すいーと雑記帳

とっこの独り言

<ちんどん酔桃亭18>  「沈黙のファイル」

2007-09-24 18:01:00 | ちんどん酔桃亭
 
「沈黙のファイル」   共同通信社社会部編(1996年4月第一刷発行)

 久しぶりに読み応えのある本に出会いました。一生懸命ノートを取って本を読もうとしたことなど何年ぶりかなあ。
深い感銘を受けた一冊でした。

 戦後50年の1995年6月~12月にかけて共同通信が、全国の地方紙に配信した連載記事をベースにした本で、取材執筆は田中章氏、魚住昭氏、保坂渉氏、光益みゆき氏の4人の記者(当時)。

 わずか10年前には、こういうルポを連載する力が共同通信はじめ各メディアにはあったんだなあ、と信じがたい思いすらします。
今、こんな連載企画をどこかの新聞社がやれるだろうか?と、まず、それを思いました。

 私がこの本を探して読み始めたきっかけは、「餓死したYおじさん」を書いたことです。
父の従兄弟のYおじさんが30歳でガダルカナル島で餓死したのに、その作戦参謀だった瀬島龍三氏が、なんで戦後も財界、政界の重鎮として95歳まで生きられたんだろう?という素朴な疑問をずっと持っていたからです。

 そして、いろいろ調べてこの本に出会って、素朴な疑問は氷解しました。

 日本の戦後が、どのように戦前戦中とつながっているか、旧日本軍の中枢部にいた人たちが、戦後、米ソ冷戦構造の下でどのように復活してきたか、よくわかりました。

 国内各地、モスクワ、ソウル、長春、ハバロフスク・・・戦後50年、数少なくなった生き証人たちを求めて、精力的に取材した共同通信社の記者たちのジャーナリスト魂、またそれに応えて、「歴史的な事実を正確に後世に伝えたい」という当事者たちの思いに、まず感動しました。そういう意味で、最近亡くなった瀬島氏こそ、もっともっと真実を語っていくべき人だったなあ、と強く感じました。残念です。

 いい本でした。本の末尾にある「インタビュー内容記録」も充実しているし、参考文献もすごいし、新聞連載だけあって構成とか語り口が工夫してあって読みやすいし・・。
 
 以下は、共同通信社社会部長・塚原政秀氏による「あとがき」からの抜粋です。この本の内容がビシッと書けているので引用します。

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陸軍のエリート参謀だった瀬島龍三氏を『主人公』に選んだのは、敗戦、シベリア抑留、防衛庁商戦などを経て、『政界のキ-マン』となった氏の軌跡が、戦中戦後の日本の歩みを象徴していると思ったからだ。瀬島氏がかかわった歴史的事件には大きな謎がいくつも潜んでいた。陸軍の頭脳と言われたエリート参謀たちが無謀で愚かな戦争に突っ走ったのはなぜか。終戦後、六十万もの人間がシベリアに抑留されたのはなぜか・・・。もしそうした謎を解くことができれば、私たちは戦後日本の成り立ちを本当に理解することができるのではないかと考えた。・・・・・(中略)・・・・・こうした記者たちの努力がどこまで実を結んだか。その判断は読者のみなさんに仰ぐほかない。ただ、戦後半世紀たって今まで埋もれてきた重要な歴史的事実に、精いっぱい迫ることができたと私たちは自負している。あの悲惨な戦争を引き起こした日本社会の構造が今なお変わりなく続いていると言う暗然たる事実を踏まえて、記者たちは『戦後日本とは、私たち日本人とは、何か』と問い掛けている。その問いを真摯に受け止めていただければ幸いである。
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 各地の図書館にあると思うので、是非ご一読をお奨めしたい本です。
めちゃめちゃ面白かった~。

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