしれません。
本当にすみません。
ちゃんと表示されないようでしたら、
同じブックマークの下のほうの「こぎれ庵 和之介」
で、トップの「お問い合わせはこちら」でも
届きますので…。
分かりづらくて説明不足、ほんとにすみません。
返信する

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