ルーツ

タロー、ジロー、りき、たいほう、かしわど
実家で飼っていた番犬達の名前だ。

タローとジローは、物心ついたときには家にいた。タローは賢い犬だったそうだ。雷が鳴ると家の中に避難する奴だった。
ジローは親分肌だった。シッポを踏んで噛まれた思い出がある。家を出たきり帰ってこなかった。両親が犬狩りの檻を見て廻ったが見つからなかった。
りきは、力道山のファンだった祖母がつけたそうだ。毒饅頭を食ったらしく、ある朝苦しんで死んでいった。タローは、老衰で安らかな死に様だった。
たいほうとかしわども、大相撲のファンだった祖母がつけた名だった。両犬とも忠実な犬だった。２匹ともフィラリアで死んだ。

この頃、放し飼いを止めた。しょっちゅう、野犬狩りが行われ、りきが毒物で死んでからだ。当時、田舎では夜間放し飼いが普通だった。

姉がメス犬を拾ってきた。野犬狩りの成果か捨て犬が減り、番犬の調達に苦労していたため、飼うことになった。初のメス犬だった。名前はシロ。白い犬だった。シロが成犬になると夜這いしてくる輩が出没し、出産した。クロ、チビ、ケン、シロチョン。もらわれずに４匹残った。

旦那は黒い犬だったらしく、子犬はしろくろ入り混じった。概して、黒系統が優秀で、しかし体が弱かった。ちびは、内臓が悪かったのか、生まれつき小さく成犬になれずに死んだ。獣医師に診て貰いたくて祖母とけんかをした苦い思い出が残る。

その後、ムク、ハナレ、クマ、ゲン、などが実家を守ってくれた。名前の付け方がいい加減になり、玄関横にいるゲン、離れの横につながれていたハナレなど、担当場所の名がついた犬もいた。
だんだん血が濃くなり、危ない目つきのぶっとんだ犬も生まれた。が、幸い人様に危害を加えた事は
なかった。いなくなった犬以外は皆、敷地の片隅に眠っている。

祖母はプロレスが好きで、ビルロビンソンを応援していた。ワンハンド・バックブリーカーが
彼の１８番だった気がする。
祖母が亡くなって以後、犬の世話のため、家族旅行の思い出はない。

今年の正月はわけあって帰省できない。