
一枚もないと思っていた金魚柄が、出てきました。
正確には「一枚」ではなく「一反」、浴衣地です。
何年か前に母からもらったもの、実物は地色が生成りを濃くしたような色です。
カマ柄なので、小さい私には似合わないと思い、そのまましまいこんでいました。
金魚と言うのは「絵」になりますね。
このところ雨か曇り、今日は午後から陽もさしましたが、
それでいて、ときどきぱらっと降ったりするんです。
もうじとっと妙に蒸し暑くていやな日でした。
真夏になると、確かに湿度が高くて暑いのですが、
あのカッと照りつける太陽と、真っ白な雲は好きです。
暑がりですが梅雨時よりは夏のほうがマシだーと思ってしまいます。
真夏になったら、浴衣を着て・・なーんて思っているのですが、
さてそのときになったらやっぱり「てーしゃつにしょーとぱんつ」かなぁ。
さて、このところ「羽裏」がつづいておりまして、その分羽織が同じ数ある、
ということでして、益々置く場所がなくなってきております。
ご紹介するような羽織は、全て男物で7割くらいが「紋付」、
残りが変わり織りで紋ナシや紬系、色は黒か焦げ茶といったところです。
まだまだ十分着られるものもあれば、よくぞ羽裏だけでも残ってくれた・・
と言うようなものまでさまざまです。最終的には羽裏だけにするもの、
そのまま残すもの・・と整理しなければなりませんが、
解きの作業もけっこう時間をとられます。一枚ずつは慣れてくると
それほどでもないのですが、古着ですからホコリがひどいので、
できれば天気のいい日にまとめて外で・・マスクは必需品です。
それでまぁ一気に何枚も解きますので時間をとられるわけです。
母が「解きものは、晴れて風のある日」といってました。
つまり湿度が高いと、古着の絹糸はきしむのです。
ひっぱってもすぐにはぬけてくれませんで、イヤな音がします。
面倒でも一目一目、縫い目を切っていったほうが「分解」は早いです。
昔の着物を解いていると、袂の中で、たまにゴミ以外のものとの遭遇があります。
たとえばその着物とは全く関係なさそうな何かのハギレがはさまっていたり、
仕立てたときに紛れ込んだのか、洗い張りの印の和紙がはいっていたり・・。
一度、滋賀の「本八幡」でしたか、そこからの切符がでてきたことがありました。
確か終戦直後くらいの日付だったと思います。女物の羽織でした。
戦後の混乱期、その羽織を着た女性はどこへ何のためにでかけてのか、
帰ってきたのか・・・切符を残したのは駅員さんもいなかったのでしょうか。
着物は何も語りませんが、確かにこの着物を着ていて人がいたのです。
その人にも人生の歴史があり、その着物はその歴史にかかわり、
そして流れ流れて私のところへやってきたわけです。
私より年をとっているであろう着物たちの、きしむ糸を解きながら、
いろいろなことを考える・・・だからよけいに時間がかかるのかもしれません。
さて、羽織とか着物とか、その着方のルールだけでなく、
着られ方・・というのも何かと変わってきているものもあります。
たとえば「縞の着物(細い縞)」、昔は色さえ気をつければ、
色無地や江戸小紋のワンランク下の準礼装としても使えたものでした。
背中に一つ紋をつけておけばなおよろしい。
たとえば、ジミ目の色合いの縞、紺とか黒、グレー、茶などで細いものなら、
上に黒の紋付羽織を着てお通夜などにも十分いかれました。帯は当然黒です。
また、華やかな色目などはパーティーなどでも着られます。
でも今は「縞」の着物というと「木綿」があげられて、
染めの縞、と言うのはめったに見ません。粋なんですがねぇ。
羽織も入学式など、たまに着物をきている人がいても「黒絵羽」は着ていません。
まぁいっとき「カラスの軍団」などといわれたりしましたけれど、
そういうときだけでなく、黒い羽織と言うのはオシャレ羽織としても
いいと思うのですが、着なくなりましたね。
羽織の丈がいっとき短くなりました。昭和30年代後半くらいでしょうか。
やはり「洋装」に負けじとショート丈で軽やかに・・のつもりだったのでしょうか
実に不細工な羽織ばかりが当たり前になってしまいました。
長ければいいというものではありませんが、今「レギュラー」とされる丈より
長いものを着てみたら、そのよさはわかると思います。
私は身長が150センチと少々しかありませんので、
やたらと長いのはみっともないのですが、その直前、ギリギリ丈まで
長くしています。それと長い羽織の場合は「ハリ」のある生地より、
やわらかいもの、女性用のスカートなどで「落ちがよくシルエットがきれい」
という表現があります。あれです、ストンと落ちる感じのしなやかさ、
あれの綺麗な生地がお勧めです。
以前「羽織の上から更に道行きコートを着てもいいのだろうか」という
ご質問がきたことがあります。そりゃまぁ寒ければ・・・ねぇ。
元々道行は「コート」、羽織は言ってみれば「スーツの上着」タイプ、
つまり道行は家の中部屋の中では脱がなければなりませんが、
羽織はそのままでもOK、ですから、羽織の上に防寒塵除けに道行をきても
ルール違反ではありませんが、とりあえず、「丈」に気をつけてください。
コートの下から羽織がちょろちょろ覗いているのは感心しません。
これから暑くなろうかというのに、とんだ季節はずれの話題になりました。
今はせいぜい絽や紗の羽織の話題ですよねぇ。
今年は「羅」の道中着を、古着で探そうと思っててるのですが、
手に入れたとしても・・・着ないかなぁ暑がりだし・・・。
本日はまとまりなくこれにて・・です。
私も縫わずに置いてある浴衣地
あるんですが、いつ縫おう・・・
ほどきで糸がきしむの解ります。
私もこの間、長襦袢に仕立替する時
いや~な音がしてなかなか糸が
抜けなくて、ほどきに手間取りました。
以前、生絹の被着というのをめっけまして、とても綺麗な絵柄と染めだったので、羽裏にしようと思って解きました。状態は極めてよかったのですが、かな~り古いものだったので、糸がカチンカチンになってて、プツプツ切れる。毛抜きで抜いたりし、随分苦労しました。
あのきしむ音はイヤですねぇ。
浴衣や木綿の着物の解きだと、もろくなってて
抜こうとするとブチッと切れたりして・・・。
まぁ昔の人のことを思えば、こんな手間くらい・・
と思わなきゃいけないんでしょうが、
いいかげん、きしんで抜けなかったりすると、
ヒステリックになってますー。
百福様
ずーっとリッパーを使ってきたのですが、
さすがにそれが切れなくなってきまして、
このところは昔ながらの「握りバサミ」・・。
最終取れにくいときは、究極の手抜き・・
裏側から荷造りテープを切ったものでとります。
いいものは「毛羽立ち」がいやなのでしませんが、
それほどでもないものは、これが一番手っ取り早い!
