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ほばーりんぐ・とと

ただの着物好きとんぼ、ウンチク・ズッコケ・着付けにコーデ、
あちこち飛んで勝手な思いを綴っています。

着物の相談

2009-03-17 19:41:45 | 着物・古布
写真は錦紗の着物の解き、
こんな着物を着た人が歩いている時代の銀座など、いってみたいものです。


よく着物の「質問サイト」を覗くのですが、
今の人が何をどんなふうに悩むのか…少しですがみえてくるものがあります。
「友人の結婚式に何を着たらいいのか…」というタイプの初歩的な質問から、
少しわかりかけてきた人が「紋がついていないけど大丈夫か」とか、
「平服でと招待されたが訪問着がかなり派手なのだけれど」というような質問。

ちょっと心配だなと思うのは、それに答える人で、
着付け師をしていますとか、和裁師ですとか、以前呉服屋に勤めていたとか、
つまり、何も知らない人間から見ると「あっこういう人なら安心だ」と
そう思える人たちが「それは○○ですから、こうでなければいけません」式の、
断定的な物言いをしている場合です。

確かに、断定的に言えることもたくさんあります。
でも、元々が着物の決まりごとなんていうものは
時代によってかわっていくものです。
また地方地域だけでも違う場合もあります。
更には結婚式などの場合は、最近は式そのものやり方自体も変わってきています。
姪は「人前式」をやりまして、手作りパーティーでした。

たとえば「平服といわれたので、ウールでいいか」なんてときは
「NO」と断定することは、残したいくくり、ですけれど、
「色無地でいいか」といわれて「紋がはいっていなければいけない」とか、
「訪問着なら紋がはいっていないと、留袖と格があわない」とか。
それはあまりにもくくられすぎではないかと思います。
そんなふうに書いてあるのも、過去に見ています。

昨日の刺繍半衿などもそうですが、日本髪を結っていたころは、
半衿の出方ももっと大きかったですから、白一色はそれはまたそれで
凛として美かったでしょうし、逆にたいへん豪華な刺繍も珍しくありません。
鳳凰や宝尽くしなど、豪華な柄が襟元にのぞいていたわけです。
今の半衿は、せいぜい1.5センチくらいしか見えませんから、
豪華な刺繍も出るのはごくわずかです。
いったいいつから「礼装には白半衿」、になってしまったのでしょう。

洋服の裏地は、スカートなどは透けて見えないことと、
すべり、それに汚れ防止、裏を隠し、更には保温もあるでしょうか…。
いずれにしても、洋装の裏地は「見せない」ことが前提で、
見える場合(上着など)は「見えないつもり」であることが前提ですから、
表地と同じ色にするわけです。
ちょっとおシャレな人は、裏にスカーフなど使いますけれど。
着物は、というと「見えること」ではなく「見られること」を前提にし、
「見えてもいい」ように色をつけます。八掛や、昔の留袖の袖裏の紅絹など、
それの典型です。チラリと見える、わずかにのぞく、そういうところに、
美しくあること、が着物のミリョクでもあります。
半衿も、大きく覗かせていた時代であっても、着姿全体の分量からいえば、
見える部分はわずかです。そこにも気を抜かなかったのに、
なぜ、今は「白い塩瀬」が定番になってしまったのでしょう。
私は戦後生まれですから、想像するしかないのですが、
まずとにかく日本には「モノが全くない」時代、
「みんながチョー貧乏」な時代があった、ということです。
買いたくてもモノがない、モノがあってもお金がない。
そういう時代には、とにかくこれで、と質素に暮らさねばならなかったわけで、
その時代を過ごした人は、その時代のルールで育つわけですね。

以前「付け下げ」のお話を致しましたが、戦争という重苦しいなかで、
なんとか美しい着物を残すために「訪問着もどき」として作られたのが
つけ下げです。その位置づけをそのまま確立しておけばよかったのに、
訪問着より安く作れる、カンタンであるみたいなことで、
付け下げのくくりをはずして豪華な付け下げを作るようになってしまいました。
結果、最初の「反物か仮絵羽か」でみないと、それが訪問着か付け下げか、
わからなくなってしまいました。

はっきりしたほうがいいところはうやむやになり、
柔軟でいいじゃない、というところが、人によって「でなけりゃいけない」と
残っている…今の着物の世界は、そういう世界です。

私、昨日も書いたように「みんなずっと勉強」だと思うんですよね。
以前から「残すべきもの」「残したいもの」を考えていかなきゃならない、と
ずっと言ってるんですが、着る側だけでなく、
売る側、教える側も「そういう時代」であることを認識してほしいと思うのです。
大手のナンタラさんたちが、ホテルだのホールを借りて、
一度に何万点という着物や帯を販売するなどという、
着物いちば、みたいなことをやって顰蹙を買って久しいです。
アレではダメだと、最近になって、少しずつわかってきました。
展示会も「まとも」なところに行く知恵も生まれ、
最近は詐欺まがいはあまり耳にしません。

