薬味がない

今日のランチはカレーが看板メニューの喫茶店へ出かけた。
大昔から、カレーがウリの喫茶店らしい。
私にとって、カレーはにおいを嗅ぐと食べたくなるメニューのひとつだが、わざわざカレーショップに入って食べよう、と思わないもののメニューのひとつでもある。

さて、歴史を感じさせる磨り減った階段を上るとこれまた、レトロな感じのドアチャイムに迎えられ店に入る。
一人でテーブル席を占領するのも気が引けて、カウンター席をチョイス。
いまどき、若い子にこんな素朴で、いい笑顔が作れる子がいたんだ～、と感激させるバイトらしきウェイトレスにメニューを告げる。
カウンター内で動き回っているのは、この店のマスター。
ひっじょーに無愛想である。
次々訪れる客に、ぼそっと「いらっしゃいませ。」とひとこと告げる。
メガネの奥に光る眼光はかなり鋭い。

私がオーダーした「自家製オリジナルカレー」が供される。
当然ながら、カレー粉を炒めて煮込んだカレーにはジャガイモも人参も、そして肉の塊もない。
一口食べてみる。
「ああ、まじめに作ったカレーだな・・」と感じさせる深い味わいだ。
玉ねぎを丁寧に炒めたときに出る特有の甘み、そして煮込んで、煮込んでほろほろになった肉のかけらが舌にあたり、じんわりと辛味が口いっぱいに広がった。
おいしい・・

だが。
ない！
薬味がない！！

実は私はカレーにつきものの福神漬けやらっきょうがけっこう好きなのだ。
カレーの辛味と、福神漬けやラッキョウの甘みが合わさった味わいと、パリパリとした歯ざわり。
カレーには、これら薬味は欠かせないでしょう、と思う。

なのに、それがこの店にはない。
ああ・・
これがこの店の流儀なのだろう。
お客の意見や感想なんて受け付けないよ、といわんばかりの偏屈そうなマスターがサイフォンで淹れたコーヒーを飲みながら、一抹の寂しさを感じる今日のランチなのであった。