快読日記

日々の読書記録

「えひめ丸事件―語られざる真実を追う」ピーター・アーリンダー

2008年07月18日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《本当の加害者は誰なのか、無辜の命が奪われた本当の原因は何なのか》



2001年2月、ハワイ沖で、愛媛県宇和島水産高校水産実習船「えひめ丸」に米軍の原子力潜水艦「グリーンビル」が衝突。
生徒4人と教員2人、乗組員3人が亡くなりました。

様々な要因がこの事故を引き起こしました。
招待客へのパフォーマンス第一の愚かな米海軍。
実習によって発生する年間1億円余りの漁獲高(!)を乗組員の給与や実習費にしていた愛媛県。
そんなわけで漁優先なので、えひめ丸は実習船とは名ばかりのただの漁船で、有事の際、生徒は逃げられない構造になっていたこと。

一番驚いたのは、遺族にとって米軍と並んで訴訟相手になるはずの愛媛県が、その県側の弁護士事務所を遺族につけたことです。
つまり加害者側の弁護士が被害者と遺族に今後の対応を助言するという、ありえない事態です。

助言とはずばり、示談のすすめ。

知事や市長も被害者に圧力をかけました。
これで訴訟には至らなかった。
しめしめと思ったのは米軍でしょう。
軍としての謝罪や補償はもちろん、原因究明も軍法会議もやらない。
(実際開かれた「審問委員会」はかなり形式的なものだそうです)

なんてちょろい国なんでしょう日本って。
外にはノラリクラリ、内には冷血なんですね、がっかりします。
これじゃ竹島だって取られちゃいますよね。
ばかみたい。


■7/17読了 薄井雅子 翻訳・共著 新日本出版社 2006年刊 【ノンフィクション】ピーター・アーリンダー(法律家・1948~)