消費者も賢くならねばなりません。一般の呉服屋さんであってもです。
先日の私が行った展示会は、町の小さな呉服屋さんでしたが、
西陣お召しの工房の人や、日替わりで別の織り染めの人がきていました。
女将さんが「私らは織りや染のことまではわかって説明できるけれど、
糸のことや、これが今までのお召しとどう違うとか、どこが新しいとか、
そういうことはわからないからきていただくのよ」と言いました。
この姿勢はとても大切だと思います。
私、糸を見せていただいて、強撚糸と普通の糸をいただいてきました。
精錬前の織物も見せていただいて、これを精錬するとここまで縮みます、と
現物も見られたことは、私にとって本当にありがたいことでした。
いえ、ここまで勉強しましょうというのではないのです。
売る側も、今の時代のにおいを嗅ぎ取り、何十年もやってきた呉服屋だけれども、
新しいことは覚えなきゃいけないし、それを売るときに、
昔はこういうものだったんですけど、最近はこれでもいいですよ、とか、
こういうしきたりは残っていますからこれが無難でしょうとか、
これじゃなきゃダメ、みたいなことを言わず、柔軟に対応してほしいわけです。
相手に選択肢を残すということは、考えてもらうということです。
そういうことから前に進むと思うんですよね。

同じように着方であれしきたりであれ「本来はこういうものだけれど、
今の時代はこうなってきているし、あまりうるさく言わなくなっているから、
最低限『このライン』を守れば、ここはこれでもいいと思いますよ」と
そんな感じでお話しをするほうが、いいのではないでしょうか。

ちょっとお休み、解こうかどうしようか迷っている襦袢です。


     


私もまだまだ知らないことがたくさんあります。
人は自分に近くないことは、どうも学びません。
私は身内に結婚する年代が少ないもので、
「婚」関係のお話しが出ると「ちょっとまってよぉ…」と、
一度頭の中のマニュアルを引っ張り出さねばなりません。
おまけに、大体はもう留袖しか用がない状態なので、
たまに「来賓」なんてお話があると「えぇっとぉ」と…。
更にアヤシくなってる記憶をホコリはたいて引っ張り出す始末です。

とかく「お直しおばさん」や「強烈視線おばさん」なんて、
着物着ていると、訳知りガオで、あぁだこぅだと話しかけてきたり、
じっと見つめて「採点」していたり、そういう人もおりますが、
もっと着物を着る人、着てないけど知ってる人が距離を縮めて、
お互いに刺激しあって今の着物の時代を作り上げていきたいものだと思います。



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柔軟性 (茶ノ葉)
2009-03-17 20:09:21
質問回答掲示板などを拝見していて思うのは、例えばとんぼさんが仰るような感じで呉服屋さんが「昔はこういうものだったんですけど、最近はこれでもいいですよ」と説明をしたりすると、『呉服屋さんは売れればいいと思って適当なことを言うから当てにならない』という見方をされる方を割合よく見かけますね。

基準となる考えが分からなくて、自分も含めて皆さん右往左往しているから、厳しい意見、固い考え方の方が安心してしまうのかもしれません。
でも、そうやってガチガチに身を固めていって、行き着くところはどこなんだろうなあ?と考えるとなんだか寂しいような、悲しいような・・・。

何もかも昔が良いとは思いませんし、今、そんな風になってしまったものを全て戻すことは出来ないと思いますが、発展性に繋がる柔軟な考えはなるべく失くしたくないなあと思います。
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Unknown (陽花)
2009-03-17 22:03:29
なんでもありっていうのも考えものですが、
こうでなきゃって決めつけるのもどうかですよね。ややこしく考えると余計にどうしたらいいか分からなくなってきますが、結婚式に出席と
いってもほとんどの場合お式はお身内だけで
あとは披露宴に出席ですから披露宴のみの場合は、紋のある無しも、紋の数もそんなに神経質にならなくてもいいのではと私は思うんですけどね。
返信する
Unknown (たゆら)
2009-03-17 22:33:30
こんにちは。いつぞやは帯の件でおせわになりました。

先日、着物売り場で若い女性(既婚らしいです)が売り場の方に「妹の結婚式に着る着物はどういうのがいいでしょう」という質問をされていて、「そりゃ留め袖に決まってるわ!」って即答され「そうですか・・・(あまり乗り気でない)」というやりとりを目にしまして、もうほんとにのどまで「お式ってどういう感じでされるかにもよると思いますけど」出かかっておりました・・・(大阪のおばちゃんだから)

