セカンドシングル『モンシェリ~それはYOU~』の日本有線大賞最多リクエスト賞受賞。レコード大賞受賞。生歌番組MコンビニのクリスマスSPライブ。初主演映画『腐れ縁アミーゴ♪ ワールドシリーズ』の公開イベント。NHJ紅白歌合戦初出場、所属事務所アイドル総出演の年カウントダウンライブと、あわただしい年末を
こなして『深司とアキラ』の新年は始まった。
その新年の初仕事がくだんの『2007年アイドル隠し芸大会』である。
先輩アイドル達が次々にカードマジックや和太鼓演奏ジャグリング等を披露するなか、深司とアキラは控え室に戻って最後の打ち合わせに顔色を変えていた。
「はーっ。なんか緊張してきたっ。あーん、大丈夫かなぁ」
「大丈夫だって、あんなに練習してきたんだから」
「でも万が一失敗したら…ママ達に怒られるよ! アキラ!!」
「そんな叫ぶなよ。練習通りしたらいいだけだって。それに深司のママさんはお前の女装が似合ってればパスじゃん。ゲロ甘だろ?」
「僕はアキラのママが怖いんだってばっ」
「いやー……それは、俺も怖いけど」
衣装もヘアもメイクも準備万端。出番までの時間が長い。
と言うのも、衣装に着替える直前に深司とアキラの母親からメールが入ったからだ。一昔前に流行った恐怖の手紙でも見るかのように、メールを見た二人の顔色は優れない。
正直なところ、彼らは自身の母親に頭が上がらないのだ。
橘轟の追っかけ仲間がお隣さんにまで発展した母二人。彼女らのアイドルとなった子どもへの理解は当然深い。
しかも深司の母は自分そっくりの息子が可愛ければ可愛いほど、アキラの母は旦那似の息子が面白ければ面白いほど、手放しで喜ぶ。
その反対に、深司が格好良すぎたら「お肌の調子が悪いんじゃないの?」とエステに引きずっていき、アキラが面白くなければ「今日の晩飯は抜きや!」と家事を放棄する。
家庭人である前にミーハーな現代的な母親なのだった。
そして今回のベリーダンス…深司のママ的にはgoodjobでも、アキラのおかん的にはノーセンキュウ。駄目だしされる確率は50%。母親に駄目だしされるのは誰だってつらいのだ。
「おふくろが俺の格好を見て笑ってくれるのを祈るだけさ」
「はーっ、あんなに隠してたのに…何でばれちゃったんだろう」
「えっ? 橘さんが言ったんだって知らなかったのか?」
「えーーーー!? うっそ、最悪」
「ホントホントって……時間だ。(舞台の)そで行くぞっ」
「なんだよあの人…告げ口するって……信じらんなーい」
『アラブの王宮に囚われた姫君という役所を深司君がどう表現するのか…また、普段は見られないアキラ君の凛々しい表情にも、ぜひご注目下さい』とアナウンスされて始まった『深司とアキラ』の隠し芸。
二部構成を取っており、一部はダンスのシチュエーションを説明する寸劇となっている。
全身を黒い布で覆い、顔を隠して登場した二人。
王に見初められ望まぬ入内に悲しむ美姫という役所の深司と、その恋人役のアキラである。彼らは顔の隠れる未婚の女性に扮して、王の手から逃げ出してきたのだ。
息も絶え絶え走ってきた。ここまで来れば安心と、二人は顔を覆う布を取って見つめ合う。
薄くメイクを施された深司の堂の言った艶姿に視聴率が上がる。さらにナイスカメラワークのおかげで過去最高に男前に映ったアキラの微笑が、お茶の間のチャンネル権をもぎ取った。
とそこに現れたのは、お約束、先回りした王の追っ手である。ブラウン管を通して日本国民が見守る中、多勢に無勢で深司は追っ手に連れ去られ、アキラは絶望の淵に追い込まれる…!!
