快読日記

日々の読書記録

「頭のうちどころが悪かった熊の話」安東みきえ

2008年04月11日 | 日本の小説
《水という最高のスープ》





寓話というのは怖いものです。
いい話の奥に、したり顔で人を諭す作者が透けて見えたり、そのうすっぺらさや独善性がうっすらと、しかし確実に臭ってきたりして。

普通の小説ならむしろよいスパイスになるところなのに、難しいですね。
寓話というのは、いろんな素材をごたごた煮込んだシチューではなく、
それらを何度も何度も漉した透明なスープみたいなものだからかもしれません。


この安東みきえの寓話は雑味がなく、すっきりとして無駄がない。
でも、ずーっと遠くの山を何年もかけて濾過されてきた水みたいな清らかさと強さ、そして豊潤な味があります。

■4/11 読了 理論社 下和田サチヨ・絵 【日本の小説】