結局、新郎側の親族にあわせたりも必要でしょうし、仲人なしのこぢんまりしたレストランウェディングや海外ウェディングで留め袖もどうなの・・・と思ったり。結婚式ひとつとってもこれだけバラエティに富んだ時代なのだから、もうちょっと状況を聞いて相談にのってあげてもいいのにな、と思いました。

長々と失礼いたしました。これからもいろいろ勉強させてください。
返信する
ごめんなさい。相談しちゃいます。 (nana)
2009-03-18 08:12:27
質問サイト、まさに行こうかなと思っていたのです。平の役員で、中学の卒業式に招待されたのですが、(息子はまだ卒業しません。)黒っぽい鮫小紋(紋なし)では、失礼かしら。周りはたぶん黒っぽいから、似たような色で目立たないように。紋付の色無地は黄色か赤になってしまうので、ちょっと気がひけるかなあ。黒っぽいといえば、付け下げもあるんですが、付け下げって、中途半端な感じですよねえ。って、ここは、相談サイトじゃありませんて叱られそうですね。
ちなみに、私は甥っ子のレストランウェディングには、白っぽい訪問着(紋付)で行きました。留袖は持っておりません。母も訪問着でしたが、年配のせいか、留袖じゃなくて悪かったかしらねえと後で言ったりしてました。
返信する
苦い記憶です (えみこ)
2009-03-18 09:37:18
こちらで披露するのもなんですが…。答えられている方々が
いかにご自身の考えに自信があるのか、ためいきをついた事
すくなくありません。内部障害があって、自分なりに工夫して着ていた事を思いっきり否定された時は寝込みました。
(その後そちらのサイトは今で言うところの炎上となりました。)若い方が着物に興味をもたれるようになっても、答える側が「上から目線」では続くものも続かないのではと思います。
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着たい~♪ (りら)
2009-03-18 11:19:30
縞着たい病はまだ続いておりますが、それと平行して最近は「ドッ派手な昔着物を着たい」病もムクムクと体内に蔓延りつつあります。
でも、持って無いんです、今着たいような昔着物。
トップの椿錦紗!!(縞入ってますよね)こういうの着たい~~!
着て銀座歩いちゃいたい~♪
下の黒地の長襦袢も良いですねぇ・・・・
って・・・わたしゃすっかり「見た物乞食」になってます。

着物のルール。
もうこの際似合ってりゃ何でも良いじゃん!で良いんじゃないか?と思うことも多くなっています。
ただ、礼服の場合などは外せないルールはありますよね。
みんなが鵜の目鷹の目で人のミスをあげつらうようなことを止めれば、もっと着物を着る人も増えるでしょうし、却って気にしなければいけない点などは落ち着いてくるんじゃないかと・・・・
あちこちで「ねばならない!」がちょっとずつ違って居丈高に言われるから、みんな尚更混乱したりするんじゃないでしょうか?
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Unknown (とんぼ)
2009-03-18 18:04:48
茶ノ葉様
話しをするというのは、難しいものですね。
でも「売ろうと思って」といわれたら、
何もいえなくなってしまいますね。
そういうことにならないためにも、
小さな呉服屋さんでいいから、
「おつきあい」というのをしてほしいと、
いつも思うのですよ。
敷居が高いと感じるかもしれませんが、
そういうものを飛び越えませんとねぇ。

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Unknown (とんぼ)
2009-03-18 18:07:42
陽花様
そうなんですよ。
式、ではなく披露宴なら、今はもう
そんなに細かくは言いませんものね。
よほど格式のあるおうちならともかく…、
幸い私の場合、そういうことは皆無ですー。
よかったー。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-03-18 18:10:39
たゆら様
たまに見かけたり、私自身も経験したんですが
なんか「どうせ着物のことなんか
わかんないでしょ」といわんばかりの
上から目線の店員さんっていますよね。
そんなことも知らないの?みたいな。
ホントに着物を売りたいと思ったら、
自分も勉強するべきだと思います。
返信する
Unknown (とんぼ)
2009-03-18 18:30:47
nana様
卒業式は入学式より「華やか」ではなく
「厳粛」を重んじると思います。
ですからハデでなくてもいいと思うし、
黒っぽい江戸小紋なら十分だと思います。
もっともほかの役員の方で
お着物をお召しのかたがいらっしゃる場合は、合わせなきゃなりませんが…。
着物が地味な色目なら、帯を明るく華やかな
袋帯で、まだお若いのですから
ちょっとした変わり結びなど、
してみたらいかがですか?
紋がないのが気になるなら、
それこそ黒紋付の羽織、ですね。
先日も書きましたが、卒業式をどの程度の
格の「礼装」の場とするかで、変わりますよね。
相談事は、ちっともかまいません。
メルアドがわかってもよろしければ、
お便り欄からしてください。
けつこうご質問やご相談、ありますよ。
私でお役にたつ範囲で、
がんばらせていただきますから。
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