縫い目をちょんちょん切っておいて、
その上にちょっとあててはがす・・、
できるだけ布にくっつけないようにします。
これでおもしろいように「糸」がとれますが、
ペタペタするのもけっこう疲れるものです。
手間を惜しんじゃいけませんね。
解きものしながらほんとにいろいろ考えます。着ていた人、縫った人、織った人までドラマを感じさせるものがあります。職人さんが縫ったであろうと思われるのは、一針の無駄もなく糸の継ぎ目もなく、感動的にきれいなものがあったり、(こいうのは解くのも楽です。)習い習いしながら縫ったであろうと思われるのや、几帳面に、縫い代をどこもかも縫いとめてあったり、織糸で縫ってあったり、解くのがたいへんなものがあります。そんな時は「縫った人はもっとたいへんな思いをしたんだろうな、その苦労を解き放ってあげよう」と自分を鼓舞しています。
一枚の着物にいろんな色の糸が使ってあったり、おしりの玉結びが異様に大きかったり、物がなかったんだろうな、はじめての縫い物かな・・そんなことを思います。何十年か前に、その人はこの着物の行く末など考えてもいなかったろうと思うと、不思議な気がします。縫った人、着た人に会うことはできなくても、着物とであったことで、その人と会話しているような、そんな時間ですね。
アイデアですね。大変参考になります。
いつもは寝っ転がって眼鏡を外して短い糸を一本一本抜いていました。
ついでにもう一つ教えてください。
カマ柄というのはどういうものですか?なぜ小柄な人には合わないのですか?
よろしくご教授のほどm(_ _)m
カマ柄と言うのは、反幅に1個だけ大きな柄が
ポンポンと飛んでいるのをいいます。
上の金魚柄、ひとつだけデンと置かれていますね。
真ん中だったり、右より左よりどちらかだったり、
交互だったりいろいろですが、要は大きな一つ柄が
間をおいておかれているものです。
小さいと、たとえば私がこの金魚柄を着ると、
おはしょりから下にせいぜい柄がふたつはいるかな?
もちろん背が高いといっても、1メートルも
違うわけではないんですけれど、
わずか半模様でも、見える見えないで、
スッキリ感が違います。
小柄な人があまり大きな柄を着ないほうが
いいというのは、洋服でも言われますね。
着物は全身を覆うものですから、
チビさんが大柄を着ると、よけい小さく見えます。
お互いかわいそってわけです。
カマ柄というのですね。
わかりました。
大きい人が着るとすっきりする柄でも
合わないと難しいですね。
ちょっと調べただけでは見つけられなかったので、ありがとうございました。
(でも、なぜ大きい柄をカマというのかしら)
「カマ柄」と言うコトバについては、私はなんというのか着物の「用語」としていつのまにか耳になじんでた・・といいますか、そういう状態なのです。それでこれからお話するのは呉服屋さんとのお話の中などで知りえた知識のつなぎあわせで、正確な情報とはいいかねるのですが・・・。
ジャガート織りというのがありますね。あれはジャガード織機というフランスで開発された画期的な機械で織るもので、それが日本にはいってきてそのためにそれまで職人さんがたいへんな時間をかけてやっていたことが、機械であっというまにできるようになり、大量生産が可能になったけど、かわりにたくさんの職人が職を失った・・というものです。このジャガード織機でもようを織り出すとき、たとえばこの金魚の柄を横に三つ並べて織るとしますね、そのとき、経糸で1個の金魚分の幅を1ユニットといいます。つまり三つ並べるには経糸に3ユニット分の糸が並ぶわけです。この「ユニット」を「釜」と言うんだそうです。ですから3つ並べるなら3釜・・ですね。カマと言う言葉はそこからきているものと思います。つまり、反幅に1個でひとカマ・・と言うわけです。ただしご存知のようにこういう浴衣とか普通の反物はジャガード織ではありません。それでたぶん・・ですが、ジャガード織機で織る「ひともようイコールひとかま」と言う言葉を、反幅に1個・・という意味をあらわすのに使ったのではないかと・・・。こんなところです。
なるほどこれはちょっと調べたくらいでは出てきませんね。
うまこなのでつい鎌(馬の餌刈り用鎌)を想像していました。