そこで場面は変わって王宮のセットとなり、全身の黒布をはぎ取られ露出の高い真っ赤なジャスミン姫衣装になった深司と、牢屋に繋がれボロ布を腰に巻いただけのターザンアキラが、それぞれ恋人と引き裂かれた悲しみと王への怒りをダンスで表現したのだった。
『2007年アイドル隠し芸大会!』は正月番組史上最高の視聴率を叩きだして、業界の伝説となった。
深司は実母から賞賛のお年玉を貰い、めでたく“穂梨越の白雪姫”から“平成のジャスミン王女”にステップアップ。アキラは「実は脱いでも凄いんです」というイメージが付き、女性ファンからの支持が上がった。
心配していたアキラの実母だが、あまりにもベタな寸劇に大笑いしたということで、別段おとがめはなかった。
しかし、これ以来グラビアアイドルでもないのに脱ぐ仕事が増えたアキラは、ほとぼりが冷めるまでは歌手業に専念すると、公式ブログで発表している。
終わり
こなして『深司とアキラ』の新年は始まった。
その新年の初仕事がくだんの『2007年アイドル隠し芸大会』である。
先輩アイドル達が次々にカードマジックや和太鼓演奏ジャグリング等を披露するなか、深司とアキラは控え室に戻って最後の打ち合わせに顔色を変えていた。
「はーっ。なんか緊張してきたっ。あーん、大丈夫かなぁ」
「大丈夫だって、あんなに練習してきたんだから」
「でも万が一失敗したら…ママ達に怒られるよ! アキラ!!」
「そんな叫ぶなよ。練習通りしたらいいだけだって。それに深司のママさんはお前の女装が似合ってればパスじゃん。ゲロ甘だろ?」
「僕はアキラのママが怖いんだってばっ」
「いやー……それは、俺も怖いけど」
衣装もヘアもメイクも準備万端。出番までの時間が長い。
と言うのも、衣装に着替える直前に深司とアキラの母親からメールが入ったからだ。一昔前に流行った恐怖の手紙でも見るかのように、メールを見た二人の顔色は優れない。
正直なところ、彼らは自身の母親に頭が上がらないのだ。
橘轟の追っかけ仲間がお隣さんにまで発展した母二人。彼女らのアイドルとなった子どもへの理解は当然深い。
しかも深司の母は自分そっくりの息子が可愛ければ可愛いほど、アキラの母は旦那似の息子が面白ければ面白いほど、手放しで喜ぶ。
その反対に、深司が格好良すぎたら「お肌の調子が悪いんじゃないの?」とエステに引きずっていき、アキラが面白くなければ「今日の晩飯は抜きや!」と家事を放棄する。
家庭人である前にミーハーな現代的な母親なのだった。
そして今回のベリーダンス…深司のママ的にはgoodjobでも、アキラのおかん的にはノーセンキュウ。駄目だしされる確率は50%。母親に駄目だしされるのは誰だってつらいのだ。
「おふくろが俺の格好を見て笑ってくれるのを祈るだけさ」
「はーっ、あんなに隠してたのに…何でばれちゃったんだろう」
「えっ? 橘さんが言ったんだって知らなかったのか?」
「えーーーー!? うっそ、最悪」
「ホントホントって……時間だ。(舞台の)そで行くぞっ」
「なんだよあの人…告げ口するって……信じらんなーい」
『アラブの王宮に囚われた姫君という役所を深司君がどう表現するのか…また、普段は見られないアキラ君の凛々しい表情にも、ぜひご注目下さい』とアナウンスされて始まった『深司とアキラ』の隠し芸。
二部構成を取っており、一部はダンスのシチュエーションを説明する寸劇となっている。
全身を黒い布で覆い、顔を隠して登場した二人。
王に見初められ望まぬ入内に悲しむ美姫という役所の深司と、その恋人役のアキラである。彼らは顔の隠れる未婚の女性に扮して、王の手から逃げ出してきたのだ。
息も絶え絶え走ってきた。ここまで来れば安心と、二人は顔を覆う布を取って見つめ合う。
薄くメイクを施された深司の堂の言った艶姿に視聴率が上がる。さらにナイスカメラワークのおかげで過去最高に男前に映ったアキラの微笑が、お茶の間のチャンネル権をもぎ取った。
とそこに現れたのは、お約束、先回りした王の追っ手である。ブラウン管を通して日本国民が見守る中、多勢に無勢で深司は追っ手に連れ去られ、アキラは絶望の淵に追い込まれる…!!
そこで場面は変わって王宮のセットとなり、全身の黒布をはぎ取られ露出の高い真っ赤なジャスミン姫衣装になった深司と、牢屋に繋がれボロ布を腰に巻いただけのターザンアキラが、それぞれ恋人と引き裂かれた悲しみと王への怒りをダンスで表現したのだった。
『2007年アイドル隠し芸大会!』は正月番組史上最高の視聴率を叩きだして、業界の伝説となった。
深司は実母から賞賛のお年玉を貰い、めでたく“穂梨越の白雪姫”から“平成のジャスミン王女”にステップアップ。アキラは「実は脱いでも凄いんです」というイメージが付き、女性ファンからの支持が上がった。
心配していたアキラの実母だが、あまりにもベタな寸劇に大笑いしたということで、別段おとがめはなかった。
しかし、これ以来グラビアアイドルでもないのに脱ぐ仕事が増えたアキラは、ほとぼりが冷めるまでは歌手業に専念すると、公式ブログで発表している。
終わり